異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

8A-エルフ

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*********************

「随分とお困りのようですな、ローラント隊長。」

 律動がローラントから厳しい指導を受ける中、見慣れぬ人物が音楽堂に入ってきた。

「……何のご用ですかな? ジル隊長。」

 ローラントが来訪者に体を向けずに横目で男のほうを見る。
 男の名はジル・ジュアン。彼は王国第二音楽隊の隊長を務める。

「何やら風の噂で、アイバニーゼ様が音楽隊をお辞めになられたと耳にしたので。
 何分、第一音楽隊はアイバニーゼ様に随分頼られていたようでありますから、抜けた穴を埋めるには骨が折れることでしょう。
 代役にお困りのようでしたら、私の隊から補欠の者をお貸し致しましょうか?」

 ジルは人の不幸を喜ぶように、ニヤニヤとローラントに語りかけた。

「お気遣い頂き感謝する。しかし貴殿の手を借りずとも、こちらの問題はこちらで何とかする。」

 ジルの恩着せがましい態度に、ローラントは苛つく気持ちを抑えながら応える。

「左様ですか……。ですがその様子では、どうやらこの第一音楽隊の音楽堂が、我が音楽隊の物となる日も近いようですな。」

 ジルが律動にチラリと目をやると、勝ち誇った顔であからさまにローラントを挑発した。

 ローラントとこのジルという男は、言わばライバル関係にあった。
 ジルは奏太達がこの世界に召喚されるより、ずっと昔に召喚された音楽家だった。
 彼は有名なクラシック曲を自ら作曲した作品として次々に発表し、第二音楽隊・隊長の座まで登り詰めた。
 いずれはローラントを追い抜き、第一音楽隊の座を奪おうと虎視眈々と狙っている。
 ローラントにとってみれば、実に鬱陶しい存在だった。

「ーー失礼致します、ローラント様。」

 2名の隊長がバチバチと火花を飛ばしていると、またもや見慣れぬ人物が音楽堂を訪れた。
 
「おお、戻ったか。それで奴の動向は探れたか?」

「はっ。それがーー」

 どうやら相手はローラントの従者らしく、ローラントにヒソヒソと耳打ちをする。
 律動とジルが何事かと見ていると、ローラントが突然「フッ」と笑みを浮かべた。

 「ハッハッハ! それは良い報告だ。ジル隊長、どうやら貴殿の思惑は当てが外れたようだ。」

 ローラントから先程までの焦りが消え失せ、ジルに向かって勝利宣言をする。

(ククク……。これで奴らを潰す算段が立った。必ずやあの冒険者風情から受けた屈辱を晴らし、アイバニーゼ様を私の元へと連れ戻す……!)

 ローラントは何かを企みながら、その口元を歪ませたーー


*********************

 一方奏太達は、自分達に危機が迫っている事など露知らず、悠々と冒険者ギルドに訪れていた。

「ーーどうして依頼が受理されないんだ!」

 奏太達が中に入ると、何やら受付の方が騒がしい。

「一体何の騒ぎだ?」

「さぁ……どうしたんでしょうか……。」

「行ってみるでござるか?」

 3人は状況を確認しに受付に行ってみる。するとそこには青くサラサラとした長い髪と、長く突き出た耳、そして弓矢を背中に携えた美しい女性が受付嬢に詰め寄っていた。

「ーーですから何度も申し上げます通り、他国の民族間の問題に介入する事は条約により禁じられているのです。残念ですが、ギルドを介してのご依頼はお引き受け致しかねます。」

「そ、そんな……。じゃあ私達は何処に助けを求めれば……!」

 受付が困った顔で事情を説明すると、青髪の女性の表情は絶望に沈んだ。

「何だ何だ? またエルフの村が焼かれたのか?」

 ただならぬ騒ぎに、回りの冒険者達も集まってくる。

「あの女性はエルフなのか……。」

 エルフなんて物語でしか見たことがないが、道理で美しい訳だ。それにしてもーー

「『また』とは一体どういう事だ?」

 野次馬から出た言葉に、奏太が疑問を抱く。

「エルフの村はよく焼かれる運命でござるからね……。」

 何故か金重がこの世界のエルフについて、知ったような口振りで答える。

「こ、今回は違う! ただ、私達の住む村が何度も被害に遭っている事も無関係ではないのだが……。」

 エルフの女性の言葉から察するに、野次馬や金重の言うことはどうやら本当らしい。

「誰か! 個人的に私達に手を貸してくれる人はいないか!」

 エルフがギルドを介さず、直接場に居合わせた冒険者達に助けを求めたが、皆一様に視線を逸らす。

「エルフの厄介事に巻き込まれるのは御免だ……。」

「あいつ等に関わるとロクな事にならないぞ……。」

 皆の反応を見てると、エルフってのは随分と厄介者扱いなんだな。こんなに美人なのに……。

 奏太が美貌に目を奪われていると、エルフもその目線に気付いた。

 ーーやべっ……目が合っちゃった。

 奏太が慌てて目を逸らすが、時既に遅し。

「そちらの方! どうか手を貸してくれないか!?」

 エルフが必死の顔で奏太に迫ってくる。

「い、いや~俺達はランク0だし……。」

 奏太は何とか誤魔化そうとするがーー

「そうだ! あんた達が助けてやったらどうだ?」

「それは良い! 国王を助けた騎士なら力になれるだろう!」

 丁度良い逃げ道があったと言わんばかりに、皆奏太達を勧めてくる。

「騎士であられるのか! どうか頼む! 私達を、エルフを助けて欲しい!」

 こ、こいつら……自分達が関わりたくないからって俺達に押し付けやがって……!
 で、でもこの子……すんごく可愛いなぁ~!

 強い口調ながら、ウルウルとした目で嘆願するエルフの美女に、奏太は中々断る言葉が出てこない。

「き、響子さん、金重。2人はどう思う?」

 滾る煩悩を抑え、奏太はなんとか2人に意見を求める。

「その人随分困っているようですし……。」

「放ってはおけぬでござるな……。」
 
 ふ、2人とも優しいなぁ~。

 まがりなりにも騎士の勲章を与えられた自分が、思わず拒否してしまったことを後悔する。

「じ、じゃあ俺達で力になれるなら……。」

 快くとはいかなかったが、奏太がエルフの求めに応じる。

「ほ、本当か!? ありがとう!」

「でも俺達戦いにはあんまり慣れていないんだ! だから役に立てるかどうかはまだ……!」

「謙遜は不要だ! 何せ騎士が手助けしてくれるのだから、心強い事この上ない!」

 ま、まずい……完全に誤解している。

 騎士の肩書きが早速仇となり、奏太が焦りを見せる。

「では私達の村に案内する! 付いてきてくれ!」

 奏太の心配を他所に、エルフの女性は颯爽に奏太達をエルフの村へと先導したーー
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