異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

文字の大きさ
38 / 78
1章

5B-ダメ出し

しおりを挟む
「あ、あまり喜んで貰えなかったですね……。」

 演奏を終えた後、観衆達のやけにあっさりした反応を見て、響子が残念そうに苦笑いを浮かべる。
 全く受け入れられなかった訳ではなさそうだが、今までの反応が異常なくらい良かっただけに、響子もショックを隠しきれないでいる。

「ふお? そうでござるか? 小生は楽しかったでござるが。」

 一方、金重は昨日と今日とでの反応の違いに気付いていないようだ。
 まあ金重は自分が楽しくギターを弾ければ満足なのだろう。

「ええーっと、どうでしたか……?」

 観衆の胸中を確認するため、奏太が目の前で聴いていた熊の獣人に問いかけた。

「うーん。悪くはなかったクマ。演奏も上手クマし、歌も良かったクマ。ただ……。」

 煮え切らない反応だが、一応の褒め言葉を貰い、奏太が安堵する。

「この曲じゃあ全然踊れないゾウ! もっと楽しい気分になる曲が聴きたいゾウ!」

 隣で聴いていた象の獣人が、奏太達の曲にダメ出しすると、熊の男もウンウンと頷き、2人は別の演奏を聴きに行ってしまった。
 それに続くように、他の観衆達もゾロゾロと離れていき、奏太達の前には誰も居なくなった。

 観衆の去った場所に取り残された3人が、ただ呆然と立ち尽くしていると、奏太が力なくその場に座り込んだ。

 どこかで傲っていたのかもしれない。或いは、この世界で自分達の音楽を認めさせてやるという思いが、先走りすぎていたのか。
 いずれにせよ、獣人達にもロックンロールの良さが伝わる筈という期待が空振りに終わり、奏太は下を向いて考え込んだ。

「獣人達は踊れる曲じゃないと喜ばないのか……。」

 となると『We Will Rock You』も向かないだろう。
 もっとアップテンポのご機嫌なナンバーじゃないと、陽気な獣人達はきっとノッて来ない。
 だが、ドラム抜きでノリの良いロックをやるとなると、相当ハードルが高い。
 皆はどんな感じの音楽をやっているんだろうか……。
 奏太が考えあぐねながら周りを見渡すと、一際人が集まって盛り上がっている集団を見つける。

「なんだか、あそこの人達凄く盛り上がってますね。」

 響子もそれに気付き、奏太と同じ方向に視線を向ける。
 聴こえてくるビートに、観衆達がノリノリで踊っている。
 まるでディスコクラブさながらだ。

「とりあえず他の人の演奏を見て参考にしよう……。」

「はい……。」

 自信喪失気味の奏太達が、盛り上がる集団にすがる思いで近付いてみる。
 踊り狂う獣人達の間を掻き分けながら、音の主を探す。
 踊る男女に押されながら、ようやくの思いで集団の先頭に辿り着くと、そこには見覚えのある男が、不思議な道具を使って音を奏でていた。

「あっ!あいつは……!」

 その印象的なストリートファッションは、奏太が知る限り一人しかいない。

「ヘイYo! 盛り上がってるかいオーディエンス!」

 男の掛け声に合わせて、獣人達が「ワァー!」と歓声を上げる。

「隆司!? なんであいつがこんな所にいるんだ!?」

 観衆に囲まれる中、隆司がノリノリでリズムに乗っている。

「フー! そこにいるのは何者!かと思えば同郷の若者!」

 奏太達の姿に気付き、隆司がラップでビートに被せてくる。
 一体この音はどうやって出しているのだろうか。
 隆司の前にある謎の台を触りながら、まるでDJがタッチパッドを叩いて演奏するフィンガードラムのように、ビートを刻んでいる。
 金重のように雷魔法を応用して電子機器を使っているのだろうかと思い、奏太が辺りを見回すが、スピーカーらしきものは何処にもない。

 程なくして隆司のDJプレイが終了し、場は歓声に包まれた。

「ヘイ皆センキュー! アニマルなブロ兄弟達に Hope to see ya soon !」

 隆司が喝采の中、観衆に別れを告げると、奏太達の前にやってきた。

「皆さんこんな所でお会いするとは奇遇ですね。ひょっとしてお仕事の件で何かご用でもございましたか?」

 奏太達がわざわざ仕事の件で隆司を探しに来たと勘違いし、隆司がビジネスモードの敬語で話しかけてくる。

「いや、俺達は別件でこの国に来ていたんだが、そしたらたまたまここで隆司を見つけたんだ。」

「オウつまりそれって偶然の再会?」

 仕事絡みではないと分かると、隆司は即座にラッパーモードに戻る。
 中々掴みにくい奴だ。かたやストリートなチャラ男、かたやお堅いビジネスマンでは、テンションが両極端過ぎる。中間は無いのか。

「なあ、さっき隆司が演奏してたその台って何なんだ?」

 キャラが安定しない隆司のことはさておき、謎の音を奏でる台について奏太が質問する。

「これか? こいつは蓄音箱を応用して作った、俺特製DJコントローラーだぜYeah!」

 隆司が自慢気に自身の機材を披露する。

 これが蓄音箱? 

 一体どのような構造になっているのか、奏太が興味津々に機材を見てみると、確かに台の下に大小様々な蓄音箱が沢山取り付けられている。
 そして表側には、ボタンのような出っ張りがある。

「こいつを押すと、下の蓄音箱の蓋が開く仕組みになっているんだぜYeah!」

 隆司がボタンを押すと、ワイヤーが蓄音箱の蓋を持ち上げ、『ズン』というバスドラムのような音が鳴った。

「この蓄音箱は俺が楽器の音を一つ一つサンプリングしたんだYo! こんなのもあるぜ!チェケラ!」

 隆司が別のボタンを押すと、『ピヨピヨピヨ』と鳥の鳴き声が鳴る。

「そんでもってこんな感じで叩くと……。」

 隆司が複数のボタンをリズム良く叩くと、ハイハット、スネア、タム、バスドラムにそれぞれ対応する蓄音箱が『パカパカ』と開閉し、ドラムの4ビートが刻まれた。

「す、スゲェー!」

「蓄音箱を使ってこんなことまで出来るなんてビックリです!」

「うーむ、これは電子楽器コレクターの小生としても、実に興味をそそられるでござる!」

 3人が素直に感激の言葉を口にすると、隆司は自慢気に『フフン』と鼻を鳴らした。

「これって、隆司が一人で全部作ったのか……?」

 このように精巧な機材まで作れるとなると、流石に多才さが行き過ぎて怖くなり、奏太が恐る恐る尋ねる。

「No No!蓄音箱は俺が作ったけど、この仕組みを考えて1つの機材に仕上げたのはマイフレンド、永きっちゃんだぜYeah!
 俺が頼んだら設計してくれたんだYo! 永きっちゃんマジ感謝!」

「へぇ~、永吉がこれを考えたのか~。やっぱり楽器職人を目指していただけあって、器用だな~。」

 奏太が永吉から貰ったアコースティック・ギターも良い音が鳴るし、楽器を作るという点に関して、永吉の才能が非凡であることを改めて知る。

「ちなみにこれも永吉の案なんだけどYo! ちょっと何か喋ってくれカモン!」

 急に喋ってくれと言われても困るのだが……。

 突然の要望に奏太が狼狽えていると、

「ロックンロール!」

 横から響子が可愛らしい声で掛け声を上げた。
 すると何やら隆司が蓄音箱に魔力を込めている。

「そんでもってこのボタンを押すと……!」

 隆司が1つのボタンを連打した。するとーー

『ロロロ、ロックン、ロックン、ロックンロール!』

 蓄音箱の蓋が隆司の指に合わせて小刻みに開閉し、響子の声がリピートされた。

「は、恥ずかしいです~!」

 自分の声が何度もリピートされ、響子は恥ずかしさに赤面し、顔を押さえた。

 な、何も言わなくて良かった……。
 だけどこれは中々に凄い応用力だ。

「こうやってその場の音をRec in the Box、ボタンを押せば、Effect on the Rocks! Yeah!
 まだ構想段階だが、魔法を使ってスクラッチ的なターンテーブルも完成次第、Coming soon!
 ちなみに特許取得済み!フー!」


 永吉と隆司という2人の人物。
 初めは単なる仲の良い仕事仲間程度に見ていたが、実際には2人の才能が合わさって、物凄い化学反応を起こしていたーー

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

処理中です...