異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

6間奏-同盟

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「ーーいや~実に愉快ガウ!ほれおぬし! もっと飲むガウ!」

 演奏を終えた奏太に、ズームー国王が酒を勧めてくる。


「いや、明日はまた護衛の任務がありますので、そろそろ遠慮しておきます……!」

 全力でエ◯ヴィス・プレスリーを演じた後で、これ以上飲まされるのは流石にキツい。
 ここは体の良い言い訳で逃げることにする。


「それならばもう心配する必要は無いガウ!
 先程ヴィシュガルド王国との同盟を締結した故、明日の帰りは転送魔法を使えば良いガウ!」


「へっーー」

 同盟締結? 一体どういう事だ? それに転送魔法って……まさかーー


「先程同盟条約の締結、および通商協定の合意が終了致しました。
 これも全て奏太様に助けていただいたお陰です。」


 今回の会談がそれほど重要なものだったとは思いもよらず、奏太はアイバニーゼの言葉に心底驚いた。

 そういえば旅の道中で、クレッチが同盟国同士なら転送魔法が使えるとか言っていたっけーー


「その、ヴィシュガルド国王とズームー国王が同盟を結ぶと、転送魔法が使える以外には何が変わるんだ?」

 政治に疎い奏太は、この国における同盟関係が、どういった意味をもたらすのか理解が及ばず国王達に尋ねる。


「同盟を結ぶことによって、人や物、文化、金、そして音楽がより活発に行き交うよるになるガウ。
 それは自国民の生活に様々な効果をもたらすガウ。
 新しい物や文化に新しい価値観が芽生え、経済が活性化すると共に、人々の交流も相まって、今まで以上に国内は騒がしくなるガウ!」


 直情的な発言の目立つズームー国王から、これほど真面目な返答を貰えるとは想像しておらず、奏太が面食らう。


「だがそれは良いことばかりではなく、勿論悪いこともあるガウ。
 今まで個人間での部分的な交流はあったものの、国を介して積極的に交わってこなかった両国民が突然関わりを深めれば、戸惑いもあれば反発も生まれるガウ。
 異国民への差別心を抱く者も出てくるガウな。
 獣人と人間という、全く異なる種族の国同士となれば尚更ガウ。」


「故に此度の同盟締結に際しては、入念な準備を要した。
 何年もかけて余とズームー国王は同盟の実現に向けて協議を繰り返し、同盟締結後の混乱をより少なく、そしてより良い結果を最大限に生む為に、協定の条項を練り、本日ようやく締結に辿り着いた。
 もしこのように、無事今日の場を迎える事が出来なければ、いつどのような障壁が生じるかも分からぬ今の世では、次の機会は50年、いや100年後となっていたやもしれぬ。
 ここまで護衛任務を完璧に遂行して頂いた奏太殿達には、重ねてお礼申し上げる。」


「いや別に俺は……。」

 ヴィシュガルド国王から重い謝辞を受け、奏太は思わず否定しそうになるが、ここまでの両国の長い道のりを慮ると、素直に受けるのが良いだろうと思い直す。


「ーーいえ。お役に立てて光栄です。」

 奏太の素直な返答を受け、ヴィシュガルド国王は「にっ」と笑顔を向けた。

 あの冷酷な国王が、アイバニーゼ以外に笑ったのだ。よほど大きな事なのだろう。
 ただ流されるままここまで来た中で、知らずうちに人や国のために役に立っていた事を知り、奏太はなにやらむず痒い感情に包まれた。


「そして何より最も重要なのは、年に一度世界中の国々が一同に介するミューサ祭ガウ!」

 ここで突然、ズームー国王が一段と声のトーンを上げる。


「ミューサ祭?」

 ミューサと付くからにはミューサ神に関係のあるお祭りなのだろうか。


「ミューサ祭とは諸国が集まり、各々自慢の音楽をミューサ神様に捧げる祭典の事です。
 その中からミューサ神様によって選ばれた国は、ミューサ神様から祝福を受け、翌年の無病息災・五穀豊穣が約束されるのです。」

 奏太の疑問にアイバニーゼが答える。
 成る程、道理でこの世界では音楽が最も持て囃される訳だ。


「この祭典では、諸国が自国の中で最も優れた音楽隊を代表として選出し、ミューサ神の御前でその音楽を披露する。
 その際同盟関係の国間では、双方の国から優秀な音楽家を寄せ合う事が可能であり、ミューサ神の祝福を受ければ、全ての同盟国がその恩恵を得られるのだ。
 ひと月後に行われるヴィシュガルド音楽祭は、ミューサ祭に向けた音楽家の選考も兼ねておる。」


「つまり同盟を組めば、祭典の際に有利となるガウ!」

「なるほど。大体読めてきたぞ。
 つまりミューサ祭を巡って、この世界の諸国は常にせめぎあっていて、だからこそ今回のヴィシュガルド国王とズームー国王の同盟締結は非常に大きな意味があるって事か。」


「その通りガウ!」

「流石奏太様は明哲でございます!」


 わざわざ異世界から召喚しなければならない程に、才能ある音楽家を常に求めている理由はこれだった。
 余程そのミューサ神の祝福ってのは凄い効果なんだろうな。活躍した音楽家への超VIP待遇を惜しまない程に。

 ここでようやく奏太は、自分達が召喚された目的を知る。
 そしてこの世界の全ての国がそれに関わっていると知った以上、やはり目指すべき所は一つしかなかった。

『異世界で誰もが崇めるロックスターになる』

 輝かしい未来は、音楽家として活躍した先にしかない。
 そうと分かったからには俄然やる気が増してきたがーー


「さぁ奏太とやら! おぬしら人間との親睦を深める為、今ここで友好の酒を交わすガウ!」

 ズームー国王がグイグイと酒を勧めてくる。

「いや確かに明日の護衛任務は無くなったけど、流石にこれ以上は身が……!」

「ーーまあ奏太殿も今日はアイバニーゼの護衛もあって疲れも溜まっているであろう。
 今日のところはその辺にして、ゆっくり休んで貰うのがよかろう、ズームー国王よ。」

 ナイス国王!

 ズームー国王の強い押しに困惑する奏太に、ヴィシュガルド国王がフォローを入れる。


「でしたら夜も遅いですし、私の所でお休みになってください! 奏太様!」

 父が奏太に向かって素晴らしいパスを出してくれた側で、娘が邪魔を入れてくる。


「いやそれは結構! 明日の準備もあるし、今日はこの辺で失礼!
 ごちそうさまでした!」

 お城の中で、しかもお姫様の部屋で寝るなんてたまったもんじゃない。
 奏太は逃げるように晩餐会を後にするーー


「ああっ…… そんな!私を置いて行かないでくださいませ……!」

「ぬぬぅ! まだまだ飲み足りんガウ!」

 2名の呼び止める声を無視し、奏太は慌てて部屋を出ていったーー



 ーーふぅ~、なんとか勢いに任せて出てくる事が出来た。
 どうにもお城からは逃げ出してばかりだ。
 ああいう場所はどうやら自分の性に合わないようだ。俺には庶民的な宿で普通のベッドがあれば充分だ。
 あんな風なお城や豪邸で寝るのは、自分の音楽で稼げるようになってからで良い。

 奏太は切れた息を整えるように、ゆっくり歩きながら仲間のいる宿へと向かったーー
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