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1章
8B-ダークエルフ
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「ーーさぁ、いざダークエルフの城砦へ!」
翌日、奏太達はセルビアの掛け声と共に、敵陣へと向かった。奏太達が乗る馬は、村に来る時と同様に他のエルフが手綱を取っている。
セイビアの話によると、ダークエルフ達はエルフの森を抜けた場所の荒野に、要塞を築いて暮らしているらしい。
馬に乗って走っていると、程なくして目の前に目的の荒野が現れたーー
「あそこに見えるのがダークエルフ達の棲み家だ。」
セイビアが指差す先には、荒野に吹き荒れる砂嵐の中、四方360度を頑丈な壁に囲まれた建物が悍ましげに佇んでいた。
まさに要塞と呼ぶに相応しい根城は、まるで荒廃した核戦争後の世界に残る、広大な核シェルターのようだ。
「エルフの森とはまるで対照的だな……。」
「元々ここは魔族達の棲み家だったが、人間に攻め滅ぼされ誰もいなくなった後、森を去った仲間がここに移り住んでより強固な要塞を築き上げたんだ。」
建物に漂う重々しい雰囲気に、奏太は納得する。こんな所に住んでいたら、エルフでなくともダークサイドに堕ちそうだ。
「ーーで、来たはいいけど中にはどうやって入るんだ?」
城門はいかにも固く閉ざされており、交渉以前に中に入ることすら叶わないのではないか。
「異種族の入場は厳しく制限されているが、エルフに対してはいつでも移住を受け入れているから、割と簡単に入場が許可されるんだ。君達は私の客人ということで、何とか許可を貰えるよう私が取り合ってみる。」
セイビアの話には確証が何一つないが、この状況では仕方がない。
セイビアが要塞へと歩みを進めると、奏太達もその後に続いたーー
城門に辿り着くと、門番のダークエルフはセイビア達の顔を見るなり「入れ。」とだけ言い、特にチェックもなく連れの奏太達ごと中へと促された。
「襲撃に備えて要塞を築いた割には、やけに入場審査が甘くないか?」
異種族がいるにも関わらず、あっさり中に入れたことに奏太達は拍子抜けする。
「まさか罠じゃないだろうな……。」
奏太の頭には嫌な予感がよぎる。
「分からない。ひょっとしたらダークエルフは私達が来ると初めから予想していたのかもしれない。私達が異種族に助けを求める事も。」
「要するに、相手の想定通りという事か。」
セイビアが険しい表情を浮かべながら、奏太の言葉に頷いたーー
奏太達が要塞の中へと進むと、中には街が広がっていた。街全体が薄暗い明かりに照らされ、建物が立ち並んでいる。
家、というよりはアパートメントの方が近いかもしれない。両脇に四角く型取られた建造物が、壁のように道路の両脇を挟んでいる。
日光は遮られ、新鮮な空気も通らない要塞内部は、暗く息苦しい雰囲気が漂っており、隅にはネズミが走り回っている。
「これまた分かりやすくダークな場所だなぁ……。」
「嫌な臭いがします~……。」
「アンダーグラウンドな感じにござるな……。」
セイビアの方を見ると、森に暮らすエルフ達にとっては尚更息苦しいようで、皆顔をしかめながら鼻や口を手で覆っている。
奏太達が訝しげに辺りを見回しているとーー
「おっ、誰かと思えばセイビアの姫様とその取り巻きじゃねーか。」
「ようやく俺達の所で暮らす気になったかぁ? ヒャハハ!」
道端にいるダークエルフ達が、セイビア達に向かって野次を投げてきた。
白い肌と透き通るように美しい髪を持つエルフとは異なり、彼らの肌は褐色で、髪は柄悪く逆立てている。
かろうじて尖った耳だけは森のエルフと同じだが、まるで夜中のコンビニに屯するヤンキーのようなダークエルフ達の風貌からは、かつてエルフだった面影を微塵も感じられない。
「随分と柄の悪い連中だな。」
「格好いいです……!」
パンク好きな響子にとって、彼らのヤンチャな見た目はドストライクだったらしい。
惚れ惚れと不良エルフ達を眺める響子の姿に、奏太と金重は引き気味の視線を送る。
「彼らも元々は森に暮らす、穏やかなエルフだったんだ。だがここの閉ざされた空間で過ごしているうちに、心がどんどん汚れていってしまったんだ……。」
「クッ……。なんと情けない事か……。」
「奴らはエルフの恥だ……!」
セイビアが悲しげに彼らがこうなってしまった原因を語ると、周りのエルフ達が怒りの言葉をダークエルフ達に向けた。
「だから何としても、彼らを森に連れ戻さなければならないんだ……!」
一方、セイビアはかつての仲間達を元の鞘に戻すべく、固い決意を口にしたーー
道中、ニヤニヤと下品な視線と言葉をダークエルフ達にかけられながら進んでいくと、要塞の天井まで届く高い塔が姿を現した。
「ーーここにダークエルフのリーダーがいる。」
いよいよ敵の大将の陣営を前に、かつ建物の迫力に圧倒され、奏太達は「ゴクリ」と唾を飲んだ。
見ると塔の入り口の前に、2人の門番らしき男が談笑しながら立っている。
「エルフの族長の娘、セイビアだ。リーダーと話がしたい。」
セイビアは臆せず男達に話しかける。
「おい、森の腰抜け共が来たぜ。」
「この前みたいに泣きべそかいて帰るなよ? ヒヒヒ。」
門番の男達がセイビア達に嘲罵を吐くと、塔の扉を開いた。
セイビア達はそれを無視し、塔の中へと進む。奏太達もビクビクとその後に続いた。
塔の中に入ると、目の前に支柱が立っており、地面には円形の台のようなものがある。
「これは……?」
周りを見渡すが階段は見当たらず、この柱と台しかない。
「この台に乗ると、魔力で上まで昇る仕組みになっているんだ。」
セイビアがそう言いながら台の上に乗り、奏太達もそれに倣うと、自動的に台が浮上した。
「エレベーターみたいだな。」
「うわぁ~! 高いですねぇ~!」
「ひ、非常ボタンはないでござるか!?」
奏太は高所恐怖症ではなかったが、壁が無い故に下を見ると、金重程ではないにせよ足がすくむ。
まるで自分達の恐怖心を煽るような作りだ。
「手を出さないでくれよ? 最上階の床に挟まれちゃうから。」
セイビアの言葉に奏太達が上を見上げると、段々と穴の空いた天井が迫ってくる。
屋根が近づくにつれ段々と穴が大きくなり、奏太達の乗っている台が天井同じ高さに達すると、台が隙間なく穴にはまる。
そして目の前には開けた空間が広がっていたーー
壁は派手な装飾が施され、床にはレッドカーペットが敷かれている。
その先には硝子の机が置かれ、上に様々な果物が並んでいる。
奥には高級ソファのように柔らかそうな椅子が置かれ、美しいダークエルフの女性が、殆ど裸に近いような衣を纏って座っている。
そして一人の男がそこにドッシリと座り込んでいた。
男は両脇の女性の肩に腕を回し、女性達から与えられる果物を美味しそうに頬張っている。
男が奏太達の姿に気付くと、ゆっくりと前屈みになり、肘を打ちながら口を開いた。
「ーーよく来たな、セイビア。どうやらお仲間を見つけてきたようだな。」
「お久しぶりです……ラドウィグ兄さん。」
セイビアが男の挨拶に応えると、男はニヤリと不敵な笑みを浮かべたーー
翌日、奏太達はセルビアの掛け声と共に、敵陣へと向かった。奏太達が乗る馬は、村に来る時と同様に他のエルフが手綱を取っている。
セイビアの話によると、ダークエルフ達はエルフの森を抜けた場所の荒野に、要塞を築いて暮らしているらしい。
馬に乗って走っていると、程なくして目の前に目的の荒野が現れたーー
「あそこに見えるのがダークエルフ達の棲み家だ。」
セイビアが指差す先には、荒野に吹き荒れる砂嵐の中、四方360度を頑丈な壁に囲まれた建物が悍ましげに佇んでいた。
まさに要塞と呼ぶに相応しい根城は、まるで荒廃した核戦争後の世界に残る、広大な核シェルターのようだ。
「エルフの森とはまるで対照的だな……。」
「元々ここは魔族達の棲み家だったが、人間に攻め滅ぼされ誰もいなくなった後、森を去った仲間がここに移り住んでより強固な要塞を築き上げたんだ。」
建物に漂う重々しい雰囲気に、奏太は納得する。こんな所に住んでいたら、エルフでなくともダークサイドに堕ちそうだ。
「ーーで、来たはいいけど中にはどうやって入るんだ?」
城門はいかにも固く閉ざされており、交渉以前に中に入ることすら叶わないのではないか。
「異種族の入場は厳しく制限されているが、エルフに対してはいつでも移住を受け入れているから、割と簡単に入場が許可されるんだ。君達は私の客人ということで、何とか許可を貰えるよう私が取り合ってみる。」
セイビアの話には確証が何一つないが、この状況では仕方がない。
セイビアが要塞へと歩みを進めると、奏太達もその後に続いたーー
城門に辿り着くと、門番のダークエルフはセイビア達の顔を見るなり「入れ。」とだけ言い、特にチェックもなく連れの奏太達ごと中へと促された。
「襲撃に備えて要塞を築いた割には、やけに入場審査が甘くないか?」
異種族がいるにも関わらず、あっさり中に入れたことに奏太達は拍子抜けする。
「まさか罠じゃないだろうな……。」
奏太の頭には嫌な予感がよぎる。
「分からない。ひょっとしたらダークエルフは私達が来ると初めから予想していたのかもしれない。私達が異種族に助けを求める事も。」
「要するに、相手の想定通りという事か。」
セイビアが険しい表情を浮かべながら、奏太の言葉に頷いたーー
奏太達が要塞の中へと進むと、中には街が広がっていた。街全体が薄暗い明かりに照らされ、建物が立ち並んでいる。
家、というよりはアパートメントの方が近いかもしれない。両脇に四角く型取られた建造物が、壁のように道路の両脇を挟んでいる。
日光は遮られ、新鮮な空気も通らない要塞内部は、暗く息苦しい雰囲気が漂っており、隅にはネズミが走り回っている。
「これまた分かりやすくダークな場所だなぁ……。」
「嫌な臭いがします~……。」
「アンダーグラウンドな感じにござるな……。」
セイビアの方を見ると、森に暮らすエルフ達にとっては尚更息苦しいようで、皆顔をしかめながら鼻や口を手で覆っている。
奏太達が訝しげに辺りを見回しているとーー
「おっ、誰かと思えばセイビアの姫様とその取り巻きじゃねーか。」
「ようやく俺達の所で暮らす気になったかぁ? ヒャハハ!」
道端にいるダークエルフ達が、セイビア達に向かって野次を投げてきた。
白い肌と透き通るように美しい髪を持つエルフとは異なり、彼らの肌は褐色で、髪は柄悪く逆立てている。
かろうじて尖った耳だけは森のエルフと同じだが、まるで夜中のコンビニに屯するヤンキーのようなダークエルフ達の風貌からは、かつてエルフだった面影を微塵も感じられない。
「随分と柄の悪い連中だな。」
「格好いいです……!」
パンク好きな響子にとって、彼らのヤンチャな見た目はドストライクだったらしい。
惚れ惚れと不良エルフ達を眺める響子の姿に、奏太と金重は引き気味の視線を送る。
「彼らも元々は森に暮らす、穏やかなエルフだったんだ。だがここの閉ざされた空間で過ごしているうちに、心がどんどん汚れていってしまったんだ……。」
「クッ……。なんと情けない事か……。」
「奴らはエルフの恥だ……!」
セイビアが悲しげに彼らがこうなってしまった原因を語ると、周りのエルフ達が怒りの言葉をダークエルフ達に向けた。
「だから何としても、彼らを森に連れ戻さなければならないんだ……!」
一方、セイビアはかつての仲間達を元の鞘に戻すべく、固い決意を口にしたーー
道中、ニヤニヤと下品な視線と言葉をダークエルフ達にかけられながら進んでいくと、要塞の天井まで届く高い塔が姿を現した。
「ーーここにダークエルフのリーダーがいる。」
いよいよ敵の大将の陣営を前に、かつ建物の迫力に圧倒され、奏太達は「ゴクリ」と唾を飲んだ。
見ると塔の入り口の前に、2人の門番らしき男が談笑しながら立っている。
「エルフの族長の娘、セイビアだ。リーダーと話がしたい。」
セイビアは臆せず男達に話しかける。
「おい、森の腰抜け共が来たぜ。」
「この前みたいに泣きべそかいて帰るなよ? ヒヒヒ。」
門番の男達がセイビア達に嘲罵を吐くと、塔の扉を開いた。
セイビア達はそれを無視し、塔の中へと進む。奏太達もビクビクとその後に続いた。
塔の中に入ると、目の前に支柱が立っており、地面には円形の台のようなものがある。
「これは……?」
周りを見渡すが階段は見当たらず、この柱と台しかない。
「この台に乗ると、魔力で上まで昇る仕組みになっているんだ。」
セイビアがそう言いながら台の上に乗り、奏太達もそれに倣うと、自動的に台が浮上した。
「エレベーターみたいだな。」
「うわぁ~! 高いですねぇ~!」
「ひ、非常ボタンはないでござるか!?」
奏太は高所恐怖症ではなかったが、壁が無い故に下を見ると、金重程ではないにせよ足がすくむ。
まるで自分達の恐怖心を煽るような作りだ。
「手を出さないでくれよ? 最上階の床に挟まれちゃうから。」
セイビアの言葉に奏太達が上を見上げると、段々と穴の空いた天井が迫ってくる。
屋根が近づくにつれ段々と穴が大きくなり、奏太達の乗っている台が天井同じ高さに達すると、台が隙間なく穴にはまる。
そして目の前には開けた空間が広がっていたーー
壁は派手な装飾が施され、床にはレッドカーペットが敷かれている。
その先には硝子の机が置かれ、上に様々な果物が並んでいる。
奥には高級ソファのように柔らかそうな椅子が置かれ、美しいダークエルフの女性が、殆ど裸に近いような衣を纏って座っている。
そして一人の男がそこにドッシリと座り込んでいた。
男は両脇の女性の肩に腕を回し、女性達から与えられる果物を美味しそうに頬張っている。
男が奏太達の姿に気付くと、ゆっくりと前屈みになり、肘を打ちながら口を開いた。
「ーーよく来たな、セイビア。どうやらお仲間を見つけてきたようだな。」
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