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1章
4サビ-失敗
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「ど、どうしてダメなんだ……?
さっきまであんなに俺達の音楽を期待していたじゃないか。」
まさかクレッチは自分達を信じていないのではないか、そのような不安が奏太の頭によぎる。
「気持ちはありがたいけど、君達の音楽は聴く者に力を与えるんだろう?
もしそれを敵に聴かれたら、敵も力を増してしまうかもしれない。」
「た、確かにそうか……。」
自分の考えが甘かったことに気付き、奏太が下を向く。
敵に聴かれる事まで考えが及ばなかった。
魔物相手だと効果はないようだったが、今回の相手は人間だ。敵にも力を与えてしまう可能性は大いにあり得る。
しかも相手はゴロツキ集団だ。剣王軍のようにロックがハマってしまったら、むしろこっちが不利な状況になりかねない。
「大丈夫。 この場は僕達がなんとかするから、君達の音楽はまた次の機会に聴かせてくれ!
それじゃ!」
そう言い残すと、クレッチは前線へと向かっていった。
クソッ……!俺達には何も出来ないのか……
「今回ばかりは仕方ないでござるよ奏太殿……。」
苛つく奏太を金重がなだめる。
「何か気分が落ち着く音楽でも聴きますか?」
響子が馬車に備え付けられている蓄音箱を開けようとする。
「すみません響子さん、お気持ちは有難いのですが、今はそれどころじゃ……。」
奏太が響子を制止しようとして思い止まる。
ーー待てよ、もし力が湧いてくる曲じゃなくて、誰もが心の落ち着く曲を演奏すればあるいはーー
「ちょっと二人とも耳を貸して!」
「ふえ?」
「ふお?」
響子と金重が何事かと、奏太に顔を近付ける。
「昨日3人で試しに合わせてみた曲あるだろ?
あれをここでやろう。」
「あれって……、『Let It Be』でござるか?」
昨晩3人は練習の題材で、ビー◯ルズの名曲ロックバラード『Let It Be』を合わせていた。
あの曲なら、戦いを鎮められるかもしれない。
「確かにあの曲を聴くと、不思議と気持ちが落ち着くでござる!
やるでござるか!」
「い、いきなり人前で演奏出来るでしょうか……。」
金重はやる気を見せるが、流石に昨日初めて弾いたばかりの響子は自信なさげだ。
「大丈夫でござる! 響子殿の実力なら出来るでござるよ!
師匠である小生が保証するでござる!」
金重の言うように、昨日の響子ならば問題なく弾けるだろう。
「わ、わかりました! 頑張ります! 師匠、奏太さん!」
金重の激励を受け、響子が覚悟を決める。
ていうかいつから師匠、弟子と呼び合うようになったんだ。
2人の仲に若干の嫉妬心を抱きつつ、奏太は演奏の準備に取り掛かる。
奏太はいつも使っているエレキギター、ではなく永吉が蓄音箱のお礼にくれた、アコースティック・ギターを取り出した。
「奏太殿、今回はアコギで行くでござるか?」
「ああ。ピアノの代わりにコードを弾くには、エレキよりアコギの方が合ってるだろう。」
『Let It Be』はイントロからピアノの伴奏が続くバラードだから、その雰囲気に合わせて今回はアコースティック・ギターでアレンジしよう。
早速使わせて貰うぜ、永吉!
奏太が心の中で永吉にお礼を言うと、魔力を練るため集中し始めた。
ジ◯ン・レノンは1980年に40歳で亡くなっている。
だからジ◯ン・レノンの霊魂を精霊魔法で呼び寄せられる筈だ。
Let It Beのリードボーカルはポ◯ル・マッカートニーが担当しているが、ポ◯ル・マッカートニーはあっちの世界に居たときはまだご健在だったし、ジ◯ン・レノンで歌っても十分いい歌になるだろう。
本当は響子との熱い夜の為に、霊魂を呼び出す枠はシド・ヴ◯シャス用に取っておきたかったが、四の五言っていられない。
残念だがそれはまた次の機会に取っておこう。
惜しむ気持ちを抑えつつ、奏太は精霊魔法を発動し、周りに白い霧が現れた。
ーーが、霧が晴れて自分の体を確認しても、何故か体も服装も変わっていない。
ひょっとしてまだ次の霊魂を呼び出せる程、魔力が鍛えられていなかったか?
一応確認のためフ◯ディにも変身してみる。
だが反応は何もない。
しまった! 録音の時に変身し過ぎて魔力を使い果たしたか!
奏太が慌てて鞄を漁り、ポーションを探す。
だが、魔力回復用の青いポーションは無く、あるのは体力回復用の赤いポーションだけだった。
嘘だろ!? まさかポーションも全部飲み干したのか!?
このままではまずい……!
「2人共! 魔力回復用のポーション余っていないか!?」
響子と金重に余っていないか尋ねる。
「すみません……。私は持っていないです。」
「小生は蓄電池の充電の為に全部使ってしまったでござる……。」
そ、そんな……。じゃあもう変身は不可能……。
奏太は、変身する術を失い消沈する。
「ご、ごめん2人共……。実はもう魔力が切れてて、精霊魔法で変身が出来ないんだ。
だから俺から提案しといて申し訳ないんだけど、この作戦は失敗だ……。」
折角2人がやる気を出してくれたのに、自分のせいで実行出来なくなってしまった事に、2人に申し訳なく奏太が謝罪する。
「ーー別に、変身しなくても奏太殿がそのまま歌えばよいのではござらぬか?」
金重が平然と答えた事に、奏太は「へっ?」と顔を上げた。
「私も師匠の言うとおり、変身する必要はないと思いますよ。」
響子まで金重と同じ事を言ってくる。
「い、いや、そうは言ってもーー」
折角ロックスター達の力を借りる事が出来る能力があるのに、それが使えないとなっては、意味がない。
奏太が反論しようとするとーー
「小生は奏太殿の歌声、中々良いと思うでござるよ。」
金重が徐に奏太の歌声を褒める。
確かに俺は歌うことが好きで、ギターボーカルをやってきたけど、前のバンドメンバーには特段俺の歌を褒められる事は無かったし、いくら金重が気に入ったからと言って、本物のロックスターには敵わないだろ……。
奏太がまだ納得出来ずにいると、響子も金重の言葉に続いた。
「私も奏太さんの歌声好きですよ! お城で初めて聴いたとき、とっても素敵だと思いました!」
ーーあっ
奏太が初日の出来事を思い出す。
城を出て、3人で会話しながら歩いていた時、てっきり響子は金重の事だけを褒めていると奏太は思った。
そして途中で奏太が響子の話を遮ってしまった。
だが、本当は響子の言葉には続きがあったのだ。
「奏太さん! この世界にロックンロールを広めましょう!
私達の力で!」
響子の言葉に、奏太がはっとする。
2人は俺以上に、俺の事を信じてくれていたのか。
まだ出会って間もないのに。
奏太はこの瞬間、自分が初めて心から仲間と呼べるバンドメンバーを得たことを強く実感した。
「ーーそう……だな!
2人共、ありがとう! やってやろうじゃないか!
俺達のロックンロールで、この世界をぶっ壊してやる!」
覚悟を決めて馬車を降りると、3人は戦いを終わらせるため、前線へと向かったーー
さっきまであんなに俺達の音楽を期待していたじゃないか。」
まさかクレッチは自分達を信じていないのではないか、そのような不安が奏太の頭によぎる。
「気持ちはありがたいけど、君達の音楽は聴く者に力を与えるんだろう?
もしそれを敵に聴かれたら、敵も力を増してしまうかもしれない。」
「た、確かにそうか……。」
自分の考えが甘かったことに気付き、奏太が下を向く。
敵に聴かれる事まで考えが及ばなかった。
魔物相手だと効果はないようだったが、今回の相手は人間だ。敵にも力を与えてしまう可能性は大いにあり得る。
しかも相手はゴロツキ集団だ。剣王軍のようにロックがハマってしまったら、むしろこっちが不利な状況になりかねない。
「大丈夫。 この場は僕達がなんとかするから、君達の音楽はまた次の機会に聴かせてくれ!
それじゃ!」
そう言い残すと、クレッチは前線へと向かっていった。
クソッ……!俺達には何も出来ないのか……
「今回ばかりは仕方ないでござるよ奏太殿……。」
苛つく奏太を金重がなだめる。
「何か気分が落ち着く音楽でも聴きますか?」
響子が馬車に備え付けられている蓄音箱を開けようとする。
「すみません響子さん、お気持ちは有難いのですが、今はそれどころじゃ……。」
奏太が響子を制止しようとして思い止まる。
ーー待てよ、もし力が湧いてくる曲じゃなくて、誰もが心の落ち着く曲を演奏すればあるいはーー
「ちょっと二人とも耳を貸して!」
「ふえ?」
「ふお?」
響子と金重が何事かと、奏太に顔を近付ける。
「昨日3人で試しに合わせてみた曲あるだろ?
あれをここでやろう。」
「あれって……、『Let It Be』でござるか?」
昨晩3人は練習の題材で、ビー◯ルズの名曲ロックバラード『Let It Be』を合わせていた。
あの曲なら、戦いを鎮められるかもしれない。
「確かにあの曲を聴くと、不思議と気持ちが落ち着くでござる!
やるでござるか!」
「い、いきなり人前で演奏出来るでしょうか……。」
金重はやる気を見せるが、流石に昨日初めて弾いたばかりの響子は自信なさげだ。
「大丈夫でござる! 響子殿の実力なら出来るでござるよ!
師匠である小生が保証するでござる!」
金重の言うように、昨日の響子ならば問題なく弾けるだろう。
「わ、わかりました! 頑張ります! 師匠、奏太さん!」
金重の激励を受け、響子が覚悟を決める。
ていうかいつから師匠、弟子と呼び合うようになったんだ。
2人の仲に若干の嫉妬心を抱きつつ、奏太は演奏の準備に取り掛かる。
奏太はいつも使っているエレキギター、ではなく永吉が蓄音箱のお礼にくれた、アコースティック・ギターを取り出した。
「奏太殿、今回はアコギで行くでござるか?」
「ああ。ピアノの代わりにコードを弾くには、エレキよりアコギの方が合ってるだろう。」
『Let It Be』はイントロからピアノの伴奏が続くバラードだから、その雰囲気に合わせて今回はアコースティック・ギターでアレンジしよう。
早速使わせて貰うぜ、永吉!
奏太が心の中で永吉にお礼を言うと、魔力を練るため集中し始めた。
ジ◯ン・レノンは1980年に40歳で亡くなっている。
だからジ◯ン・レノンの霊魂を精霊魔法で呼び寄せられる筈だ。
Let It Beのリードボーカルはポ◯ル・マッカートニーが担当しているが、ポ◯ル・マッカートニーはあっちの世界に居たときはまだご健在だったし、ジ◯ン・レノンで歌っても十分いい歌になるだろう。
本当は響子との熱い夜の為に、霊魂を呼び出す枠はシド・ヴ◯シャス用に取っておきたかったが、四の五言っていられない。
残念だがそれはまた次の機会に取っておこう。
惜しむ気持ちを抑えつつ、奏太は精霊魔法を発動し、周りに白い霧が現れた。
ーーが、霧が晴れて自分の体を確認しても、何故か体も服装も変わっていない。
ひょっとしてまだ次の霊魂を呼び出せる程、魔力が鍛えられていなかったか?
一応確認のためフ◯ディにも変身してみる。
だが反応は何もない。
しまった! 録音の時に変身し過ぎて魔力を使い果たしたか!
奏太が慌てて鞄を漁り、ポーションを探す。
だが、魔力回復用の青いポーションは無く、あるのは体力回復用の赤いポーションだけだった。
嘘だろ!? まさかポーションも全部飲み干したのか!?
このままではまずい……!
「2人共! 魔力回復用のポーション余っていないか!?」
響子と金重に余っていないか尋ねる。
「すみません……。私は持っていないです。」
「小生は蓄電池の充電の為に全部使ってしまったでござる……。」
そ、そんな……。じゃあもう変身は不可能……。
奏太は、変身する術を失い消沈する。
「ご、ごめん2人共……。実はもう魔力が切れてて、精霊魔法で変身が出来ないんだ。
だから俺から提案しといて申し訳ないんだけど、この作戦は失敗だ……。」
折角2人がやる気を出してくれたのに、自分のせいで実行出来なくなってしまった事に、2人に申し訳なく奏太が謝罪する。
「ーー別に、変身しなくても奏太殿がそのまま歌えばよいのではござらぬか?」
金重が平然と答えた事に、奏太は「へっ?」と顔を上げた。
「私も師匠の言うとおり、変身する必要はないと思いますよ。」
響子まで金重と同じ事を言ってくる。
「い、いや、そうは言ってもーー」
折角ロックスター達の力を借りる事が出来る能力があるのに、それが使えないとなっては、意味がない。
奏太が反論しようとするとーー
「小生は奏太殿の歌声、中々良いと思うでござるよ。」
金重が徐に奏太の歌声を褒める。
確かに俺は歌うことが好きで、ギターボーカルをやってきたけど、前のバンドメンバーには特段俺の歌を褒められる事は無かったし、いくら金重が気に入ったからと言って、本物のロックスターには敵わないだろ……。
奏太がまだ納得出来ずにいると、響子も金重の言葉に続いた。
「私も奏太さんの歌声好きですよ! お城で初めて聴いたとき、とっても素敵だと思いました!」
ーーあっ
奏太が初日の出来事を思い出す。
城を出て、3人で会話しながら歩いていた時、てっきり響子は金重の事だけを褒めていると奏太は思った。
そして途中で奏太が響子の話を遮ってしまった。
だが、本当は響子の言葉には続きがあったのだ。
「奏太さん! この世界にロックンロールを広めましょう!
私達の力で!」
響子の言葉に、奏太がはっとする。
2人は俺以上に、俺の事を信じてくれていたのか。
まだ出会って間もないのに。
奏太はこの瞬間、自分が初めて心から仲間と呼べるバンドメンバーを得たことを強く実感した。
「ーーそう……だな!
2人共、ありがとう! やってやろうじゃないか!
俺達のロックンロールで、この世界をぶっ壊してやる!」
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