神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、餓えた狼に襲われる

 城の厨房も大改装したようだ。
 コンロや冷蔵庫、水道周りはうちのキッチンを参考にしたそうで。かなり使いやすくなったと料理人たちから好評をいただいた。それは何より。

 料理長は、何か作りたい時はどうぞご自由に使ってください、大歓迎です、と言ってくれた。


 でも、作るのも好きだけど。
 誰かが作ってくれた料理を食べるのも好きなんだよな。

 俺の知っているレシピのほとんどは伝授したし。なるべく、ここで働いてる人の仕事を取りたくないという気持ちもある。

 たまに、おやつを作って振舞うくらいならいいかな?


 *****


 ウィリアムの部屋の前で、オーソンとオズワルドは頭を下げた。
「以降の本日の予定は空けておきました。ごゆっくり」

「ご苦労」
 ウィリアムは鷹揚に頷いた。


 ドアを開けて、中に入ると。
 真っ先に目に入ったのは、正面に見える窓だった。

「あぅ、ガラス窓になってる!」

 前に、魔物の襲撃とかあった時は鎧戸にしていたって聞いた。俺がここに来た時も、まだ鎧戸だったっけ。
 ガラスは割れると危険だし、貴重なのでしばらく窓には使ってなかったけど。ここ数年は平穏なので、やっと窓にガラスを入れることを決めたそうだ。
 といっても、大きな板ガラスを作る技術は一度廃れた上に、新しいガラス職人の腕もいまいち未熟らしく、ステンドグラス風になってるって話だ。
 でも、俺はこっちの方が綺麗だと思うし、好きだな。


 そして。続きの間である寝室いっぱいに鎮座している、大きくてゴージャスな天蓋付きベッドが目に入った。
 カーテンみたいになってるレースが細かくて、綺麗だ。

「あ、すごい。ぽよぽよしてる」
 ウィリアムが切望していた、軟らかいマットレス。完成したんだ。

 ウォーターベッドで、夏は冷水、冬は温水を循環させるそうだ。ハイテクだなあ。


「どんなにしても破れないくらい、丈夫に作っておいたから。安心していいよ?」
 意味深に言って。ウィンクしてみせた。

 運動って。……そういう意味だよな?
 全くもう。隙あらばエロネタぶっこんで来るの、オヤジくさいよ? 実際中身はオヤジだからって、開き直らないように。


「それにしても、ここまで無防備にされると、少々罪悪感を覚えるね」

「……え?」
 やわらかいベッドに押し倒されて。

 ウィリアムの腕の中に閉じ込められていた。
 素早いな!


 *****


「餓えた狼に、可愛いお尻を向けてはいけないよ? 教わらなかったかね?」

 いやいや、いつ、誰から教わるんだよ⁉ そんな教訓、初耳だってば。
 っていうかウィリアムは餓えた狼なんだ……。そんな風には見えないけどな。


 俺が大人になるのを待って、17、8の滾る肉欲を自家発電で我慢していた責任を取るように、とか言われても。

「が、我慢してって、俺がお願いした訳じゃないし、」
「ん? 君は、私が君を好ましく想っていながら、他の誰かを抱いてたとしたら、どう思う? 嫌ではないのかな?」
 器用に片眉を上げてみせる。


 ウィリアムが。他の誰かを?

 前世の俺は、極端に性欲が薄かったけど。
 今は、ウィリアムに教えられて。性器に触れられたり、抱き合うのが気持ち良いと知った。

 こんな快感を知ったら、もうウィリアムと離れて住みたいなんて思わないくらいだ。

 リューセーは、若い頃からモテモテだったようだし。彼女も、何人かいただろう。もしかしたら、彼氏も。……でも、前世のことは、もうどうしようもないんだし。考えないようにしとこう。

 とりあえず、リューセーのことは置いといて。
 ウィリアムが、性欲を抑えることができなくなって。それを解消するために、誰かを抱いたとしたら?

 俺たちはまだ結婚してないし。
 付き合う前なら、浮気にはならないけど。

 俺のことを好きなのに、別の誰かを抱くなんて。
 恋人じゃなくて、それがたとえ、そういう商売専門の人相手で、恋愛じゃないとしても。


「……なんか、嫌だ」
 想像するだけでも、胸の辺りが、何だかもやもやする。

 このもやもやした気持ちが、嫉妬なのかな。俺にも、そんな気持ちがあったんだ。前の人生では、知らなかった。

「ああ。そうだね。私も嫌だ。誰にも君を渡したくない」
 嬉しそうに、ぎゅっと抱き締められる。


 だからずっと、変な虫がつかないように牽制して見張ってたって。
 それはちょっと、いやかなり引くかな……。


 *****


「ん、」
 ウィリアムはまた、俺の右目の下のホクロにキスを落とした。

「なんで、そこばっか、キ、キス、するの?」
「何故って? 君の泣き黒子って妙に色っぽくて。何となく、誘われてるような気になるんだよね」

 いや、誘ってないです。
 このホクロは生まれつきだけど。そんなことを言われたのは前世も含め、ウィリアムに言われたのが生まれて初めてだ。色っぽい大人の女性なら泣きボクロも色っぽく思えるだろうけど。俺だよ?

 ウィリアムこそ、フェロモンとか出てるに違いない。やたら色気があるし。
 歩くだけ、座っているだけ。そこにいるだけでも目を奪われる。

 俺なんて、非モテで冴えない、その辺にいるような普通の日本人だというのに。何で美貌の王様とこんなことになってるのか。本当に不思議だ。
感想 8

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