自分が作ったゲームに似た異世界に行ったらお姫様の身代わりで野獣侯爵と偽装結婚させられました。

篠崎笙

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藍川透の回想

物語はハッピーエンドでなくちゃ。

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「悪さをした魔女に魔法を掛けたいんだけど。いいかな?」
俺と、テオドゥルフ侯爵を指で示す。


「ああ。……なるほど。確かに相応しい罰だ」
「可愛い顔してなかなかえげつないことを考える子だね……」
侯爵は納得したように頷いたけど、魔女グレアには呆れた顔をされた。

えげつないかな?
どんな姿になろうと、それは自業自得だと思うけど。

ザクスベルト皇帝も近くにいて。
「うん、いいんじゃない?」と軽く許可が下りた。いい笑顔で。


じゃあ、悪い魔女に見合った、彼女に相応しい罰を執行させていただこうか。
天に代わってお仕置き? いや、お前の罪を数えろ、だ。

「ルイーザを押さえてる人たち、危ないから離れて!」
衛兵が四方に飛びのいた直後。

「……Speciesスペキエース veroウェーロー redireレディーレ

魔女ルイーザに、”真実の姿”になる魔法を掛けた。
名前までは必要ない。

だって、俺の方が強いからな。


*****


さあ、彼女の”真実の姿”はどんなものか、見せてもらおうか。
侯爵を、一方的に嘲笑えるような姿かな?


ドレスが破れ、その背中から、真っ黒な毛がむくむくと出てくる。
羊のような角が生えて、手は鋭いかぎ爪。乱杭歯。血のように真っ赤な目。

……うわあ。
すごいなこれ。確かに、怖い魔法だ。


見ていた人から、悲鳴が上がった。
それほど邪悪で。凄まじく、醜い姿だった。

魔女ルイーザであったものは、自分の姿を窓に映して。

 咆哮ほうこうのような悲鳴を上げた。
声帯すらも、醜い”獣”になったのだ。


「ふふ、こわい魔法だねえ。ある意味、絞首刑より、あの姿で生きていくほうが彼女にはつらいかもね? ……ceraケーラcantamenカンターメン

皇帝は、爽やかな笑顔を浮かべたまま、呪文封じの魔法を唱えた。
これでもう、彼女に魔法は使えない。

皇帝も、魔法使えるんだ? まあ当然か。 


「さあ、放免だ。好きな場所に行くがいい」
皇帝がパチンと指を鳴らして開いた扉を示すと。

獣は、咆哮を上げながら、教会を飛び出した。


魔法を使えなくなった魔女が、あの姿になって。
暮らしていけるのかは知らない。

でも、テオドゥルフ侯爵は獣の姿になったせいで国王になれず、恐れられ、孤独に暮らしていたんだ。
もう一度かけられた時だって、自分から望んで獣の姿に戻った。
充分、やった行いの報いは受けたと思う。

その上で得た幸せを妬むのは、間違っていると思う。


心の底から反省したら、侯爵みたいに元の姿に戻れるかもしれないけど。
それがいつになるかはわからない。

人の心を捨てなければ、きっと、戻れると思うよ。


*****


「元の世界で、飯田先輩と逢ったよ」

魂を飛ばされた先は元の世界で。
初めは夢かと思ったけど。テオドゥルフ侯爵のことを思い出して。

そこから魔法を使ってこっちへ戻って来たことを話した。


前のときはしなかった、馬車でガラガラいわせながら走るやつをやった。
古靴とか空き缶を馬車の後ろにつけるのだ。

騒々しい音を立てて、悪霊が近づかないようにするって理由らしいけど。
うるさいな……。

「……襲われなかっただろうね?」
何で俺が倒れた時より心配そうな顔してんの? っていうか。


「え、ティディ、飯田先輩の気持ち、気付いてたの?」
「あからさまだったろうが。しかし、相当我慢強い男だったのだな。私は我慢できない」

そうだね。純愛だ。
多分、死なないで、好きだって告白されてたら、受け入れちゃってたかも。


そういえば、侯爵の時も全然下心に気付かないでヤられちゃったんだよな。
自分から素っ裸になっちゃってさ。

あれ? 俺、ちょろすぎじゃない?


「幽霊でもいいから側にいて欲しいって言われたけど。戻ってきちゃった。……嬉しい?」
侯爵に寄りかかって、顔を見上げる。

うん、しっぽでわかるから、返事はいいよ。

「……小悪魔め」

侯爵が苦笑しながら俺の頬にキスをしたので。
俺もお返しに、反対側の頬にキスする。

悪魔じゃなくて、魔女です。
男だけどな。


*****


「伝説の勇者に、また武勇伝が加わってしまったよ。私も頑張って武功を上げねば」
侯爵で剣神が何か言ってる。

禁呪である、魂を吹っ飛ばす魔法を喰らって生還した人間は、今まで誰一人いなかったそうだ。しかも自力で。
なので、魔女の協会とかでは今頃大騒ぎになっているだろうという話だ。


ゲームデータを保持してくれてた先輩たち。
この世界でも、”縁”を繋いでくれたみんながいたから。また、この世界に戻ってこれたんだと思う。

相当運が良かったんだな、俺。


「戻ってこれたのは、愛の力だと思うよ?」

指輪を見て、全部思い出したんだし。
これも、立派な”縁”だ。


ここで生きた証が、”縁”になる。

だから、この世界でもっともっと”縁”を作るんだ。
できるだけ長く、愛する人と居たいから。


「俺もいっぱい愛すから、ティディもいっぱい愛してね?」
「もちろんだ」

さらに繋がりを強くするため。
まずは一回、と。

熱いキスを交わしたのだった。




おわり
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