異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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2章

1サビ-嫌疑

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「ーー以前は穏やかでなんの問題も起こさなかった冒険者達が、そちらの者達の蓄音箱を買って以来、街で騒音問題を度々起こすようになったそうです。
 しかも、彼らは音量を控えるよう促す住人に対し逆上し、無理矢理大音量で音楽を聴かせるといった暴挙に出ているとの報告が上がっています。」

「そんな……」

 報告を終え、ローラントが奏太に向かって勝ち誇った表情を向けると、奏太達はガクリと肩を落とした。
    恐らくロックンロールを聴いて熱くなった冒険者よるものなのだろう。
 ロックンロールで熱くなる気持ちは分かるが、ここまでの事態になるとは想定しておらず、奏太達はショックを隠しきれなかった。

「総督の身としてはこの事態を看過するわけにはいかない。
 国民の風紀を乱す音楽の流布は、厳しく取り締まらねばならない。
 よって君達の蓄音箱は、危険性がないと分かるまで販売禁止とする。
 既に販売されている蓄音箱に関しても、街中での視聴に制限を設ける」

 スラインの残酷な決定に、奏太達は呆然と立ち尽くした。

 これからって時に、どうして……

「それとーー奏太殿によるアイバニーゼの護衛の任務を一旦解除する。本日付けでアイバニーゼは城に戻るように」

「ど、どうしてですかお父様!」

 スラインに付け加え国王からの辛い言い渡しに、アイバニーゼが食って掛かる。
 以前の奏太にとってはアイバニーゼの護衛任務が解かれても、嬉しい以外の感情はなかったが、今となっては収入源の一つが絶たれてしまったため、アイバニーゼの別邸に住む理由を失うのは危機的状況だった。

「奏太様達の音楽は決して危険なものではありません!
 目の前で一緒に聴いたお父様ならよくご存じでしょう!」

 アイバニーゼの訴えに、国王は悲痛な表情を浮かべた。

「す、すまぬアイバニーゼよ……音楽に関する判断はスライン総督に一任しているのだ……。
 そして現に住民からの苦情が出ている以上、国としてもなんらかの対策を行わなければならぬ……」

 国王がアイバニーゼに対し、申し訳なさそうに事情を説明する。

「ではどうして奏太様の護衛の任務が取り下げになるのですか!
 まさか……一度授与した勲章を剥奪するというのですか!?」

「そ、それはない! 奏太殿の騎士の称号が変わることはない。
 ただーー護衛任務の解除については、国の事情により余が決定を下した。」

 国王はそう告げると、神妙な面持ちで事情を語り始めた。

「先日、響子殿、金重殿、奏太殿はエルフの村に赴いたそうであるな。」

「あ、ああ……」

 既に国王の耳まで入っていることに驚きながらも、奏太は正直に答えた。

 一体それと護衛任務の解除になんの関係があるのだろうか……。

「実は先日ヴィシュガルド王国と同盟を組んだズームー王国は、隣国のコラグ王国と同盟関係にある。その事に関して3名は存じ上げるか?」

「ああ。ドワーフの国だっけ? 知ったのはついさっきだけど……」

「そうか……。実はそのコラグ王国のドワーフ族と、エルフ族というのは古来よりあまりいい関係とは言いがたい。
 戦争までは至っていないものの、お互いの種族に対する差別心が根強く、エルフ族が度重なる不運と、仲間割れにより弱体化した事に、ドワーフ族は内心溜飲を下げていたほどだ。
 しかし、本日エルフ達が人間の冒険者達と共に協力し、エルヴン王国なる新たな国の建国に動いたと情報が入った。
 聞くところによると、その冒険者達というのが……」

「お、俺達です……」
「です……」
「でござる……」

 国王から視線を送られ、奏太達が下を向いて白状する。
 どうやら外交的にマズイことをしてしまったらしい。

「ですが! いくらドワーフとエルフの仲が悪いからといって、奏太様達がエルフの危機を救ったことは素晴らしいことではありませんか!?」

 すかさずアイバニーゼが奏太達にフォローを入れる。

「もちろん本来であれば3人の行動は称賛に値する。だが問題は、コラグ王国とズームー王国が同盟関係にあるということ。
 そしてその冒険者達の中に、ヴィシュガルド王国の騎士がいたという事実だ。
 その騎士がアイバニーゼの側近であることがコラグ王国に知れれば、王国の指示により3人がエルフ族に協力するために動いたと嫌疑をかけられる恐れがある。
 それは3か国の関係において由々しき事態となる。
 ゆえにアイバニーゼには済まぬが、奏太殿には事態が収まるまでしばらくアイバニーゼの護衛から離れてもらいたい。」

「そ、そんな……」

 冒険者活動も、バンド活動も波に乗ってきた中、ここでバケツ大の水をぶっかけられ、奏太達は消沈する。
 そしてアイバニーゼも、奏太という側近を失い絶望に暮れた。

 ちくしょう……俺達はなにも悪いことなんかしていないのに、どうしてこんなことに……ん?

 なにやら不穏な雰囲気を感じとり、奏太が顔を上げると、そこにはいやらしく口元を歪ませるローラントの姿があった。

(ククク……うまくいった。
 あいつ等の音楽活動を妨害できただけでなく、アイバニーゼ様を城に戻すことができた……。
 やはりアイバニーゼ様は私の横にいるべきお方なのだ!
 そしていずれはこの私が総督となり、アイバニーゼ様を妻として娶るのだ……!
 私の王国第一音楽隊隊長という身分でも、ほとんどの女を自分のものとすることができるが、唯一王族だけは私の手には未だ届かぬ。
 だが総督という国王に次ぐ立場になれば、それも夢ではない!
 今回の一連の出来事を私の功績とし、いずれ引退する総督に後継者としてご指名頂ければ、アイバニーゼ様は私のもの……
 フフ……フフフフ……)

 ローラントが怪しく企む様子に、奏太はめざとく目をつけた。

 あの顔……きっと俺達を陥れようとあいつが企んだんだな!
 クソ! あんなやつに邪魔されてたまるかよ!

「ーーなあ、さっき危険性がないと分かるまでって言ったが、つまり俺達の音楽が皆に受け入れられれば俺達の音楽活動を認めてくれるってことだな?」

「ああ……まあそういうことになるが」

 奏太の質問に対し、スラインが頷く。

「なら今度のヴィシュガルド音楽祭、そこで決着を付けよう!
 国民全員に俺達の音楽の、ロックンロールのすばらしさを知らしめてやる!」

 奏太は自らの決意を高々と宣言したーー
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