神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

文字の大きさ
42 / 71

異世界で、餓えた狼に襲われる

しおりを挟む
 城の厨房も大改装したようだ。
 コンロや冷蔵庫、水道周りはうちのキッチンを参考にしたそうで。かなり使いやすくなったと料理人たちから好評をいただいた。それは何より。

 料理長は、何か作りたい時はどうぞご自由に使ってください、大歓迎です、と言ってくれた。


 でも、作るのも好きだけど。
 誰かが作ってくれた料理を食べるのも好きなんだよな。

 俺の知っているレシピのほとんどは伝授したし。なるべく、ここで働いてる人の仕事を取りたくないという気持ちもある。

 たまに、おやつを作って振舞うくらいならいいかな?


 *****


 ウィリアムの部屋の前で、オーソンとオズワルドは頭を下げた。
「以降の本日の予定は空けておきました。ごゆっくり」

「ご苦労」
 ウィリアムは鷹揚に頷いた。


 ドアを開けて、中に入ると。
 真っ先に目に入ったのは、正面に見える窓だった。

「あぅ、ガラス窓になってる!」

 前に、魔物の襲撃とかあった時は鎧戸にしていたって聞いた。俺がここに来た時も、まだ鎧戸だったっけ。
 ガラスは割れると危険だし、貴重なのでしばらく窓には使ってなかったけど。ここ数年は平穏なので、やっと窓にガラスを入れることを決めたそうだ。
 といっても、大きな板ガラスを作る技術は一度廃れた上に、新しいガラス職人の腕もいまいち未熟らしく、ステンドグラス風になってるって話だ。
 でも、俺はこっちの方が綺麗だと思うし、好きだな。


 そして。続きの間である寝室いっぱいに鎮座している、大きくてゴージャスな天蓋付きベッドが目に入った。
 カーテンみたいになってるレースが細かくて、綺麗だ。

「あ、すごい。ぽよぽよしてる」
 ウィリアムが切望していた、軟らかいマットレス。完成したんだ。

 ウォーターベッドで、夏は冷水、冬は温水を循環させるそうだ。ハイテクだなあ。


「どんなにしても破れないくらい、丈夫に作っておいたから。安心していいよ?」
 意味深に言って。ウィンクしてみせた。

 運動って。……そういう意味だよな?
 全くもう。隙あらばエロネタぶっこんで来るの、オヤジくさいよ? 実際中身はオヤジだからって、開き直らないように。


「それにしても、ここまで無防備にされると、少々罪悪感を覚えるね」

「……え?」
 やわらかいベッドに押し倒されて。

 ウィリアムの腕の中に閉じ込められていた。
 素早いな!


 *****


「餓えた狼に、可愛いお尻を向けてはいけないよ? 教わらなかったかね?」

 いやいや、いつ、誰から教わるんだよ⁉ そんな教訓、初耳だってば。
 っていうかウィリアムは餓えた狼なんだ……。そんな風には見えないけどな。


 俺が大人になるのを待って、17、8の滾る肉欲を自家発電で我慢していた責任を取るように、とか言われても。

「が、我慢してって、俺がお願いした訳じゃないし、」
「ん? 君は、私が君を好ましく想っていながら、他の誰かを抱いてたとしたら、どう思う? 嫌ではないのかな?」
 器用に片眉を上げてみせる。


 ウィリアムが。他の誰かを?

 前世の俺は、極端に性欲が薄かったけど。
 今は、ウィリアムに教えられて。性器に触れられたり、抱き合うのが気持ち良いと知った。

 こんな快感を知ったら、もうウィリアムと離れて住みたいなんて思わないくらいだ。

 リューセーは、若い頃からモテモテだったようだし。彼女も、何人かいただろう。もしかしたら、彼氏も。……でも、前世のことは、もうどうしようもないんだし。考えないようにしとこう。

 とりあえず、リューセーのことは置いといて。
 ウィリアムが、性欲を抑えることができなくなって。それを解消するために、誰かを抱いたとしたら?

 俺たちはまだ結婚してないし。
 付き合う前なら、浮気にはならないけど。

 俺のことを好きなのに、別の誰かを抱くなんて。
 恋人じゃなくて、それがたとえ、そういう商売専門の人相手で、恋愛じゃないとしても。


「……なんか、嫌だ」
 想像するだけでも、胸の辺りが、何だかもやもやする。

 このもやもやした気持ちが、嫉妬なのかな。俺にも、そんな気持ちがあったんだ。前の人生では、知らなかった。

「ああ。そうだね。私も嫌だ。誰にも君を渡したくない」
 嬉しそうに、ぎゅっと抱き締められる。


 だからずっと、変な虫がつかないように牽制して見張ってたって。
 それはちょっと、いやかなり引くかな……。


 *****


「ん、」
 ウィリアムはまた、俺の右目の下のホクロにキスを落とした。

「なんで、そこばっか、キ、キス、するの?」
「何故って? 君の泣き黒子って妙に色っぽくて。何となく、誘われてるような気になるんだよね」

 いや、誘ってないです。
 このホクロは生まれつきだけど。そんなことを言われたのは前世も含め、ウィリアムに言われたのが生まれて初めてだ。色っぽい大人の女性なら泣きボクロも色っぽく思えるだろうけど。俺だよ?

 ウィリアムこそ、フェロモンとか出てるに違いない。やたら色気があるし。
 歩くだけ、座っているだけ。そこにいるだけでも目を奪われる。

 俺なんて、非モテで冴えない、その辺にいるような普通の日本人だというのに。何で美貌の王様とこんなことになってるのか。本当に不思議だ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
1回の投稿につき1000~1500文字ほどになります。 現在新表紙イラスト作成中につき、代用品のおみくじとなっています。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です! *諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

処理中です...