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おまけ:赤竜王の思い出

ツガイと祝いの席

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疲れて寝入ってる朔也の身体を浴巾バスタオルで包み、抱き上げ。

床単シーツの交換を。花はもうよい」
「かしこまりました」

美琳らに命じ、湯殿へ。
身体を洗い流し、腕に抱いて湯船に浸かった。

湯船には、新しい花弁が浮いている。


まだ、抱き足りないが。
人は龍人より体力がないのだろう。

まだ、ほとんど人の身体と変わりない。
しばらくして竜玉が馴染めば、人よりも体力がつくように変化するだろう。


しかし、よくよく見れば。
ほどよく筋肉のついた、しなやかな身体である。

大手術を乗り越え、よくぞここまで健康になってくれたものだ。
ご両親もご兄弟も、とても朔也を愛しているのがわかった。

仕方のない状況であったが。
家族の元から、いきなり攫ったようなものだ。


彼らの分以上に、朔也を慈しみ、愛そう。


*****


「ん……、」
朔也は、ぼんやりとした様子で、浮いている花弁を拾い上げていた。

「あ、気がついた?」
床単シーツが汚れたので、交換してもらってると伝える。


「何故、花を撒くんだ……?」
「え、あっちの人は、そういうの喜ぶんじゃないの?」

青峰が向こうの本で読んで知って、ロマンティックなのでやってみてはどうでしょう、と提案したのだ。
ロマンティックというものが何だかは良く知らないが。


朔也は、何かを思い出したようで。
ふわりと微笑んだ。

「俺の腕の中で、他の誰かのことを考えないで」

誰かを思ってそんな顔をされたら。
妬いてしまう。

「え、他の誰かって、望ちゃんだよ?」
「駄目。今は、俺のことだけ考えて欲しい」

いくら望殿でも。
今日だけは、駄目だ。

新婚初夜なのだから、そのくらいの我儘は許されるはずだ。


「わかった。……私の心の中には我的心里貴方しかいません只有你 」

今のは。
「ああ、嬉しいよ。こっちの言葉で、言ってくれたんだね!」

思わず抱き締めて、唇を奪い。
逆鱗に触れた。

嬉しくて。
抱かずにはいられない。


後孔はまだ柔らかく、私を受け入れてくれた。

「あぁ、朱赫……、おっきぃ、ので、お腹、いっぱい、搔き回して……?」
甘い囁きに、逆鱗に触れられたわけでもないのに興奮が増す。


あちらの言葉で好き、愛してると囁くと。
より感じるようで。

きゅうきゅうと締め付けて、私を喜ばせる。


湯船の中で。
朔也がのぼせてしまうまで、してしまった。


*****


「確かに。夏王殿、ここに署名を」
鳳凰の国より取引相手が来て、品物を受け取った。


「ああ、……墨国の玉は、どのような感じだろう?」
「新しい玉ですね? 大変好評ですよ。質も良いですは、細工がまた素晴らしいと評判です」

望殿の提案で、玉に細工を施したのが好評のようだ。
陛下は素晴らしいツガイを見つけたものだ。

望殿は細工の腕だけでなく、商才もある。

取引相手がまたお願いします、と帰っていくのを見送って。


早速指輪で、朔也の様子を伺う。
望殿と元白のツガイ、剛麒と共に、図書寮で招待客への贈り物を製作しているようだ。

結婚式で色々世話になったので、恩返ししたいという。

婚礼衣装、素晴らしく似合っていた。
針仕事はあまり得意ではない様子だが、丁寧に作業をしている。


朔也が、こちらの言葉を話せる、という話題になっていた。

「わたしにはお二人は普通にこちらの言葉で話しているように聞こえますが。どう違うのでしょう?」
剛麒の疑問に、朔也はその手を握り。

我们结婚吧結婚しよう


ええええ!?

図らずも、心の声と剛麒の叫び声が同調した。
思わず、図書寮へ走った。


「……どうして俺以外の人に求婚してるのかな?」

やきもちが多分に混じった疑問に。
朔也は、拗ねたように云った。

「そういえば、俺はこういうセリフは言ってもらえなかったなと思って」


「ええ~」
「え……っ?」
二人は非難の目で私を見た。

「あの雷音ですら”結婚しよう”くらいは言ってくれたよ?」

何と。
あの陛下がそんな。


しかし。
「卒業したら結婚してくれるの? って聞いたら、いいよって言ってくれたじゃないか……」

「それはプロポーズとは言わないと思う」
望殿は、厳しかった。

異世界では、はっきりした求婚の言葉が必要だったのか。
陛下も、たくさん学ばれたのだろう。


「でも、俺が死にかけた時、颯爽と現れて助けてくれたのは嬉しかった。凄くかっこよかった……。朱赫はいつもかっこいいけど」
朔也はにこにこしている。

そうか。
そんなに嬉しかったのか。私も嬉しい。


「結局のろけだった」
「ツガイ自慢大会ですか。なら負けませんよ?」

「いや、そんなことしてる暇があったら手を動かそうぜ。朱赫も暇なら手伝って」
朔也に手招きされて。

「いいよ。どれ?」
朔也の隣りに座り、作業を手伝った。


*****


元白は、麒麟の国で式を挙げた。

桜龍である朔也は、どうしてもと麒麟の王に乞われて。
その式に参加することになっていた。


いつの間にか祝いの花を、自由自在に出せるようになったようだ。
勘がいいのだろう。

腐るものではないので、いくつか拾っておく。
朔也のご両親に挨拶に伺うときに、手土産に持っていこう。人が食べれば寿命の延びるものだ。


招待客は、祝いの花が降るのを見上げ。好きな花を選んでは拾っている。
皆、笑顔だ。

それぞれ好みの花を降らせてやって。
その度に歓声が上がっている。

ひと回りして、朔也が戻ってきた。


「お疲れ様」
「ただいまー」

手を拡げて迎えると。腕の中に飛び込んで来た。

「これから祝い事の招待が矢継ぎ早に舞い込むだろうな。礼金取れ礼金。がっぽり稼げるぞ」
冬雅は花をこぼれそうなほど籠に拾い、花を食べながら云った。

「おい、自分でも拾え、青峰」
青峰は籠から花を奪って食べていて、冬雅に叱られていた。


*****


朔也は、赤い薔薇を出し、花弁を私の口元へ運んだ。
「はい、朱赫。あ~ん」


花弁は、口の中でさっと溶け。
朔也の口づけのように甘く、幸せな気持ちになる。

「……ん、美味しい」

「朱赫のためだけに特別愛を込めて、出した花だからな」
「嬉しいよ、朔也」

嫉妬深い私のために、こうして、特別に甘やかしてくれるのだ。
優しく、愛らしい。

「ちっ、隙あらばいちゃつきやがって……」
冬雅は舌打ちしたが。


新婚だ。
いちゃつかないでどうする。
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