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南の国の王
会議開始
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ジュセルも鎧を脱いで部屋着に着替えてくるというので、俺もその間に着替えてしまうことにする。
神使を迎えるにあたって、王様はきちんと正装して出迎えないといけない決まりがあるんだそうだ。
そうか、やっぱりそういう決まりだったんだ。
暑い中、わざわざ正装させてしまったのか。
それは申し訳ない……。
渡された服を見てみる。
一見、ワンピースみたいだけど。ゲームとかで見る、チュニックみたいな感じかな?
黒い布を張り合わせたような貫頭衣みたいなのを頭から被って、紐で腰のとこを軽く縛る。
靴はひざ丈で、布製っぽい。底は革かな?
裾は、ちょっと短い気がする。短パンか何か履きたいとこだけど。
涼しいし、アレクからもらった着替えの下着は黒いトランクスみたいで下着には見えないだろうし、見えても別にいいか……。
†††
ちょうど着替え終わったタイミングで、声を掛けられた。
「待たせたな」
見れば、ジュセルは黒い、浴衣みたいな服だった。
がっしりした立派な胸板に、腰幅があるから、着物姿も決まってる。
俺もそっちが良かったな……。
いや、同じ格好で並んだら余計に体格差が目立っちゃいそうだ。やめておこう。
貧弱なのがバレる。って見りゃわかるか。
「おお、似合ってるな。かわいいぞ」
頭をわしわし撫でられた。
完全に子供扱いである。
まあ実際、ジュセルに比べれば子供なんだろうけど。
「……ええと、それで。これが東と、西の国からの親書です」
東と西の国からの親書を差し出して。
四国間の物流交換と、停戦の提案をした。
「……ううむ、さすがにそれは、我だけでは決めかねる問題だ。……軍師を呼んでも良いか?」
ジュセルは首を傾げた。
「どうぞ。むしろこの国の色々な人たちと、じっくり話し合いをしたいです」
†††
赤茶の髪に薄い紫色の目をした、軍師のヨハンも呼ばれて。
本格的な会議になる。
ヨハンはジュセルの片腕だという。
頭には、小さな角。
背は、ジュセルの次くらいに高いらしい。
聞いた話では、ここは好戦的な国だというし。一筋縄ではいかないかもしれない。
東の国とも、俺がこの世界に来るちょっと前まで戦争をしてたって言ってた。
他の国と仲良くするよりも争うほうが好きだとか言われてしまったら。
困る。すごく困る。
四つの国の、それぞれの特産品を輸出・輸入して争いもなくwin-win作戦。
それが、お互い得で。
損をすると感じさせなければ、勝ちだ。
うまくいきますように。
†††
南の国でも、海に行けば魚は獲れるんだけど。
やはりこのとんでもない暑さで、すぐにだめになってしまうという。
その場で〆てすぐに食べないと腐ってしまって、とても食べられたものではないらしい。
自宅で刺身なんて、夢のまた夢。
残念ながら、食品を冷凍したり、保存する魔法はないようだ。
北の国からの協力を得られれば、保存についての問題解決策もあるだろうけど。
とりあえず今は、西の国から預かった保存食のサンプルを渡して、ご機嫌伺いだ。
試食会と聞きつけたのか、わらわらと人が集まって来た。
「ふむ、これは面白い」
あたたかい、というか熱い南の海では見たことが無い、珍しい魚も色々あったようだ。
「ほう、こんな調理法があったのか」
「これはうまいっすねー」
「うむ、これなら暑くても大丈夫そうだな」
「うまっ! このタレ、売ってくれないかなー」
ジュセルもヨハンも、西の海産物には興味津々だった。
赤いウニみたいなお菓子は、予想通り、こっちでも好評だった。
需要が高くなれば、養殖とかもする必要があるかな?
まあその辺のことは、後で要相談だろうけど。
「この奇妙な形をした魚は何です?」
ヨハンはタラバガニの素揚げを手にしてる。
「タラバガニ? 魚じゃなくて、深海に棲むカニです。西の国の人は、深海でも素潜りで獲って来れるそうです」
「何と。西の国民は、深海まで潜れるというのか!?」
「うーん、ウチは熱湯風呂に耐えられるくらいっすかね?」
「いや、我慢大会じゃないんだから……」
ジュセルとヨハンが真顔で話してるのに、思わず突っ込んだ。
身体の構造自体違うんだから、対抗心とか燃やさなくてもいいのに。
†††
「神使様、西の国民には魚みたいなエラがあるって聞いたけど。本当なんですかい?」
兵士に聞かれる。
「はい、手にひらには薄い水かきがあって、首にはエラがありましたよ。肺呼吸もエラ呼吸も可能だとか」
「へえ~、本当にあるんだ。見てみたいなあ」
ヨハンは羨ましそうに言った。
「エラは、相当仲良くならないと見せてもらえないものだそうです」
「見せてもらったんすか? さすが神使。いいなあ」
「おれも仲良くなれば見せてもらえるかなあ」
強面の兵士が呟いた。
「お前みたいな荒くれ者は駄目だろ。ひと目で逃げられちまう」
「ええっ、神使様、おれの顔、そんな怖いですか?」
「あはは、ジュセルよりは怖くないかな?」
「そりゃそうだ」
「神使様、東は植物でいっぱいって本当ですか?」
「大きな森もあって、一面が草原になってるとこもありましたよ」
みんな、今までよく知られてなかったという他の国の文化の違いの話にも、興味津々だった。
といってもまだ俺は、東と西くらいしか知らないんだけどね。
南の国の文化については、これから知っていきたい。
神使を迎えるにあたって、王様はきちんと正装して出迎えないといけない決まりがあるんだそうだ。
そうか、やっぱりそういう決まりだったんだ。
暑い中、わざわざ正装させてしまったのか。
それは申し訳ない……。
渡された服を見てみる。
一見、ワンピースみたいだけど。ゲームとかで見る、チュニックみたいな感じかな?
黒い布を張り合わせたような貫頭衣みたいなのを頭から被って、紐で腰のとこを軽く縛る。
靴はひざ丈で、布製っぽい。底は革かな?
裾は、ちょっと短い気がする。短パンか何か履きたいとこだけど。
涼しいし、アレクからもらった着替えの下着は黒いトランクスみたいで下着には見えないだろうし、見えても別にいいか……。
†††
ちょうど着替え終わったタイミングで、声を掛けられた。
「待たせたな」
見れば、ジュセルは黒い、浴衣みたいな服だった。
がっしりした立派な胸板に、腰幅があるから、着物姿も決まってる。
俺もそっちが良かったな……。
いや、同じ格好で並んだら余計に体格差が目立っちゃいそうだ。やめておこう。
貧弱なのがバレる。って見りゃわかるか。
「おお、似合ってるな。かわいいぞ」
頭をわしわし撫でられた。
完全に子供扱いである。
まあ実際、ジュセルに比べれば子供なんだろうけど。
「……ええと、それで。これが東と、西の国からの親書です」
東と西の国からの親書を差し出して。
四国間の物流交換と、停戦の提案をした。
「……ううむ、さすがにそれは、我だけでは決めかねる問題だ。……軍師を呼んでも良いか?」
ジュセルは首を傾げた。
「どうぞ。むしろこの国の色々な人たちと、じっくり話し合いをしたいです」
†††
赤茶の髪に薄い紫色の目をした、軍師のヨハンも呼ばれて。
本格的な会議になる。
ヨハンはジュセルの片腕だという。
頭には、小さな角。
背は、ジュセルの次くらいに高いらしい。
聞いた話では、ここは好戦的な国だというし。一筋縄ではいかないかもしれない。
東の国とも、俺がこの世界に来るちょっと前まで戦争をしてたって言ってた。
他の国と仲良くするよりも争うほうが好きだとか言われてしまったら。
困る。すごく困る。
四つの国の、それぞれの特産品を輸出・輸入して争いもなくwin-win作戦。
それが、お互い得で。
損をすると感じさせなければ、勝ちだ。
うまくいきますように。
†††
南の国でも、海に行けば魚は獲れるんだけど。
やはりこのとんでもない暑さで、すぐにだめになってしまうという。
その場で〆てすぐに食べないと腐ってしまって、とても食べられたものではないらしい。
自宅で刺身なんて、夢のまた夢。
残念ながら、食品を冷凍したり、保存する魔法はないようだ。
北の国からの協力を得られれば、保存についての問題解決策もあるだろうけど。
とりあえず今は、西の国から預かった保存食のサンプルを渡して、ご機嫌伺いだ。
試食会と聞きつけたのか、わらわらと人が集まって来た。
「ふむ、これは面白い」
あたたかい、というか熱い南の海では見たことが無い、珍しい魚も色々あったようだ。
「ほう、こんな調理法があったのか」
「これはうまいっすねー」
「うむ、これなら暑くても大丈夫そうだな」
「うまっ! このタレ、売ってくれないかなー」
ジュセルもヨハンも、西の海産物には興味津々だった。
赤いウニみたいなお菓子は、予想通り、こっちでも好評だった。
需要が高くなれば、養殖とかもする必要があるかな?
まあその辺のことは、後で要相談だろうけど。
「この奇妙な形をした魚は何です?」
ヨハンはタラバガニの素揚げを手にしてる。
「タラバガニ? 魚じゃなくて、深海に棲むカニです。西の国の人は、深海でも素潜りで獲って来れるそうです」
「何と。西の国民は、深海まで潜れるというのか!?」
「うーん、ウチは熱湯風呂に耐えられるくらいっすかね?」
「いや、我慢大会じゃないんだから……」
ジュセルとヨハンが真顔で話してるのに、思わず突っ込んだ。
身体の構造自体違うんだから、対抗心とか燃やさなくてもいいのに。
†††
「神使様、西の国民には魚みたいなエラがあるって聞いたけど。本当なんですかい?」
兵士に聞かれる。
「はい、手にひらには薄い水かきがあって、首にはエラがありましたよ。肺呼吸もエラ呼吸も可能だとか」
「へえ~、本当にあるんだ。見てみたいなあ」
ヨハンは羨ましそうに言った。
「エラは、相当仲良くならないと見せてもらえないものだそうです」
「見せてもらったんすか? さすが神使。いいなあ」
「おれも仲良くなれば見せてもらえるかなあ」
強面の兵士が呟いた。
「お前みたいな荒くれ者は駄目だろ。ひと目で逃げられちまう」
「ええっ、神使様、おれの顔、そんな怖いですか?」
「あはは、ジュセルよりは怖くないかな?」
「そりゃそうだ」
「神使様、東は植物でいっぱいって本当ですか?」
「大きな森もあって、一面が草原になってるとこもありましたよ」
みんな、今までよく知られてなかったという他の国の文化の違いの話にも、興味津々だった。
といってもまだ俺は、東と西くらいしか知らないんだけどね。
南の国の文化については、これから知っていきたい。
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