異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

8サビ-兄妹

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 セイビアの口から出た『兄』という言葉に、奏太達は驚く。
 まさかダークエルフのリーダーがセイビアの兄だったとは、全く想像していなかった。
 セイビアは言葉遣いこそ男勝りな感じだが、その見た目と振る舞いはエルフらしく美しい。またセイビアの両親も、エルフの長に相応しい気品さがあった。だがーー

「ーーそれで、俺達の国に住む決心は着いたか? 妹よ。」

 ラドウィグはブドウを口に放り投げながら、クチャクチャとセイビアに問いかけた。

「いえ、今日は兄上に交渉を申し出に来た。」

「ふーん。一体何の交渉だ?」

 ラドウィグがブドウの房を取り上げ、そのまま無作法にむしゃぶりつくと、床に種と皮を「ペッ」っと吐き捨てた。
 その下品な様子にエルフ達は顔をしかめる。
 セイビアとの血の繋がりは微塵も感じられない。
 
「まず、私達の村への進軍を止めて頂きたい。」

 セイビアは実の兄の不行儀な態度も気に留めず、淡々とこちらの要求を伝える。

「ーーそれで?」

 対するラドウィグは、話半分に果物をクチャクチャと頬張っている。
 2人のやり取りと見ていると、到底兄妹のそれとは思えない。
 まるで暴君と、それに進言する家来のような構図だ。

「そして兄上達に、再び森へと戻ってきて欲しい。」

 セイビアが要求を伝え終わると、無言の空間にラドウィグの「クチャクチャ」という咀嚼音だけが鳴り響く。
 そして「ゴクン」と飲み込むと、ようやく口を開いた。

「交渉っていう割には、お前達の要望ばかりだな。俺達にメリットが無い。却下だ。」

  嘆願するセイビアを嘲笑うように、ラドウィグは冷たく言い捨てた。

「こんな所にいては、皆の心はどんどん蝕まれてしまう! 兄上も森に居た頃は、優しくて誇り高いエルフではなかったか!」

 「昔の話だ。俺はかつてのように森しか知らず、異種族の襲撃に怯える腰抜けとは違う。」

「では……兄上は家族を、同族のエルフを滅ぼす為に森を出たのか!? それでは私達の村を焼き、仲間を殺した奴等と同じではないか!」

 一向に歩み寄りを見せないラドウィグに対し、セイビアの言葉が段々と強くなる。

「人聞きの悪い事を言うな。俺はエルフを守るためにやっているんだぜ? エルフが襲撃に怯えず暮らせるように、この要塞を作って、軍隊を整えたんだ。
 だが腑抜けのお前らは俺の崇高な志に対し、一向に理解を示さずこちらに来ないから、強引な手を使わざるを得ないだけで。
 お前達が大人しく従うなら、俺達も手荒な真似はしない。」

「いけしゃあしゃあと……! 森とエルフに育てられた恩を忘れたか!」

「エルフが森を捨てれば、待っているのは一族の滅亡のみだ!」

 ラドウィグの言葉に、エルフ達が憤る。
 だがかつての仲間達の憤慨にも、ラドウィグはまるで意に介さない様子で、モグモグと果物を頬張る。

「ーーそういう古い思想が、エルフの衰退を招いたんだ。現にどうだ。俺達は常に棲み家を追われ森を転々とし、今ではみすぼらしい村に、情けなく身を寄せ合っている始末だ。
 かつて世界中の種族が尊崇し仰ぎ見たエルフ族は、今や哀れみと蔑みの目を向けられている。
 そんな状況を黙って受け入れられる程、俺はエルフの誇りを捨てていない。 
 エルフはどの種族よりも優れた存在でなければならない。
 エルフの誇りを失ったのは俺じゃない。異種族から疎んじられる状況に甘んじるお前達こそ、エルフの誇りを忘れたんだ。
 だから俺は森を去り、俺に賛同する者達と共にこの国を作った。
 ここが、この要塞こそが、真のエルブン王国だ!
 お前達のように森にしがみつく腰抜け共を、真のエルフとは俺は断じて認めん!」

 それまで怠そうな顔で話していたラドウィグが、セイビア達に向かって強い視線を送った。

「ーーどうしても、森には戻らないおつもりか?」

 セイビアが、静かに問いかける。

「ああ。今までお前達に優しくしてやったのは、同族としての温情だ。
 明日お前達の村に軍を送る。もしそこでお前達が俺達に従わず反抗すれば、そこで手を下す。弱きエルフ共はこの俺が滅ぼす。」

 ラドウィグが、冷酷に宣告する。

「そうか……。私達は森を去るつもりはない。」

「可愛い妹を葬るのは心苦しいが、明日でお別れだ。」

「ーーだが、私達は兄上達の進軍には決して屈しない。頼もしい協力者を見つけたからな!」

 そう言って、セイビアが奏太達の方を向く。

 ……え!? ここで俺達に振る!?

 先程から完全に置いてけぼりを食らっていたのに、突然自分達に視線を向けられ奏太がオロオロと焦る。

「ふん。そんなひ弱そうな人間を連れてきて、一体何になる。」

 まるで虫けらやネズミでも見るかのように、ラドウィグは興味なさげにヒラヒラと手を振る。

「兄上、彼らはヴィシュガルド王国の騎士にあられる。」

「ーー何? 騎士だと?」

 セイビアが得意気に奏太の肩書きを紹介すると、ラドウィグがジロリと奏太達に視線を送る。

「い、いえいえ! 騎士は奏太さんだけです!」
「でござる!」

 ラドウィグの鋭い視線に響子と金重がたじろぎ、奏太に手を向ける。

 2人ともぉおおおお! 俺に押し付けて逃げるなぁああああ!

 奏太が悲痛な顔で2人に訴える。

「ーーフッ。ハッハッハ! 一体何を言い出すのかと思えば、この貧相な人間が騎士だと!?
 そんな戯言にこの俺が騙されるとでも思っているのか!?」

 ラドウィグの目には、奏太に騎士らしき要素は何処にも見当たらず、セイビアの話を笑い飛ばす。

「え、えーっと、一応騎士というのは本当なんだけど……。」

 奏太が弱々しく、ラドウィグの疑いを否定する。

「ハッ! ならば騎士である証拠を俺に見せてみろ!」

「ええ~……。証拠って言われてもな……。国王に突然決められただけだしーーあ、そうだ。」

 奏太は思い付いたように、自分の腰に目を向ける。

「一応騎士の剣なら持ってるけど……。」

 そう言うと、奏太は腰の鞘から剣を抜いてラドウィグに披露した。

「なに!? これは騎士の剱……! 騎士と認められた者しか持つことを許されないという……!」 
 
 奏太の剣を見て、ラドウィグが驚きの表情を見せ、セイビアが「フフン」と鼻を鳴らした。

「どうだ兄上。流石の兄上らも騎士を相手にするのは流石に骨が折れるだろう!
 今ならまだ間に合うから、和睦に応じた方が良いぞ!」

「ーーなるほど。確かにこいつが騎士というのはどうやら本当のようだな。
 騎士を相手にするとなると、こちらが負ける事はないにせよ、多少の被害が出る可能性もある……。」

「ならば……!」

 ラドウィグが納得を見せたことに、セイビアの表情が明るくなる。

「ならば、騎士。今ここで俺と一騎討ちしろ。」

「ーーは?」

「「「えぇええぇぇえええーーー!?」」」

 ラドウィグからの決闘の申し出に、奏太達の驚愕の声がこだましたーー
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