異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

8A-テレパシー

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「ーー申し遅れた。私の名はセイビア。エルフ族の長の娘だ。」

 奏太達を先導しながら、エルフの女性が自己紹介をする。

「奏太だ。」

「響子です。」

「金重でござる。」

 3人はセイビアの後に続きながら、合わせて名乗った。

「ーーところで、エルフの村は何処にあるんだ?」

 先程から歩いて先導するセイビアに、旅の足が気になり奏太が尋ねる。

「私達の村は、ズームー王国から少し離れた森にある。最近ズームー王国とヴィシュガルド王国が同盟を組んだと聞いて、冒険者が数多くいるこの国へ助けを求めに来たんだ。
 ここまではズームー王国から教会の転送魔法を使って来たから、帰りもそれを使う。その後はズームー王国に待機している私の仲間と共に、馬で村まで向かう。
 勿論君達の旅費はこちらで出させて貰うから安心してくれ。」

 歩きではないという事が分かり、奏太はホッと胸を撫で下ろす。
 それにしても、同盟というのは当事国だけでなく、隣国にも影響を及ぼすのかと、奏太は事の大きさを実感する。

「それで、エルフの皆さんの身に何があったんですか?」

 響子が今回の依頼のないようについて質問すると、エルフは神妙な面持ちで経緯を語り始めたーー

「話せば長くなるが……君達も知っているかもしれないが、エルフの村は度々襲撃を受けてきた。
 今でこそ人間との交流も行われているものの、かつてはエルフの魔法や長寿を欲した人間達と争った歴史があった。
 その後も従属を求める魔族の軍勢に攻め入られたり、数年前は長い眠りから醒めたドラゴンに森を焼き滅ぼされ、その度に私達エルフは棲み家を奪われ、森を転々をしてきた。
 それでも私達は気を強く持ち、部族で助け合ってかつての繁栄を取り戻そうと奮闘してきた。
 だがここ数年エルフ族の中から、度々異種族に棲み家を奪われる状況を打開しようと、神聖な森を捨て、強固な要塞を築いて暮らす者達が現れたんだ。
 彼らは森を離れたことでダークエルフとなり、敵の襲撃に備えて軍隊を整え始めた。
 私達は森に戻るよう何度も説得を試みたのだが、彼らは森に頼らず強いエルフの国を作ると言って聞かない。そして最近はとうとう森に残る私達を引き入れようと、私達に同化を迫るようになった。
 族長である私の父を筆頭に、なんとか彼らの圧力に屈さず抵抗を続けているのだが、最近軍隊を使って強行手段に出ようという機がダークエルフ達の間で高まっているようなんだ。
 このまま彼らと戦えば、同族の血が無駄に流れるだけだ……! だが最早私達の力では、彼らを抑えることが叶わない……!
 だが他国に支援を要請しようと思っても、我々エルフは多種族に同盟を持たない……。」

「それで冒険者への依頼という形で助けを求めたと……。」

「エルフさん達可哀想です……。」

「孤高と不運はエルフの宿命でござる……。」

 セイビアの話に、奏太達は同情を示す。

「しかし当てにしていた冒険者ギルドへの依頼すら叶わないと知り、途方に暮れていた所に君達が現れたんだ!」

 セイビアが希望に満ちた顔を向けてくる。

 ま、眩しい……。そんな顔を向けないでくれ。俺は所詮名ばかり騎士なんだ……。

「大丈夫ですよ奏太さん!」

 奏太が自信なさげな表情を浮かべていると、響子が横から励ましの言葉をかける。

「私達にはロックンロールがあります! きっとうまくいきますよ!」

「おお……! その『ロックンロール』っていうのはよく分からないが、頼りにしてるぞ!」

 響子の前向きな言葉にセイビアは期待を寄せる。
 一方の奏太は、2人の様子に更なる不安が襲いかかったーー


 ***************************

「パカラッパカラッパカラッ」

 ズームー王国でセイビアの仲間と合流し、現在奏太達は馬に乗ってエルフの村へと向かっていた。
 エルフが1名ずつ奏太達の馬に着き、手綱を取っている。どのエルフも惚れ惚れする程の長身イケメンだ。

「エル……のっ……どう……んだー!?」

 奏太が隣を走るセイビアに向かって話しかけるが、風が邪魔をして全く声が届かない。

  剣王軍の馬車よりは100倍マシだけど、この風はどうにかならないのか!?

 奏太が会話もままならない状況に困惑しているとーー

『ーーどうした? 奏太君。』

 うわ! なんだこの声は!?

 突然脳内にセイビアの声が鳴り響き、奏太が驚く。

『これは聴覚を使わなくても会話が出来る魔法だ。エルフ同士はこの魔法で、離れた仲間とも会話が出来る。
 他の種族にも魔法を付与すれば、一定期間対象を想像するだけで、複数の人間と同時に思考による会話が出来るぞ。』

『へぇ~便利な魔法だな。どれどれ試しに……

 ファミ◯キください。』

『こいつ直接脳内に……でござる!』

『も~、2人とも脳内で遊ばないでくださ~い!』

 奏太と金重がテレパシーを使ってふざけていると、響子が苦情を言い、場に和やかな空気が流れる。

『コホン……それで、用件は何かな?』

『あ、ああ。エルフの村に着いたら俺達はどうすればいいんだ?』

『村に着いたらまずは長と会って貰う。その後、もう一度ダークエルフに交渉を試みようと考えている。
 その際君達にも同行を願いたい。』

『い、いきなり敵陣に乗り込むのかよ……。』

 和睦交渉の場の付き添いという重大な役目を求められ、奏太が狼狽える。

『ヴィシュガルド王国の騎士を仲間にしたと知れば、ダークエルフ達も考えを改めるかもしれない。こちらとしてはなるべく穏便に事を運びたいから、どうか協力して欲しい。』

 セイビアは前を向いて手綱を取っているが、顔は見ずとも脳に聞こえる言葉に、悲痛な思いが伝わる。

『まぁ乗りかかった船だ。役に立つかは分からないがとことん付き合うよ。』

『尾を踏まば頭まで、ですね!』

『う~ん、ちょっと違う気がする。』

『毒を食らわば皿まで、でござるな!』

『それはもっと違う気がする。』

『君達は私達にとってまさに渡りに船だ。事が終息したら君達には必ず礼をしよう!』

「それは……合ってるな。』

 3人が脳内でズレたやり取りを交わす中、セイビアが綺麗に締めて、一行は目的の地へと先を急いだーー
    
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