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2章
1B-魔晶石
しおりを挟む奏太達はアイバニーゼに促されるまま、馬車に揺られて街を進んでいた。
街中を走るには目立ちすぎる馬車の豪華さに、奏太達はただただ恐縮するばかりだった。
一体どこに向かうのだろうかと、流れる景色を眺めていたところ、まだ見慣れた景色を離れる前に、早くも馬車が止まった。
そしてアイバニーゼが馬車を降り、奏太達もその後に続くと、目の前にはあのオンボロな楽器店が立っていた。
そして入店の報せも程ほどに、アイバニーゼは颯爽と店内へと入っていったーー
「アイバニーゼが依頼した相手って、永吉だったのかよ!」
店内に入ると、奏太が開口一番に驚きの声を上げた。
「おお。まったくそこのお姫様は無茶な注文をするぜ。」
やれやれといった様子で、永吉が奏太の声に応える。
「それで、依頼の方はできそうですか?」
驚く奏太達を気にする様子もなく、アイバニーゼは淡々と本題に入った。
アイバニーゼが永吉に質問しながら、先程入店する前に執事から渡された電子ピアノをカウンターの上に置く。
「おう。隆司と相談して設計図を練ってみたが、なんとかなりそうだぜ」
「それはよかったですわ」
永吉の前向きな返答を受け、アイバニーゼはご満悦な表情を浮かべる。
「えっと、永吉さん……。アイバニーゼさんに一体何を頼まれたんですか……?」
これまでのアイバニーゼの発言や行動と、今の状況からおおよそ察しはついていたが、響子が念のために確認を入れる。
「実は姫様にシンセサイザーを作ってくれと頼まれていたんだよ」
やっぱり……どうやらアイバニーゼは本気で俺達のバンドに入りたいらしい。
予想が的中したことに響子は「ガーン」とショックを受ける。
それにしても異世界でもシンセサイザーを作れてしまうとは、流石一流楽器メーカーに就職しただけのことはある。
もっとも、自分達がいた世界のシンセサイザーとどれほど近しいものを作れるのかはまだ未知数ではあるが。
ここではプログラミングも出来ないし、電子回路も組めないだろうから、完璧なそれを作るのは難しいと見る。
だが、先程永吉の口からチラリと出たが、隆司も関わっているということは、恐らく蓄音箱を応用したものを作るつもりなのだろう。
永吉が作ろうとしているものに奏太が予測を立てていると、永吉はおもむろに腕を組み、何やら苦い顔を浮かべた。
「ただなぁ~……。電子ピアノから出す音を蓄音箱に通して、様々な効果を自在に与えるには、特殊な鉱石を間に挟まなきゃいけないんだが……。
それが相当希少なもので中々市場に出回っていないんだよ。」
どうやら材料不足で製作にてこずっているらしい。
「一体それはなんという鉱石なんですの?」
一方のアイバニーゼは、そんなものお金でどうにかなると思っているのか、全く気にする様子もなく材料名を確認する。
「これなんだがーー」
永吉はダイヤモンドのようにキラキラ輝く極小の結晶を、そっとカウンターの上に差し出した。
「これは……?」
「綺麗な結晶ですねぇ~」
「風で飛んでいきそうな程に小さいでござるな」
奏太達は見たこともない結晶をマジマジと見つめる。
「これは魔晶石ですわね……」
どうやらアイバニーゼはこれがなんなのか知っているらしい。
というか、あれ? 魔晶石っていうとエルフがくれたあのデカい石と同じ名前だな……。
聞き覚えのある単語に、奏太達は顔を見合わせる。
「ああ。一応国内の希少石を扱う店を探し回って、隆司にも行商先で探してもらっているんだが、生憎まだこれだけしか手に入らなかった。
この大きさのものがあと2、30個は必要になる。
事前に受け取った材料費だけではとてもじゃないが足りない。」
どうやらそんな気はしていたが、この魔晶石という石は相当高価なもののようだ。
「お金のことに関してはどうにかいたしますが、確かにそれだけの数の魔晶石を揃えるのは時間がかかりそうですね……」
永吉とアイバニーゼが考え込む中、奏太は鞄をゴソゴソと探りながら思い当たる石を取り出す。
「なあ、その魔晶石ってやつなら俺達持っているんだけど……」
奏太がカウンターの上に石を『ゴトッ』と置くと、永吉とアイバニーゼは目を丸くして顔を寄せた。
「なっ……! これは魔晶石の原石じゃねーか! しかもめちゃくちゃデケぇ! 一体こんなものどこで手に入れたんだ!?」
「し、信じられません……。これだけの大きさの魔晶石、売れば私の別邸が10棟、いや20棟は建ちますわ!」
奏太達がエルフから貰ったものは、どうやらとんでもないものだったらしいーー
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