異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

7B-激昂

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「ーークソッ! 何故あのような下等な者がアイバニーゼ様の側近などに……!」

 音楽堂で一人激昂するローラントに、隊員達が騒然とする。

(奴が騎士の勲章を与えられようがそんな事はどうだって良い。所詮は我ら音楽家に劣る存在……。)

  だが奏太がアイバニーゼの側近となり、あろう事かアイバニーゼが自分の元から去ったのは、由々しき事態だった。

(いずれアイバニーゼ様は連れ戻す。必ずだ。アイバニーゼ様は私の傍に居なければならないのだ……!
 あの下賎な冒険者風情に寄り添うなどという事は、断じてあってはならぬ……!
 だがとにかく今は、奴の処遇よりもアイバニーゼ様の代わりを探すのが急務だーー)

「ーー律動君!」

「は、はい!」

 昨日からやたらと隊長に矛先を向けられ、律動は完全に畏縮する。

「君は確かピアノを習っていたと言っていたな。」

「はい……。」

「ならば君がアイバニーゼ様の代わりにピアノを担当しろ。」

「で、ですが僕はーー」

「ーーつべこべ言わず……さっさとやるんだ!」

「わ、わかりました……!」

 ローラントの只ならぬ様相に、律動は戸惑いながらも慌ててピアノに席を移動する。

「曲は分かるな? その譜面通りに演奏するんだ。いいな?」

(彼は打楽器に非凡な才能を見せたが、シンバルなら他の者で何とかなる。
 それよりもピアノを学んでいたなら、そっちをやらせた方がいい。
 ある程度使い物にはなるだろう。いや、なってもらわねば困る……!)

 張り詰めた空気の中、ローラントが指揮を構えると、隊員達も一斉に楽器を構えた。
 ローラントが「ふうっ」と一呼吸置き、気持ちを落ち着かせて腕を振ると、静かに演奏が始まったーー


 しかし、暫く進んだところでローラントは腕を止めた。
 それを見た隊員達が演奏を中止する。

「ーー律動君……その演奏は一体何だ……?」

「も、申し訳ありません……。」

 ローラントの厳しい目線に、律動が反射的に謝る。

「まあ良い。もう一度!」

 ローラントが再び手を構え、初めから演奏をやり直す。

 ところがまたもや同じ所で手を止めると、鬼の形相で律動を怒鳴りつけたーー

「君はふざけているのか!? 私の音楽隊を一体なんだと思っているんだ! 真面目にやれ!」

「も、申し訳……ありません……。ですが、私は精一杯ーー」

 律動の言葉にローラントの怒りは頂点に達し、持っていた指揮棒を「バシン!」と床に叩きつけた。

「ーーもうよい! 今日の練習は終わりだ! 律動君には私が直接指導を付ける! 君はそのままここに残れ!」

 隊員達が慌てて音楽堂から退室していく中、律動は真っ青な表情を浮かべたーー



 一方その頃、アイバニーゼはご機嫌な様子で奏太の腕を取りながら鼻歌を歌っていた。

「ーーえっと……アイバニーゼさんは、これからどこへ行かれるのですか?」

 奏太を引っ張りながらグイグイ前を歩くアイバニーゼを、響子が早歩きで追い掛けながら問いかける。

「奏太様にはこれから私の別邸に来ていただき、そこで私と生活を共にして頂きます。」

「「「えぇえ!?」」」

 アイバニーゼの一方的な話に、3人は仰天する。

「いや、ちょっと待ってくれ! 俺達は街の宿を借りているんだ! 既にひと月分のお金も払っているし……!」

「私の騎士をそのような場所に寝泊まりさせる訳には参りません。私の別邸なら音楽堂もございますし、奏太様には何不自由ない生活をご提供致します。」

「わ、私のって……。奏太さんはバンドメンバーであり、一緒に冒険する仲間なんです!」

「そ、そうでござる! 奏太殿が居なくては困るでござる!」

 まるで奏太を自分の所有物かのように我が物顔で語るアイバニーゼに、響子と金重が強く反抗する。
 当の奏太は、アイバニーゼに振り回される状況に戸惑いつつも、まるでアイバニーゼと響子が自分を取り合うかのような状況に、何やらモテ男になった気分になっている。

「あら! でしたらお二人も私の別邸にお住み頂けば全て解決ですね! 部屋は沢山御座いますのでどうぞご自由にお使いください!」

 アイバニーゼの余りの強引さに、3人は返す言葉も失い、言われるがままについていく羽目になったーー


 しばらく歩いた所で、目の前に豪邸が現れ、アイバニーゼが門の前で立ち止まった。

「ここが私の別邸で御座います。」

「で、でけぇ……。」
「は~……。」
「ふぉ~……。」

 奏太達が建物の迫力に圧倒されていると、門が開いて中から使用人が4人を出迎えた。
 よく見ると、昨日奏太達の所へ伝言を伝えに来た男だった。

「お帰りなさいませ、アイバニーゼ様。そしてようこそお越しくださいました、響子様、金重様、そして騎士・奏太様。
 陛下の命により、私がここの執事をお勤め致します。何なりと私にお申し付け下さいませ。」

 執事の男が丁寧に挨拶すると、奏太達は中へと案内された。
 はからずも豪邸に住むことになった3人は、どこかモヤモヤとした感情を抱きながら、新居に足を踏み入れたーー
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