神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、手料理を振舞う

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「うわあ、」
 風呂場を覗いていたオズワルドが、シャワーのレバーを弄って頭から水を浴びていた。

 うーん、期待を裏切らない反応だ。

 でもオズワルドは風魔法を持ってるので、自力で服を乾かしてしまった。残念ながら乾燥機付きドラム式洗濯機の出番は来なかった。
 まあいいか。この後、いくらでも活躍の場はあるはず。

 やはり風呂の無い世界では、浴槽の用途はわからなかったようだ。
 ”浄化”という便利な魔法があるからな……。


「これは、厨房ですか?」
「そう。こことそこは、後で説明するよ」

 キッチンとテラスを指差した。


 リビングルームに置いたソファーのスプリングに、最初に目を付けたのはオーソンだった。この座り心地の謎は⁉ とかなり食いつき気味に訊かれたので、構造を説明する。
 前に、スプリングが飛び出て壊れたソファーを修理したことがあるので、中の構造を知っていたのだ。
 職場では数少ない男手だったので、椅子の布張り替えや踏み台を作ったり、色々経験したものだ。役立ってよかった。

 リビングルームには床の間を作って、丸い障子をつけてみた。畳が恋しくなることもあるだろう。四畳くらいの小上がりだ。
 リズリーは温暖湿潤気候らしいので雪は降らないかもしれないが、雪見障子も。そこから庭を眺めても良いし。

 それを、ウィリアムとオズワルドが珍しそうに見ていた。
 指でつついたりしちゃだめだぞ? って子供じゃあるまいし、しないか。

「紙の戸とは、豪勢な……、」
「雪見障子……」

 ……え?


 *****


 色々と、気になることはあったけど。
 何と言って切り出せばいいのかわからない。まあいいか。何かあったら、向こうから言うだろうし。


 二階も見せた。
 まだ本のない本棚と机だけある書斎をプレストンからお仕置き部屋と勘違いされて、バートルアンの闇を垣間見たり。
 プレストンが俺の部屋のベッドを気に入って、寝っ転がったまま帰りたくないとか言い出して、ウィリアムが襟首掴んで寝室から連れ出したりした。


 オズワルドが二階のトイレを覗いて、まだ工事中なのかと訊かれた。
「穴が開いてないけど、どこに落とすんです?」

 この世界のトイレは、いわゆるボットンだ。
 なので、このトイレの説明をしたら、その構造に驚いた後、贅沢だと言われた。やっぱり水の乏しい地域で水洗トイレは贅沢だったか。

 でも、もう水不足も解消するからいいよね! と開き直ることにする。
 ちなみに、汚水は熱処理して肥料に使う予定である。


 秘密の屋根裏部屋の存在には、誰も気づかなかったようだ。
 秘密だからいいけど。

メイド部屋ホーンメーバァンはないのか……。外の建物がそうかな?」
 ウィリアムが首を傾げた。

 普通、このレベルの屋敷なら必ずメイド部屋があるものだって言われた。
 そんなのないよ! 雇う予定もないし。っていうか、使用人とか思い浮かべもしなかったよ!
 まったく、リアル王子様め。


「いよいよ厨房だな」
 後回しにしたキッチンはどんなものかと、期待が高まっているようだ。


 *****


 キッチンへ行って。グリルは何だかわかったようだけど、コンロはわからなかったみたいだ。……ガスが出るから、つまみは弄らないように。

 お玉やフライ返しが下がってるのを不思議そうに見てる。
 緑や赤、黄色とカラフルな瓶詰でインテリアのように見えるだろうが、それは調味料だ。


「今からごはんつくるから。食べてってくれる?」

 テラスのテーブルを指差した。
 キッチンのテーブルでも、このくらいの少人数なら座れるけど。開放感のある庭を見ながら食事するのもいいだろう。

「喜んで!」
 いの一番に反応したのはプレストンだった。

「料理、得意なんですか?」
 自分で作るための厨房だと思わなかったようで、オズワルドに驚いたように訊かれる。

 得意というか。前職だからな。キャリアは15年くらいか。子供たちからの評判は良かった。残さず食べて、おかわりをもらいに来る子もいたなあ。
 言えないけど。

「作って、食べて。喜んでくれたら嬉しい」


「何か私に出来ることがあれば手伝うが?」
 ウィリアムが腕まくりをしながら寄って来た。またそんな、いい筋肉見せびらかしてくれちゃって……。羨ましくなんかないんだからな! いえ、たいへん羨ましいです。

「じゃあ、お皿運ぶのだけ手伝って」
「……了解ラップ サープ

 肩を落とす姿は、何だか可哀想な気もするが。別に王子様だから戦力外だと思った訳ではない。腕に自信あり、みたいな顔をしていたから、料理も得意なのだろう。器用そうだし。

 しかし調理場は、俺の戦場である。
 同じ食材、分量でも。火を入れて、作る人間の技量は関係すると思う。切り口ひとつでも変わるのだ。


 *****


 クリームシチューを作るため、ベシャメルソースを作ってたら。
 匂いにつられてか、欠食児童……じゃなかった餓えた男どもがゾンビのように寄ってきていた。そんなに腹が減っているのか……。しょうがないな。


 邪魔なので、白ワインとガーリックトーストを与えておく。白ワインはイタリア産の口当たりが軽いのをイメージして出した。
 ガーリックトーストは、オリーブオイルで刻んだニンニクを炒め、バターを溶かし。鷹の爪とアンチョビを隠し味に加えて、斜めに切ったバゲットにオイルをたっぷり塗る。仕上げに刻んだパセリをふりかけて完成だ。


 何かテラスの方から神に祈る声が聞こえるけど、放っておこう。
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