異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

文字の大きさ
56 / 78
1章

8B-エルフの村

しおりを挟む
 馬の滑走跳躍に身を預けながら、奏太達が森の中を進んでいると、目の前に開けた空間が見えてきた。

 『着いたぞ。あれが私達の住む村だ。』

 そこには煩雑に組まれた草木の門があり、その周囲を簡素な木の柵が囲っている。
 馬が立ち止まると、エルフ達が地に降りる。
 奏太達も後に続いて馬を降りようとするが、中々上手くいかない。
 奏太と響子が馬にしがみつきながら、ようやく地面に足を付ける頃、金重は「わわわわっ!」と悲鳴を上げ、『ドシン』と尻から落馬した。

「ーー皆、戻ったぞ! 私達に協力してくれる冒険者を連れてきた!」

 セイビアが門を潜り、広場に向かって声を上げると、小さな小屋のような建物から、ゾロゾロとエルフ達が集まってきた。
 どうやら念話は不要のようだ。
 大声を上げれば村中に聞こえそうなほどに、こじんまりとしている。

 エルフの森っていうから、巨大な古代樹と崖に降り立つ山廊を想像したけど、随分質素な村だな……。

「昔は立派な樹と城があったのだが、度重なる襲撃に転々と棲み家を移って、今のような小さな村になったんだ。」

 奏太の思考を読んだかのようにセイビアが答え、奏太はまだ念話の魔法が解けていないのかと、慌てて頭を振る。

「ははは。安心してくれ。念話の魔法は対象に語りかける意思がなければ思考は伝わらない。
 今のは君の考えが表情に出ていたから答えただけだよ。」

 常に思考が筒抜けになる訳ではないと知り安堵するが、それでも顔に出てしまっていた事に奏太が赤面する。

「セイビア帰ったか!」

「ああ……! 心配したわセイビア!」

 奥からセイビアと同じ青い長髪の男が出てきた。その雰囲気から察するに、ここの長老なのだろう。
 その隣には妻らしき金髪の女性が寄り添っている。

 だが2人共セイビアの親というよりは、兄弟のように若い見た目をしている。
 流石は長寿のエルフといったところか。他のエルフ達も皆若々しい。そして何より美男美女揃いだ。

「それでーーそこに居る人間達が、今回我々に助力して頂ける冒険者か?」

「父上、彼等は冒険者にしてヴィシュガルド王国の騎士でもあられる。きっとダークエルフ達を鎮めてくれるに違いない!」

 周囲を囲うエルフ達が「おおっ」と感嘆の声を上げる。

「なんと! それは心強い! 私は族長のパウルだ。ご協力感謝致す、騎士殿!」

「妻のパイスと申します。どうかエルフをお救いください……騎士様!」

「ど、どうも……。」

 エルフ達の期待の眼差しに、奏太はプレッシャーを覚える。

「とりあえず今日は疲れただろうし、ダークエルフへの交渉は明日行うから、今日のところは村で休んで、英気を養ってくれ!
 皆! 客人をもてなすぞ!」

「「騎士様! 騎士様!騎士様!」」

 セイビアが周囲を煽ると、不安な奏太を他所にエルフ達が歓迎ムードを高めたーー


 ーー村の広場で、エルフ達による歓迎の宴が開かれる。
 高く積まれた薪に火をつけ、その周りを囲うようにエルフ達が座り、盃を交わす。

「ーー騎士様、エルフのワインはお口に合いますか?」

 パイスが奏太に果物を配膳しながら尋ねた。

「はい。とても美味しいです。」

 口に広がる芳醇な香りに、奏太は素直に賛辞を送る。

「それは良かった。このワインは村で育てているブドウで作ったもだ。」

 隣に座るパウルも、同じワインを飲みながら奏太に説明する。

「へぇ~、エルフはブドウの栽培を行っているのか。」

「はい。我々エルフは果物だけを食し、人間のように穀物や肉を食したりはしません。」

 道理で出される食べ物が果物ばかりな訳だ。
 正直果物だけというのは物足りないが、まあ上手く行けば明日には帰れるだろうし、少しの間の辛抱だ。

 奏太は空腹を誤魔化すように、果物を口に放り込むと、ワインでグビグビと流し込んだ。

 そういえば響子さんと金重は……?

 先程から姿の見えない2人を探すと、酔っぱらいながらキャンプファイヤーの周りでセイビアと踊っている。
 その横では、エルフがハープを奏でて場を盛り上げている。

 明日は敵陣に乗り込むというのに、随分と暢気だな……。

 楽しそうに盛り上がる皆の様子を、奏太が心配そうに見つめた。

「あの子は周りを不安にさせまいと、ああやって皆の心を和ませているのだ。」

「普段は気丈に振る舞っていますが、セイビアは誰よりも周りを気にかける、心優しい子なのです。ですが本当はあの子も不安を感じている筈です……。」

 言われてみれば、冒険者ギルドで見たときも沈んでいたな……。

「元々か弱かったセイビアが、強気に振る舞うようになったのは、私達が不甲斐ないせいだ……。」

「騎士様、どうかあの子を、セイビアをお守りください。」

 セイビアの両親が奏太に向かって深々と頭を下げた。
 それまで及び腰だった奏太も、2人の言葉を受けて背筋が伸びる。
 ここで弱腰な返答をするのは流石の奏太も気が引けた。
 奏太は気を引き締めるように、腰に下げる騎士の剣をギュッと握ったーー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

処理中です...