異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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2章

1間奏-心配

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 話し合いが終わると、ローラントはアイバニーゼを引き連れ、悠々と音楽堂に戻っていった。

(ククク……ほぼ計画通りにことが運んだ。
 音楽祭の結果次第という余計な条件が入ったが、まあいい。
 一部の野蛮な冒険者達が奴らの音楽を持て囃しているようだが、あのドブネズミの音楽が住民達に広く受け入れられるはずかない。
 結果は目に見えている。
 奴らが入選することなど、万にひとつもあり得ん……!
 それにーー)

 ローラントは横を歩くアイバニーゼにいやらしく視線を送った。

(アイバニーゼ様が私の元へと戻ったのだ!
 これで不安材料は全てなくなった!
 後は奴らを音楽祭で叩きのめすだけだ。
 加えて私への民衆の支持を不動のものとし、総督への道を磐石なものにするのだ!
 そしてアイバニーゼ様を私の妻に……)

 ローラントが口元を不敵に歪める横で、アイバニーゼは今にも泣き出しそうな顔でうつむいていた。
 音楽堂に入り、隊員達から拍手で出迎えられても、陰鬱な表情が晴れることはなかった。

「皆の者、アイバニーゼ副隊長がお戻りだ。
 律動君、君には苦労を掛けてすまなかった。だが安心してくれ。
 君には元通り、シンバルの担当に戻ってもらう」

 ローラントの言葉に、律動は「ホッ」と胸を撫で下ろし、ピアノからパーカッションの席へと戻ったーー


 ******************

「ーーなあ、これからどうする?」

「ふお? 音楽祭で雪辱を晴らすのではなかったでござるか?」

 冴えない表情で言葉をこぼす奏太に対し、金重が先のやり取りを持ち出して答える。

「そうじゃなくて、アイバニーゼの事だよ。
 折角シンセサイザーも出来そうだったのに、このままだとなんかスッキリしないというか……」

「そうでござるな……小生としてはシンセサイザーがあればバンドの表現も増えるでござるから、有望なキーボディストを失うのは残念でござるな」

 奏太の意図するところとはやや違ったが、金重もアイバニーゼがいなくなったことを惜しんだ。

「い、いいんじゃないですか?
 私はセッ◯ス・ピストルズを誹謗したあの子がバンドに入るのは、初めから納得いきませんでしたし」

 響子は仲の悪かったアイバニーゼに対し毒づいたが、その言葉とは裏腹に表情は冴えなかった。

「でも、あんなに張り切ってたしなぁ……」

「シンセサイザーを作るのにも、随分お金を使っていたみたいでござるしなぁ……」

 かたやアイバニーゼを心配する2人の男に、響子がグッと拳を握り、顔を強ばらせた。

 ヤバイ……また怒らせたか?

 その様子に奏太と金重が思わず身構えた。

「ーーわ、わかりましたよ! 私もあの仕打ちは流石にちょっと酷いと思いましたし……。
 アイバニーゼさんが戻ってこれるよう、皆で働きかけましょう!」

 響子から意外な言葉が出たことに、奏太と金重は目を丸くし、思わず笑顔が溢れた。

「ーーくははっ! なんだ、やっぱり響子さんもアイバニーゼが心配だったんですね!」 

「どうやら2人和解のために、曲を演奏する必要はなさそうでござるな」

「も~~! 笑わないでください! 2人が心配そうだったから、仕方なくです~!」

 笑いこける男2人に対し、響子がポカポカと叩いて立腹する。

「いて! いて! わ、わかりましたよ。笑ってすみません響子さん。
 それでアイバニーゼを戻す方法だけどーー2人は何かいい案ある?」

 今回は国王も味方に付けられないから、状況を変えるのは中々難しそうだ。
 アイバニーゼのことを心配しつつも、いい方法が思い付かなかった奏太は2人に助け船を求めた。

「そうですね……今回の事はドワーフの方々とエルフの方々の仲が悪いのが問題なんですよね?」

「まあ事の発端はそうみたいですね」

 住民から苦情が出ているというところで、奏太達のバンドにアイバニーゼが関わっているという状況も問題なようだが、それは音楽祭で皆に演奏を聴いてもらえばきっと誤解は解ける。
 だがアイバニーゼが城に戻されたのは、恐らくドワーフ達のコラグ王国との関係が一番の問題となっているのだろう。

「でしたら、ドワーフの方々とエルフの方々を集めてHoliday In The Sunを披露するのはどうでしょうか?」

「う、うう~ん。流石にそれは厳しいんじゃないかな~」

「小生も同感でござる」

「ど、どうしてですか!?」

 響子の提案に対し、奏太と金重は微妙な反応を見せる。

「そもそも2種族を一同に介すのが難しいと思う。
 古くから仲の悪いドワーフとエルフに呼びかけたところで、多分応じてくれないんじゃないかな」

「エルフとダークエルフは元々同じ種族でござるから元の鞘に戻れたでござるが、ドワーフとエルフは全くの異種族でござるし」

「むぅ……」

 エルフの時はたまたま曲のテーマが状況と合致していたから、あの曲で両者は和解出来た。
 だがもしドワーフとエルフに同時にあの曲を聴かせて、両者の感情を昂らせるだけだったら、状況を悪化させるだけだ。
    2人から否定された事に、響子が口を紡ぐ。

「ドワーフの国に行って、小生達が説明するのはどうでござるか?」

 響子に替わって金重が代案を出す。

「そうだなぁ……。コラグ王国の国王に会えるかどうかは分からないが……自分達で弁明するのが無難か」

「師匠、グッドアイデアです! ちゃんと説明すれば、ドワーフの方達もきっと分かってくれるはずです!
 そこで魔晶石の加工もしてもらって、シンセサイザーを完成させてアイバニーゼさんに見せれば、きっと戻ってきてくれます!」

 まだ響子がいうように上手くいく確証はなかったが、いずれにせよコラグ王国に向かう以外に解決の手段は今のところ見つかりそうもなかった。

「そうだな……とりあえずコラグ王国に行ってみよう!」

「はい!」
「承知でござる!」

 3人は問題の解決に向けて、ドワーフ達の国に向かう決心をしたーー
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