神様の手違いで幸運値ゼロだったお詫びに異世界で救世主に転生するはずだった俺が砂漠の王様に攫われて寵妃にされてしまいました。

篠崎笙

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サラーサ国へ

サラーサ国を廻ってみる

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「気に入ったのなら、我が国でも飼育してみるのもいいが」
 アーディルが飼おうか、って言ってくれたけど。

 それにも、首を横に振る。

 連れて帰って可愛がったら、嫉妬したツチノコに食われちゃったりして。
 飼うのも、別にいいかな……。

 まあツチノコは頭がいいから、俺が食うなよって言えば食わないだろうけど。
 余計なストレスになることはしない方がいいだろう。あんなに俺のことを慕ってくれてるんだし。
 ……とりあえず、そのナタはしまって欲しいな!

 可及的かきゅうてきすみやかに、話題をウサギから逸らそう。


「えーと、井戸の水を増やしたり、植物を生やそうと思うんですが。どのあたりがいいですか?」
 ウサーマ王に訊いてみる。

 ドーム内の土地にも、制限があるだろうし。
 その辺に勝手に植物を生やしたり、水飲み場を作っちゃったりしたらまずいだろう。

「恵みを与えて下さるのですか? それはありがたき幸せ。それならば、私がご案内申し上げます。どうぞ、こちらのテムサーフワニお乗りください」
 ウサーマ王は笑顔で恭しく礼をして。

 ドーム内を巡る乗り物として紹介されたのは。

 どう見ても、ワニだった。
 絵本とかテレビで見た、そのまんまの、ワニ。

 ……この世界って、乗り物用の生き物、爬虫類縛りでもしてるのかな?


 †††


 わあ、いろんな種類のワニがいるー。

 アリゲーターよりは鼻がスッとして牙が四本ずつ交互に生えてるから、こいつはクロコダイルだな。
 クロコダイルよりごつくて、牙が交互じゃないのがアリゲーター。
 牙が交互に生えてて、口がやたら長いのはガビアルで。一番ちっこいのがカイマンだ。

 ものすごくどうでもいいけど。
 何で俺、こんな役に立たないワニの見分け方なんて覚えてるんだろうな……。


 ワニは10メートルを超える個体もあるので、特別巨大化はしていないのかも。……とはいっても、さすがにあっちの世界でここまででかいワニが現れたら、ニュースになるレベルのサイズだけど。

 ワニは大トカゲほど大きくはなくて。基本、一人乗りみたいだ。
 ドーム内を移動するからかな?

 大トカゲが4WDのジープだとしたら、ワニは細い道でも行ける機動性からして、モトクロスバイクみたいな感じか?

 ツチノコは……何だろう。規格外だからな……。
 巨大なスノーモービルみたいなもんだろうか。滑ってるし。


「ミズキは軽い。二人でも問題なかろう」
 とか言って。

 アーディルは俺を抱えて、比較的大きな個体のワニに乗った。

「重くない? 大丈夫かな?」
 俺がワニに訊くと。

 ワニはちらりとこちらを見て。
 何ともない、とでも言うように身体を起こして。のそのそと動き出した。
 大丈夫なようだ。

「おや、マラーク様をお乗せできて、テムサーフワニもいつになく機嫌が良いようですね?」
 ウサーマ王が笑顔で言った。

 これ、ご機嫌なんだ……?

 ワニの表情はよくわからないけど。
 ここに来るまで一人乗りだったのがよほど不満だったのか。アーディルも、俺を膝に乗せて、わかりやすいほどに上機嫌だった。


 †††


 鞍と、口枷をつけたワニに乗って、サラーサ国内を見て回る。

 ワニの背中は思ったよりも快適だった。
 視点も高すぎないし、スピードも、歩くより少し早いくらいで。安定感もいい。

 建物の見た目は、他の国とは変わらない、土で出来た家だ。
 植物は、ドーム内では太陽が当たらないけど。魔法で日光に模した光を当てているから大丈夫らしい。

 ここの地下水脈を見てみる。

 ……物凄く枯れてるってほどでもないけど、充分でもないようだ。やっぱり、足りてないのはどこも同じみたいだ。

 井戸の水は、かなり深い場所から湧かさないと、火山の熱で熱湯になってしまいそうだ。

 実際、ここにある井戸から汲めるのは、火傷するほどの熱湯なので、今までは冷ましてから使っていたという。


 冷たい水を出してみせたら、みんな感動していた。

 俺が出現させた水は、通常湧く水よりも美味しいらしい。
 日本の湧水をイメージして出してるからかな?

 軟水だから、飲み水としてもお風呂にもピッタリだろう。

 外国の水はだいたい硬水が多いから、毎日風呂や顔洗うのに使ってると肌が荒れるっていうし。ミネラル豊富なのはいいけど、カルシウムが溜まって水道管も詰まりやすいし。毎日飲みすぎると結石にもなりやすいし、善し悪しだ。


 井戸を潤して回って。
 牧場に植物や牧草をいっぱい生やしたら、ウサギも羊も大喜びで、もしゃもしゃ食べている。かわいいなあ。

 そんなに大きくない国なので、全ての井戸を満たすのに、あまり時間は掛からなかった。


 †††


「この国にもお風呂を作ってみたいんですが。いいですか? ここなら地熱を利用すれば日光で温めなくても大丈夫そうだし……」

 親切ぶってるが。
 自分がお風呂に入りたいだけだという、下心満載の提案だった。

「オフロ……?」
「フロとは、ミズキの暮らす天界で愛好されている施設で……」
 首を傾げるウサーマ王に、アーディルが得意満面な顔でお風呂の説明をした。

 はじめは水に浸かるなんて畏れ多い、とか引き気味だった人たちも、アーディルのやたら熱のこもったプレゼンに、興味を持ったようだ。
 すっかりその気にさせている。営業の才能あるよ、アーディル。


「では、こちらの広場にお願いします」
 国民の皆も普通に使用できるように、施設は広場に作って欲しいと言われた。良い王様だな。

 建物自体は、土魔法の得意なサラーサ国の魔法使いが作った。
 後は、俺が細かい指示を出して。

 湯船と洗い場、更衣室も作ってもらった。子供用の浅い湯船も。
 銭湯みたいな感じだ。

「これは、我が国のものとは違うな?」
 アーディルが出来上がった建物を興味深そうに見ている。
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