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1章
9C-防戦
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ーー明朝、エルフの村ではダークエルフの侵攻を静かに待ち受けていた。
皆、矢盾や壁の影に隠れながら、無言でその時を待つ。冒険者組も、一際大きな矢盾の影で、ビクビクと開戦の時を待ちながら、奏太は昨日の作戦会議の内容を復習していたーー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『まず今から防御壁を立てて、敵の侵攻に備える。部隊は守備班と攻撃班に分かれて、守備隊が盾で敵の攻撃を防ぎながら、攻撃隊が弓で応戦する。』
セイビアが作戦会議の指揮を取り、村人達が頷きながら聞き入っている。
場には30名程の村人全員が集まっていた。そこには女性のエルフの姿もあるが、子供や老人の姿は何処にも見当たらない。
先程奏太がセイビアに聞いたところ、長寿のエルフは頻繁に子供を作らないらしく、今いるエルフは全て大人のエルフで、その平均年齢は500歳。最期まで若い姿と肉体を保ち、1000歳を超えるとやがて肉体は滅び、妖精に生まれ変わるらしい。
故に村には子供や老人はおらず、性別関わりなく幼少期から弓の扱いを学ぶため、村人全員が戦いに参加するとの事だった。
『敵の数はどれくらいだ。』
一人のエルフがセイビアに向かって質問を投げかけた。
『既に半分以上のエルフが、ダークエルフの要塞へと移り住んでしまった。
明日は何割かが要塞に残るとしても、数の面では不利になるだろう。』
中々厳しい状況に、エルフ達が溜め息をつく。
『俺達はどうすればいいんだ?』
奏太が手を挙げて質問する。
『君達は最後尾で守備の後ろに付いて貰う。そしてタイミングを見計らって演奏を開始してくれ。』
『お、俺達が本陣かよ……。』
『君達の事は僕達が必ず守るから安心して演奏してくれ!』
例の3人が、奏太達に向かって心強い言葉をかける。
『なんとしても兄達の侵攻を食い止め、エルフの血を守りきるぞ!』
『『オオ!』』
セイビアがエルフ達を鼓舞し、全員が掛け声を上げてそれに応じたーー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『き、緊張します~……。』
『し、しし小生、トイレに行ってきてもいいでござるか?』
『そこの物陰で早くしてこいよ!』
響子と金重が、明らかに緊張を露にする。
無理もない。当の奏太もその手にはじっとりと汗を握っていた。
先日の盗賊団との戦いは戦場そのものだったが、当時は突然の出来事であり、その場の勢いでなんとかなった。
だが今回は事前に陣営を組む、正真正銘の戦だ。戦い前の緊張がんがあの時と比較にならない。
『敵が来たぞー!』
偵察隊から敵の到来が念話で伝えられ、場の緊張が一気に高まる。
『おい金重! 早く戻れ!』
『あわわわわ……!』
奏太も念話を使い、急いで金重を呼び戻した。
いよいよ、戦いの火蓋が切られる。
奏太達はゴクリと唾を飲み、矢盾の影に身を縮ませたーー
*************************
一方ダークエルフの軍勢は「ザッザッ」と音を立てながら、一糸乱れぬ行進で森を進んでいた。
皆頑丈な防具を身に纏い、黒く大きな弓を携えている。
そして村から少し離れた所まで近付くと、先頭を歩くラドウィグが「サッ」と手を挙げ、進軍を停止した。
「全員、構えろ!」
ラドウィグが指揮を取ると、軍隊は一斉に弓を手に取り弦を「ギリギリ」と引く。
「放てぇー!」
ラドウィグの掛け声と共に、矢が一斉に空へと放たれたーー
*************************
エルフ達がダークエルフの侵攻を待ち構えていると、突然森の奥から夥しい数の矢が飛び出し、空を埋め尽くした。
「矢の攻撃が来るぞー! 矢盾で防御を取れー!」
セイビアが防御を指示すると、エルフ達は一斉に矢盾の影に身を隠した。
そして間を置かず、空から矢の雨が降り注いだ。
「ヒュンッ」という空気を裂く音と、「ドスッ」という鈍い音がが村中を襲う。
エルフ達は頑丈な矢盾で何とかそれを防ぐも、絶え間なく降り注ぐ矢の雨に、一歩も動けない。
エルフ達の家屋は容赦ない矢の攻撃によって、次々と破壊されていく。
「なんだこの矢の数は!?」
「このまま姿を見せず、村を破壊し尽くすまで続けるつもりか!」
何とか反撃の機会を狙いたい所だが、ダークエルフ達は森から姿を見せず、何処を狙って反撃すればいいのか分からない。
「クッ……このままではいずれ防御が破られる」
セイビアも対応にあぐねていた。エルフ達は弓の戦いには長けていても、歩兵戦術に乏しかった。
その上村という守るべきものがある以上、自分達の予想を上回る長距離攻撃には、為す術なく防御するしかなかった。
「奏太君、響子さん、金重君!このまま演奏に入ってくれ!」
セイビアが業を煮やし、奏太達に演奏を求めてきた。
「こ、この中でか!?」
全く反撃体制が整わない中自分達に戦況を委ねられ、奏太が狼狽える。
「すまない……このまま待っていても反撃のチャンスはない。何とか君達の演奏で敵の攻撃を止めてくれ!」
「わ、分かった……響子さん、金重、やるぞ!」
「わ、分かりました!」
「し、承知でござる~!」
奏太達はエルフの防御に守られながら、急いで演奏の準備に取り掛かった。
奏太は戦いの前にチューニングを済ませたアコギを担ぎ、響子と金重はエレキベースとエレキギターをアンプに繋ぐ。
「2人共準備はいいか!?」
「はい!」
「大丈夫でござる!」
「じゃあ行くぞ! 1、2、3、4……」
奏太が口でカウントを取り、Let It beの演奏が始まったーー
矢の雨が立てる音に混ざって、奏太達の演奏が奏でられる。
戦場に穏やかなメロディが流れる。
先程まで敵の攻撃に為す術なく焦りの表情を浮かべていたエルフ達が、穏やかな空気に包まれる。
「戦いの最中だというのに、気分が落ち着いていく」
「ああ……なんと心地良い音色だ」
エルフ達は流れるメロディに身を任せている。だがーー
おかしい……一向に矢の攻撃が止まないぞ……。
敵の攻撃が止まない事に、奏太が焦る。
まさか、ダークエルフ達に演奏が聴こえていないのか!?
奏太達の奏でる演奏は儚くも森に吸い込まれ、ただ味方の士気を下げるばかりだった。
「これは……完全に失敗だ……」
奏太は作戦の失敗を悟り、徐に演奏を中断したーー
皆、矢盾や壁の影に隠れながら、無言でその時を待つ。冒険者組も、一際大きな矢盾の影で、ビクビクと開戦の時を待ちながら、奏太は昨日の作戦会議の内容を復習していたーー
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『まず今から防御壁を立てて、敵の侵攻に備える。部隊は守備班と攻撃班に分かれて、守備隊が盾で敵の攻撃を防ぎながら、攻撃隊が弓で応戦する。』
セイビアが作戦会議の指揮を取り、村人達が頷きながら聞き入っている。
場には30名程の村人全員が集まっていた。そこには女性のエルフの姿もあるが、子供や老人の姿は何処にも見当たらない。
先程奏太がセイビアに聞いたところ、長寿のエルフは頻繁に子供を作らないらしく、今いるエルフは全て大人のエルフで、その平均年齢は500歳。最期まで若い姿と肉体を保ち、1000歳を超えるとやがて肉体は滅び、妖精に生まれ変わるらしい。
故に村には子供や老人はおらず、性別関わりなく幼少期から弓の扱いを学ぶため、村人全員が戦いに参加するとの事だった。
『敵の数はどれくらいだ。』
一人のエルフがセイビアに向かって質問を投げかけた。
『既に半分以上のエルフが、ダークエルフの要塞へと移り住んでしまった。
明日は何割かが要塞に残るとしても、数の面では不利になるだろう。』
中々厳しい状況に、エルフ達が溜め息をつく。
『俺達はどうすればいいんだ?』
奏太が手を挙げて質問する。
『君達は最後尾で守備の後ろに付いて貰う。そしてタイミングを見計らって演奏を開始してくれ。』
『お、俺達が本陣かよ……。』
『君達の事は僕達が必ず守るから安心して演奏してくれ!』
例の3人が、奏太達に向かって心強い言葉をかける。
『なんとしても兄達の侵攻を食い止め、エルフの血を守りきるぞ!』
『『オオ!』』
セイビアがエルフ達を鼓舞し、全員が掛け声を上げてそれに応じたーー
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『き、緊張します~……。』
『し、しし小生、トイレに行ってきてもいいでござるか?』
『そこの物陰で早くしてこいよ!』
響子と金重が、明らかに緊張を露にする。
無理もない。当の奏太もその手にはじっとりと汗を握っていた。
先日の盗賊団との戦いは戦場そのものだったが、当時は突然の出来事であり、その場の勢いでなんとかなった。
だが今回は事前に陣営を組む、正真正銘の戦だ。戦い前の緊張がんがあの時と比較にならない。
『敵が来たぞー!』
偵察隊から敵の到来が念話で伝えられ、場の緊張が一気に高まる。
『おい金重! 早く戻れ!』
『あわわわわ……!』
奏太も念話を使い、急いで金重を呼び戻した。
いよいよ、戦いの火蓋が切られる。
奏太達はゴクリと唾を飲み、矢盾の影に身を縮ませたーー
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一方ダークエルフの軍勢は「ザッザッ」と音を立てながら、一糸乱れぬ行進で森を進んでいた。
皆頑丈な防具を身に纏い、黒く大きな弓を携えている。
そして村から少し離れた所まで近付くと、先頭を歩くラドウィグが「サッ」と手を挙げ、進軍を停止した。
「全員、構えろ!」
ラドウィグが指揮を取ると、軍隊は一斉に弓を手に取り弦を「ギリギリ」と引く。
「放てぇー!」
ラドウィグの掛け声と共に、矢が一斉に空へと放たれたーー
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エルフ達がダークエルフの侵攻を待ち構えていると、突然森の奥から夥しい数の矢が飛び出し、空を埋め尽くした。
「矢の攻撃が来るぞー! 矢盾で防御を取れー!」
セイビアが防御を指示すると、エルフ達は一斉に矢盾の影に身を隠した。
そして間を置かず、空から矢の雨が降り注いだ。
「ヒュンッ」という空気を裂く音と、「ドスッ」という鈍い音がが村中を襲う。
エルフ達は頑丈な矢盾で何とかそれを防ぐも、絶え間なく降り注ぐ矢の雨に、一歩も動けない。
エルフ達の家屋は容赦ない矢の攻撃によって、次々と破壊されていく。
「なんだこの矢の数は!?」
「このまま姿を見せず、村を破壊し尽くすまで続けるつもりか!」
何とか反撃の機会を狙いたい所だが、ダークエルフ達は森から姿を見せず、何処を狙って反撃すればいいのか分からない。
「クッ……このままではいずれ防御が破られる」
セイビアも対応にあぐねていた。エルフ達は弓の戦いには長けていても、歩兵戦術に乏しかった。
その上村という守るべきものがある以上、自分達の予想を上回る長距離攻撃には、為す術なく防御するしかなかった。
「奏太君、響子さん、金重君!このまま演奏に入ってくれ!」
セイビアが業を煮やし、奏太達に演奏を求めてきた。
「こ、この中でか!?」
全く反撃体制が整わない中自分達に戦況を委ねられ、奏太が狼狽える。
「すまない……このまま待っていても反撃のチャンスはない。何とか君達の演奏で敵の攻撃を止めてくれ!」
「わ、分かった……響子さん、金重、やるぞ!」
「わ、分かりました!」
「し、承知でござる~!」
奏太達はエルフの防御に守られながら、急いで演奏の準備に取り掛かった。
奏太は戦いの前にチューニングを済ませたアコギを担ぎ、響子と金重はエレキベースとエレキギターをアンプに繋ぐ。
「2人共準備はいいか!?」
「はい!」
「大丈夫でござる!」
「じゃあ行くぞ! 1、2、3、4……」
奏太が口でカウントを取り、Let It beの演奏が始まったーー
矢の雨が立てる音に混ざって、奏太達の演奏が奏でられる。
戦場に穏やかなメロディが流れる。
先程まで敵の攻撃に為す術なく焦りの表情を浮かべていたエルフ達が、穏やかな空気に包まれる。
「戦いの最中だというのに、気分が落ち着いていく」
「ああ……なんと心地良い音色だ」
エルフ達は流れるメロディに身を任せている。だがーー
おかしい……一向に矢の攻撃が止まないぞ……。
敵の攻撃が止まない事に、奏太が焦る。
まさか、ダークエルフ達に演奏が聴こえていないのか!?
奏太達の奏でる演奏は儚くも森に吸い込まれ、ただ味方の士気を下げるばかりだった。
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