寺生まれなので異世界に召喚されて悪霊退治やらされてます。

篠崎笙

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国王と謁見しました。

「身に覚えはないし、俺は本当に、”伝説の僧侶ゼンショー”とやらではない。……だが、俺にこの国を救う力があるというのなら、及ばずながら協力したいと思う」
俺の申し出に。

テオ、ワルター、レオナルドの三人は、とても喜んでくれた。


『ありがたい。助かるよ』

礼を言い、俺の手を握ったのはテオだ。
この男、いちいち距離が近い。

『あんたが伝説のゼンショー様ではなくとも、あんたの力は本物だ。よろしく頼む』
と、ワルターは力強い握手を交わした。

『ご助力感謝致します。……あの、ゼンショー殿でないとすれば、どのようにお呼びすればよろしいのでしょうか?』
レオナルドに訊かれて。


「いや、とりあえずしばらくの間は、俺の呼び名はそのままゼンショーでかまわないと思う。伝説の僧侶が加勢に来た、と言えば味方の士気も上がるだろうと思うんだが……」

伝説の僧侶を詐称するのは心苦しいが。
兵士達のあの喜びようを見る限り、その方が良いだろう。


皆もそれに賛成し。
とりあえず、しばらくはゴーストを蹴散らす力のある俺が、僧侶ゼンショーの役をつとめることで決まった。


◆◇◆


「ただ、出来れば、回復方法は……避けたい」
身体の回復は出来ても、別の意味でダメージが大きすぎる。

『えー、』
えーじゃない、テオ。

テオはあの回復方法でも問題ないようだが。
そんなに異世界人に魔力を与えるのが当たり前な世界なのだろうか?

それとも、”伝説の僧侶”の回復役をしたいのだろうか。
名誉職のようなものなのかもしれない。


この国のことを聞いてみると。

慈悲の女神エリノア、歓喜の女神レティシア、繫栄の女神ルクレティア、希望の女神ネイディーン。
この世界には四人の女神がいて、それぞれの名を冠している国を守護している。

しかし女神は自分たち以外に女の存在を認めず、この地上からヒトの女を残らず消し去ったという。

……どの辺りが慈悲の女神なのだろうか。
俺には理解できない。

しかし、女を消した代わりに、愛し合う二人には、女神が子を授けてくれるという。
授かるのは、子種を多く与えられた者で、出産時に痛みはないそうだ。

騎士団や戦士たちにも数組、子持ちのカップルがいるとか。男同士で。

とんでもない異世界である。
早く悪霊退治を終わらせて可及的速やかに元の世界に帰りたい。


『だから、あまり何度も身体を重ねていると、俺たちも子を授かってしまうかもしれないな』
テオは笑顔で怖ろしい冗談を言った。

笑えない。怖すぎる。


「愛はないから、大丈夫だろう」
『つれない……』
テオはがっくりと地に伏せた。


要は、あの力を使っても、倒れないようにすれば良いのである。

故に。
力のコントロールのため、特訓をする。


女神が愛し合う二人だと勘違いするほど身体を重ねないためにも、力をコントロールしなくてはならない。


◆◇◆


しかし。
特訓をする前に。

ひとまず、この国の国王を紹介されることになった。面倒だが、救世主のような存在なのだ。それも役目と諦めよう。


『フレッド!』
レオナルドは国王に気安く手を振った。

国王を仇名で呼ぶとは。
この騎士、国王とは幼馴染みらしい。


エリノア国王の名は、フレデリックといった。
ゆるいウエーブの肩先まであるトウモロコシの穂先のような色の髪に、深緑の目。

顔立ちは、この中では地味というか比較的凡庸に見えるが。まあ整っている方だろう。

襟の高い、金糸で細かな装飾のされた白い服に、毛皮のついた臙脂色のマントを羽織っている。
国王とはいうが、威圧感はなく、見た目は穏やかな青年だ。

今年、戴冠したばかりだという。道理で若いはずだ。

そういえば、騎士隊長であるレオナルドも、勇者もやたら年齢が若い気がするが。
何かあったのだろうか?


国王は、テオとも幼馴染みで。
一番年上のワルターは、レオナルドとテオと同じ道場で、皆の剣術指南役をしていたそうだ。

『そちらが、伝説の……?』
国王は頬を染めて前のめりだ。椅子から落ちそうになっている。

伝説の僧侶ゼンショーは、国民的大スターなのである。
国王も興奮するくらい、人気なのか。


「俺の名前は高槻善正。ゼンショーと呼ばれております」

嘘は言ってない。
そういう仇名なのは本当である。

自分から”伝説の僧侶”とは名乗っていないので、セーフだろう。


◆◇◆


皆にならって、膝をついて挨拶をしようとしたら。
国王が慌てて飛んできた。

手を取られ、逆に跪かれてしまう。
『ゼンショー様に、そのようなこと、おそれおおい!』


おい国王。
いいのかそれで。

困惑して周りを見たが、皆頷いている。
それでいいようだ。

国王よりも立場が上なのか。すごいな伝説の僧侶。


『……ゼンショー様がいらしたと?』

兵たちに付き添われ、ふらふらと現れたのは、例の神官らしい。
真っ白い、裾の長い神官服を着ている。

ああ、一人で頑張って悪霊と戦った挙句、過労で倒れたという、あの。


金色の髪に、青い目をしていたが。
神官のクラークの顔は、卓也によく似ていた。

『伝説の僧侶殿にわざわざお越しいただき、我が国の困難に対しお力添えをしてくださるとのこと。とても心強く、ありがたく思います』


涙ながらに俺の手を握ったクラークの手は、とても小さいものだった。
こんな小さい身体で、今までたった一人で頑張っていたのか。

……守らなくては。

庇護欲というのか、やる気が増してきたようだ。
思わず、その手を握り返した。

「あなたは結界の維持に専念していてください。……悪霊は、俺がすべて祓います」


態度が違いすぎる! と外野が何か言っているが。
聞かなかったことにする。
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