異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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2章

1間奏-条件

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「ほう。音楽祭にて観衆達の判断に委ねるか」

「確かにそれは手っ取り早い」

 国王が奏太から出た決意の言葉に関心を示すと、スラインも同意を示す。

    一方でローラントは苛立ちに顔をしかめた。

(音楽祭で決着を付けるだと? 厚顔無恥も甚だしい……。
 既に貴様の命運は尽きた。それでもなお民衆の前で演奏しようなどとは、悪あがきにも程がある……)

 

「ではこうしよう。音楽祭での投票の結果、君達が入選以上の票を獲得すれば、今まで通り自由な音楽活動を認めよう。
 もし票が満たなければ、住民から苦情のあった音楽の流布は控えてもらう」

 スラインが奏太達に対し、解禁の条件を提示すると、言い出しっぺの奏太はその場で頷き、了承した。

「ごめん2人共。勢いで言っちゃったけど、それで大丈夫か?」

 響子と金重にも意向を確認する。

 かけられた疑いには納得いかなかったが、理不尽とも言い難かった。
 なぜなら自分達も街でその光景を見てしまったのだから。
 冒険者が大音量で自分達の音楽を流し、周りの住人が渋い顔でそれを見ていたのを。
 あの時は自分達の音楽が街で流れている嬉しさと恥ずかしさで、その場を去ってしまった。
 あそこで声を掛けなかったことが、この事態を招いたのならば、自分達でロックのイメージを変えるしかない。
 住民達の前で披露して、ロックンロールのよさを分かってもらうしかない。

「奏太さん……この前は見損なったなんて言っちゃいましたけど……やっぱり奏太さんはロックに熱い人でしたね! 安心しました!
 大丈夫です! ロックンロールの素晴らしさを住民の皆さんに知ってもらえるよう、皆で頑張りましょう!」

「どのみち住民の理解を得られなければ、小生達の音楽は広まらないでござるしな」

 2人からも前向きな返答が返ってくる。

 元々ギターやロックンロールへの理解はない中で、俺達はここまでやってきたんだ。
 もしここで住人達に認めさせることができないようであれば、金重の言うとおりどのみちロックスターになることなど不可能だ。
 蓄音箱については当分の収入は少なくなるが、クエスト同行で演奏して報酬を稼げばなんとかなる。あとはーー

「2つ確認しておきたいんだが、まず入選っていうのは具体的にどういった位置付けなんだ?」

「当日は出演者以外の王国民、および王族・貴族による投票によって出演者の演奏が順位付けされる。
 そのうち上位10組には王国音楽隊の認定が陛下から授与され、順位がそのまま音楽隊の序列となる。
 更にその下2組までが入選となり表彰を受ける。
 この国では音楽隊で入選して初めて、一人前の音楽家として認められるのだ」

 スラインの話をまとめると、要するに上位12組までに入ればいいということになる。
 1位や2位ならともかく、12位以内なら割と余裕じゃないか? と奏太がたかをくくっていると、その様子を察知したのかスラインが釘を刺す。

「12位とはいっても、その中に入るのは簡単なことではない。
 音楽祭には100組ほどの音楽隊や音楽団、その他腕のなる音楽家が集まり、自慢の演奏を披露する。
 音楽祭は3日間にかけて行われ、披露する順番はくじ引きによって決まる。
 ゆえに直近の演奏が票数に大きく影響する傾向があるため、名のある音楽団や、王国音楽隊の後となると、無名な音楽団や音楽家は比較で不利となりやすい。
 しかも上位10組に関しては多少の変動はあれど、どの音楽隊も王国所属の座を何年も守り抜いている。
 つまり実質的に残り90組が入選2組の枠を争っているのが現状だ」

 100分の12なら12%だが、90分の2は2.2%……。
 確かに一般参加者にとってはかなりの狭き門だ。これは気を抜いている場合じゃなかった。
 スラインから厳しい現実を知らされた奏太に対し、ローラントが「思い知ったか」と言わんばかりにドヤ顔を向ける。

「それと、蓄音箱の販売は停止ってことだったけど、郊外で演奏するのもダメなのか?」

 もしそうなってしまえば、唯一の稼ぐ手段と、戦う上での一番の武器を失うことになる。
 それはなんとしても避けたい。

 奏太は最後の生命線を維持するため、ここは強気に抵抗しようと身構える。
 だがそれは国王の言葉によって杞憂となった。

「スライン総督やローラント隊長からは全ての音楽活動を控えるべきではとの意見もあったが、余もそなた等に命を救われているゆえ、街以外で演奏することは不問とする。
 余もそなたらには国民に広く理解が得られるよう、音楽祭での健闘に期待するところである」

「私もローラント君の進言を受け、君達の音楽が今回の出来事にどれほど影響を及ぼしているのか現段階では量りかねるため、本来ならば安全を確認できるまでは自粛すべきと一時は考えた。
 だた君達の音楽活動の全てを禁止することは、陛下が君達に勲章や褒章を授与したことが間違っていたのでは、という国政批判にも繋がりかねない。
    よって陛下の判断に従い、処遇は蓄音箱の販売停止のみとする」

 どうやら寛大な措置が取られたようで、奏太は国王に対して感謝の念を抱いた。
 その横ではローラントが不服そうな表情を浮かべており、奏太は一矢報いた気持ちが湧く。
 響子と金重も、演奏を禁止されなかったことに安堵の表情を浮かべた。

「お父様、私はどうすればよろしいのでしょうか?
 楽器が準備でき次第、私は奏太様達の音楽団に加えて頂くことになっていたのですが……」

 奏太達が3人で前向きに団結心を高める中、アイバニーゼは一人、不穏な表情で国王に尋ねた。
 そういえばアイバニーゼのことはどうなるのか。
 アイバニーゼの言葉に、国王は明らかに返答に困っている。

「勿論アイバニーゼ様には私の音楽隊に戻ってきてもらいます」

 国王の代わりにローラントがアイバニーゼの質問に答えた。

「既に住民からは複数の苦情が上がっており、今の段階ではそこにアイバニーゼ様が関わっていたとなると、王族の信用失墜に繋がりかねません。
 エルフの件も含め、そのための側近解除なのですから、アイバニーゼ様には彼らと出来るだけ離れて頂かなければなりません。
 ましてや一緒に音楽に興じるなど、あってはなりません」

「そんな……!」

 ローラントの宣告を受け、アイバニーゼは悲痛な表情で国王に助けを求める視線を送った。
 だが国王はそれに応じることなく、険しい表情で目を瞑った。

 その様子に、奏太達は複雑な心情を抱いた。
 これまでアイバニーゼには散々振り回されてきたが、奏太達のファンであることは間違いなかった。
 その上やや強引ではあったが豪華な家にまで住まわせてもらった。
 そして自分達のバンドに加入するため、無理な条件も省みず、必死に奏太達の求めに応えようとした。

 それがこのように、大人達の事情によって思いを絶たれてしまったのだ。
 これには流石の響子もかつての自分の境遇を思い出し、同情の念を禁じ得なかったーー
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