補綴師(ほてつし)

電気羊の夢

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第一章 蛹化

ドライオーガズム

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 女性として性的に興奮していた私は、溢れ出るカウパー腺液を処理する為に、脱衣所に隣接するトイレに駆け込みました。

 私の心臓は高鳴り、顔が熱くなっていたので、私は間違いなく性的に興奮している筈でしたが、陰茎には変化がなく、お腹の奥が疼くような奇妙な感覚に包まれていました。

「あんっ…」

 個室に入った私は、トイレットペーパーで人工女性器を拭きましたが、敏感になっている部分を触ったことで声が漏れていました。

「んっ……あっ…んんっ…」

 私は人工女性器を触ることを止められなくなっていて、女性と同じ方法で自慰行為をしていました。

 男の時の私は自慰行為やセックスで声を出した事がありませんでしたが、女性の方法でする自慰行為は刺激が強すぎて、私は喘ぎ声を制御する事が困難になっていました。

 私の左手からは、手のひらに張り付く柔らかい乳房と、コリコリとした乳首の感触が伝わり、右手からは、カウパー腺液でヌルヌルに濡れた小陰唇の感触がして、その感触は、どちらも本物の女性と同じ感触でした。

 私は、いつものように女性の膣の位置に移動した亀頭を触りましたが、お腹の奥が疼くような感覚を満たす事は出来ませんでした。

 私はもどかしい気持ちで、気が狂いそうになっていました。

 しかし、陰裂の奥に指を押し込み、女性の膣にあたる部分を指で圧迫すると、お腹の奥から脳天にかけて電気が走るような強い快感が襲ってきました。

「あんっ!」

 私は女性が自分の膣の中に指を入れる自慰行為の手付きで、疼いているお腹の奥を刺激しました。

「クチュ…クチュ…クチュ…クチュ…」

 私の股間からは、女性器を愛撫している時と全く同じ音がしていました。

「んっ……あっ…あんっ……いい…あんっ……」

 私は今まで経験した事のない強い快感に、自分の体を制御できなくなっていて、僅かに残っている理性を使って、トイレの音消しのスイッチを入れるのが精一杯でした。

 私は偽の流水音に紛れながら夢中でオナニーをしていて、やがて、仰け反った体を痙攣させながら精液を放出しました。

 射精を済ませた私は、冷静な精神状態に戻る筈でしたが、私の快感は継続していて、偽の乳房や女性器を弄る行為を止める事が出来ませんでした。

「んっ!…いく!…あ…  」

 射精したばかりの私は、また、絶頂を迎えていて、その状況は何度も続き、私は射精をしていないのに、何度も何度も逝っていました…。


「トントン…トントン…」
「大丈夫ですか?」

 私はドアをノックされる音で目を覚ましました。

 どうやら、私は快感の強さに耐えきれず、気を失っていたようでした。

「あっ、大丈夫です!」

 正気に戻った私は、女声で返事が出来ていました。

 しかし、トイレから出る為に立ち上がろうとすると、足元がフラフラとしていて壁に手を付けないと立っていられない状態になっていました。

 トイレを流してドアを開けると、そこには、心配そうな顔で私を見ている二人の女性従業員さんの姿がありました。

 女性従業員さんの姿を見た私は、男であるのに女湯にいる事を思い出し、血の気が引きました。

 私は女装で女湯に侵入し、女子トイレで自慰行為をしながら立て籠っている前代未聞の変態になっていました。

「中から声がしないと、心配されている方がいて…」
「本当に、お体の方は大丈夫ですか?」

 どうやら女性従業員さんは、私が男であるとは気付いていない様子で、トイレの中で具合が悪くなった入浴客がいると、他のお客さんから連絡を受けたようでした。

「ごめんなさい 少し、のぼせちゃったみたいで…」
「そうですか」

 私が気を失ってから少し時間が経っていたようで、女性従業員さんは、私がトイレの中で大きな喘ぎ声を上げていた事を知らないようでした。

 脱衣所に戻った私がベンチに座ると、女性従業員さんが紙コップに入った水を渡してくれました。

 私は女子トイレの中で起こった事を頭の中で整理しました。

 私はセックスや自慰行為で男として何度も逝った事がありましたが、今回の様な快感に襲われた事はありませんでした。

 いや…エピテーゼで女装をして女性の方法でする自慰行為は、今回ほどではありませんが、強い快感が得られていました。

 どうやら私は、ドライオーガズムに達していたようでした。

 ドライオーガズムとは、射精を伴わない男性の絶頂のことで、通常のドライオーガズムは、直腸の内側から直接的に前立腺を刺激しなければ、絶頂に達する事が出来ないそうですが、私は外部から前立腺を圧迫した事で、気を失う程に強くて連続する快感に襲われていました。

 今回は、たまたま誰にもバレませんでしたが、私は本能のままに行動する事の危険を知り、外での自慰行為を自重しようと思いました…。
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