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大魔界、獄界と戦いました。
いよいよ、大魔界からの攻撃が始まった。
大魔界の大魔王は、様子見などをせず。
一気に悪霊軍団総数一万を送りこみ、この世界最強であるエリノア騎士団を狙い、殲滅を謀った。
だが、物理攻撃でなく霊体であれば、俺の敵ではない。
一瞬で一万の軍団を成仏させていただいた。
すると、大魔王であるベープ本人が直接こちらに乗り込んで攻撃して来たのだった。
「げっ、気持ち悪い」
大魔王ベープもその側近マキラーフも、大きなハエの姿をしていたのだ。
思わず反射的に虫除けスプレーを噴射したところ、呆気なく死んだ。
どうやら化学物質に耐性が無かったようだ。
ハエ等、ほとんどの昆虫はアルコールを気門に吹きかければ一発で死ぬものである。
アルコール入りなら、消臭剤でも死ぬ。
界面活性剤などで気門を塞ぐのも有効だ。Gのつくアレでも死ぬ。
ただ、死骸の始末が面倒なのが難である。
気持ち悪いし、触りたくない。
うちの裏山にいるカブトムシやクワガタすら気持ち悪くて触るのも嫌だというのに。
ならばここは私に任せて欲しい、と意気揚々と名乗り出たレオナルドの火の魔法によって、大魔王とその側近は火葬に付された。
もちろん、成仏を願い、経はあげさせてもらった。
門前の小僧である。
かくして、謎の毒ガス攻撃により大魔王と近衛軍団を失った大魔界は、人間界への侵略を諦めたのだった。
◆◇◆
獄界の住民は、ほぼゴーストばかりだった。
獄界の王も霊体だったので、皆、可及的速やかに成仏していただいた。
獄界の王は、その名を名乗る暇もなく天へ昇った。
せめてその名前くらいは聞いてやっても良かっただろうか?
まあいい、来世では幸せに暮らしてほしい。
さすがにゴーストばかりだった獄界との戦いでは、何度もチャージさせることになり、ウルには大変世話になった。
ウルは魔界に魔力をチャージしに、二回ほど里帰りしたくらいである。
そして後は地獄界を残すのみ、となった。
『あまりにうまく行き過ぎて、怖いくらいですね……』
もしゃもしゃと茹でた野菜を食みながら、レオナルドが言った。
それは俺もそう思う。
これが噂のチート能力、というやつだろうか。
卓也の書いたラノベの主人公でもないのに。……そのモデルではあるのだが。
『ああ。だが、油断は禁物だ』
ワルターが頷きながら骨のついた肉にかぶりついている。ワイルドだな。
もはや神官の張る結界には意味はないので、城に詰めていた国民はとりあえず元の生活に戻り、農作業や酪農を再開し。
自分たちが出来ることに専念しはじめたようだ。
来るべき女神の完全休眠に備え、今のうちに子作りもしなければならない。
魔族の攻撃によって焼けてしまったところも少なくない。
完全復帰はまだだろうが、おすそ分けに持って来てくれた作物などをありがたくいただいている。
野飼いの鶏卵は美味かった。卵は貴重なものだ。
村人達は、俺におすそ分けを渡しながら、激励の言葉を掛けていってくれた。
皆、俺に期待をしているのだ。
この人ならば、この世界を護ってくれるだろう、と。
俺は、世界中の人間が希望を託す、”伝説の僧侶ゼンショー”なのだから。
『俺たちは、ただ、出来ることをするだけだ』
テオは変わらず、剣の素振りをしたり、防具の手入れをしている。
そう。
今までは運が良かっただけで、相性というものがある。
俺が退治できるのは、霊体。ゴーストのみである。
少々剣を振ったことのある、ただの人間であり。身体能力は、エリノアの一般兵士よりも劣るだろう。
彼らは体格にも恵まれ、若いころから訓練を積んできた者なのだから。
次は、俺にはどうにもならない相手、という可能性もあるのだ。
◆◇◆
『伝令! 空に、大きな穴が開いております!』
伝令の兵の言葉に空を見上げると。
大空に、巨大な真っ黒い穴が広がっていくのが見えた。
穴からは、瘴気だろうか。
嫌な感じのする黒い靄が、じわじわと溢れてきている。
『まずいぞ……あれが地に満ちれば、生物は生きていられない……』
ウルが言った。
草木は枯れ、鳥など、弱いものから順に死んでいくと。
『あの穴から地獄界の王が顔を出す前に、叩き潰す』
テオは、天空の穴から地獄界へ入り、直接攻め込むつもりのようだ。
高濃度の瘴気の中である上に、相手のホームグラウンドである。
危険ではないか、と皆は止めようとしたが。
不利なのは覚悟の上。
だが、地獄界生まれの自分なら、あの瘴気にやられることもないだろう、という。
テオはもう、自分の出生を受け入れている。
「勿論、俺も行く。……ウルは?」
見ると、ウルがこくりと頷いた。
置いていかれてはたまるか、とばかりにしっぽを巻きつけてくる。
俺もウルも、瘴気には耐性があるようだ。
俺は、天界からのご加護だろうか? 有難いことである。
『……なるべく側から、離れないで欲しい。必ず護ってみせる』
「こっちのセリフだ」
テオの手を取って。
浮遊術か、身体が浮き上がった。
◆◇◆
『ゼンショー殿、ウル殿、テオ! ご武運を!』
レオナルドが叫ぶ。
『必ず無事で、帰って来い!』
ワルターも。
『戻ったら、今度こそ、ゼンショー様の歓迎パーティーですからね!』
国王。
神官。
騎士団の人たち。戦士たち。
皆が、手を振っている。
期待を込めて。
皆のために。
俺も出来ることをしよう、と思った。
大魔界の大魔王は、様子見などをせず。
一気に悪霊軍団総数一万を送りこみ、この世界最強であるエリノア騎士団を狙い、殲滅を謀った。
だが、物理攻撃でなく霊体であれば、俺の敵ではない。
一瞬で一万の軍団を成仏させていただいた。
すると、大魔王であるベープ本人が直接こちらに乗り込んで攻撃して来たのだった。
「げっ、気持ち悪い」
大魔王ベープもその側近マキラーフも、大きなハエの姿をしていたのだ。
思わず反射的に虫除けスプレーを噴射したところ、呆気なく死んだ。
どうやら化学物質に耐性が無かったようだ。
ハエ等、ほとんどの昆虫はアルコールを気門に吹きかければ一発で死ぬものである。
アルコール入りなら、消臭剤でも死ぬ。
界面活性剤などで気門を塞ぐのも有効だ。Gのつくアレでも死ぬ。
ただ、死骸の始末が面倒なのが難である。
気持ち悪いし、触りたくない。
うちの裏山にいるカブトムシやクワガタすら気持ち悪くて触るのも嫌だというのに。
ならばここは私に任せて欲しい、と意気揚々と名乗り出たレオナルドの火の魔法によって、大魔王とその側近は火葬に付された。
もちろん、成仏を願い、経はあげさせてもらった。
門前の小僧である。
かくして、謎の毒ガス攻撃により大魔王と近衛軍団を失った大魔界は、人間界への侵略を諦めたのだった。
◆◇◆
獄界の住民は、ほぼゴーストばかりだった。
獄界の王も霊体だったので、皆、可及的速やかに成仏していただいた。
獄界の王は、その名を名乗る暇もなく天へ昇った。
せめてその名前くらいは聞いてやっても良かっただろうか?
まあいい、来世では幸せに暮らしてほしい。
さすがにゴーストばかりだった獄界との戦いでは、何度もチャージさせることになり、ウルには大変世話になった。
ウルは魔界に魔力をチャージしに、二回ほど里帰りしたくらいである。
そして後は地獄界を残すのみ、となった。
『あまりにうまく行き過ぎて、怖いくらいですね……』
もしゃもしゃと茹でた野菜を食みながら、レオナルドが言った。
それは俺もそう思う。
これが噂のチート能力、というやつだろうか。
卓也の書いたラノベの主人公でもないのに。……そのモデルではあるのだが。
『ああ。だが、油断は禁物だ』
ワルターが頷きながら骨のついた肉にかぶりついている。ワイルドだな。
もはや神官の張る結界には意味はないので、城に詰めていた国民はとりあえず元の生活に戻り、農作業や酪農を再開し。
自分たちが出来ることに専念しはじめたようだ。
来るべき女神の完全休眠に備え、今のうちに子作りもしなければならない。
魔族の攻撃によって焼けてしまったところも少なくない。
完全復帰はまだだろうが、おすそ分けに持って来てくれた作物などをありがたくいただいている。
野飼いの鶏卵は美味かった。卵は貴重なものだ。
村人達は、俺におすそ分けを渡しながら、激励の言葉を掛けていってくれた。
皆、俺に期待をしているのだ。
この人ならば、この世界を護ってくれるだろう、と。
俺は、世界中の人間が希望を託す、”伝説の僧侶ゼンショー”なのだから。
『俺たちは、ただ、出来ることをするだけだ』
テオは変わらず、剣の素振りをしたり、防具の手入れをしている。
そう。
今までは運が良かっただけで、相性というものがある。
俺が退治できるのは、霊体。ゴーストのみである。
少々剣を振ったことのある、ただの人間であり。身体能力は、エリノアの一般兵士よりも劣るだろう。
彼らは体格にも恵まれ、若いころから訓練を積んできた者なのだから。
次は、俺にはどうにもならない相手、という可能性もあるのだ。
◆◇◆
『伝令! 空に、大きな穴が開いております!』
伝令の兵の言葉に空を見上げると。
大空に、巨大な真っ黒い穴が広がっていくのが見えた。
穴からは、瘴気だろうか。
嫌な感じのする黒い靄が、じわじわと溢れてきている。
『まずいぞ……あれが地に満ちれば、生物は生きていられない……』
ウルが言った。
草木は枯れ、鳥など、弱いものから順に死んでいくと。
『あの穴から地獄界の王が顔を出す前に、叩き潰す』
テオは、天空の穴から地獄界へ入り、直接攻め込むつもりのようだ。
高濃度の瘴気の中である上に、相手のホームグラウンドである。
危険ではないか、と皆は止めようとしたが。
不利なのは覚悟の上。
だが、地獄界生まれの自分なら、あの瘴気にやられることもないだろう、という。
テオはもう、自分の出生を受け入れている。
「勿論、俺も行く。……ウルは?」
見ると、ウルがこくりと頷いた。
置いていかれてはたまるか、とばかりにしっぽを巻きつけてくる。
俺もウルも、瘴気には耐性があるようだ。
俺は、天界からのご加護だろうか? 有難いことである。
『……なるべく側から、離れないで欲しい。必ず護ってみせる』
「こっちのセリフだ」
テオの手を取って。
浮遊術か、身体が浮き上がった。
◆◇◆
『ゼンショー殿、ウル殿、テオ! ご武運を!』
レオナルドが叫ぶ。
『必ず無事で、帰って来い!』
ワルターも。
『戻ったら、今度こそ、ゼンショー様の歓迎パーティーですからね!』
国王。
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期待を込めて。
皆のために。
俺も出来ることをしよう、と思った。
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