巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

文字の大きさ
42 / 65
キノコマスター、魔王と対峙する。

魔王封印へ

しおりを挟む
「私はここで結界の補強をし、魔物を撃退する。優輝はこの中で魔王を鎮め……いや、欲しい」
バルは、苦悩してるみたいだ。

「……眠らせる?」

どういう意味だろう。
魔王を封じるんじゃないの?

っていうか俺、一人だけで島に行くの!?

いや、勇者なんだから、それが元々の役割なんだけど。
てっきりバルも一緒に行って、封じるんだと思ってた……。

俺が一人でも、危険じゃない相手なのかな?
そうでもなけりゃ、バルが俺を一人で行かせたりなんてしないだろう。


「恐らく、それがなのだろうが……、」
島を見下ろして、バルが呟いた。


何しろ、勇者が今まで魔王に何をして、封じてきたのか。
記録が全く残ってないんだ。

前の勇者は、封じるのに二年半も掛かったんだっけ?
気が遠くなりそう。

一瞬だけ、ここの結界を解くから、その隙に島へ行くように言われたので。
マントをグライダーに変えた。翼より、こっちの方が早い。


「今だ!」
バルの合図で。


魔王のいる、アルタマール・イスラ島へと飛んだ。


*****


結界は、俺が島に入ると同時に閉じた。
さすが、早いな。

グライダーで、木がまばらで広場みたいになってるところに降りた。
人工的に土がならされてるような感じだ。バルが前もって整地しといてくれたのかな?


アルタマール・イスラは無人島のようだ。

辺りの植物は伸び放題、ジャングルだった。
でも、鳥や小動物の気配はない。

みんな魔王によって魔物に変えられて、バルに退治されたのかな?
それとも、元々この島には生き物がいなかったのか。


「ミャアー」

ん? ミャア?
誰かを呼ぶような、猫の声が聞こえた。

ジャングルを掻き分けて、声のする方向に行ってみたら。
子猫がいた。黒猫だ。

うわあ、可愛い!

俺的には普通サイズの子猫だった。でも、一見してわかった。
とてつもない、強大な魔力を感じる。

見た目は小さくて可愛いのに。すごい違和感だ。


……まさか。
これが、魔王!?


バルも、複雑な様子だったっけ。幻惑かもしれない、とか言ってた。
思わず自分の目を疑ったんだろうな。

まさか、魔王が、こんな可愛い子猫の姿だなんて。
俺だって信じらんないよ!


*****


「シャーッ」
俺の姿を見た猫が、耳を伏せて、全身の毛を膨らませて威嚇してきた。

でも、威嚇するだけで、飛び掛ってくる様子は無い。
警戒されてるんだ。

ああ、俺っていうか。”人間”を警戒してるのかな?
だとしたら。


「カンビオデベスティア」
獣に変身する魔法で、猫になった。

白に黒い模様が入った、大型犬サイズのハチワレ猫だ。


「ミャッ!?」

子猫は猫になった俺を見て。
驚いたように、その場で垂直に飛び上がった。可愛い。


子猫から目を逸らして。そっぽを向いた状態で、香箱座りをしてみせる。
俺には敵意はないよ、と態度で示してやる。

横目で様子をみると。
子猫は耳を伏せ、恐る恐る、といった様子でこっちに近寄ってきた。

普通、子猫は青い目なんだけど、こいつは金色の目だ。
金色の目は魔物のあかしなんだっけ。


子猫は、俺の周りをぐるぐる回って。
そろそろと、あちこちの匂いをかいでる。

……おっと、そこは嗅ぐな。
尻の辺りにあった顔を、しっぽで払う。


はしないな。おまえ、仲間か? ニンゲンに化けられるのか、すごいな」
黒猫は小首を傾げた。可愛い。

猫に変身すると、猫語が理解できるようになるのかな?
バルは猫に変身しなくても通じてたけど。

……

ウィルフレドが言ってた、最後までしたらダメっていうのは。
もしかして。

バルと、最後までしてたら。バルの……人間の匂いがついてしまって。魔王から警戒されて逃げられて、封じられない、って意味だったとか?


*****


「俺は、優輝だよ。きみは?」

「おれ、クレプスクロ。昔のことはよく覚えてない。でも、邪魔だって捨てられて。それからは、ニンゲンどもに忌み嫌われて、何度も攻撃されたのは覚えてる」
そのことを思い出したのか、毛を逆立てた。


つい最近、目が覚める前は、ニンゲンに掴まって。どこかの家に連れ去られて。
身体中撫で回された上に、お湯に突っ込まれたりして、ひどい目にあった、と憤慨してる。

……ああ、撫でまわされて、風呂で洗われたんだな。


クレプスクロも、最初はニンゲンのことを警戒してたけど。
そいつの腕はあったかくて。攻撃もしてこないし。

こいつなら大丈夫かな、と思って、安心して眠った。
それなのに。

気がついたら、この島の、冷たい土の中に埋められていた。
たったひとりで。

土から這い上がって。
動物たちに囲まれて、世話をされていたら。

いきなり、黒いニンゲンが現れて、動物達を消し去った。
そして、気付いたら、おかしな固い壁に閉じ込められてしまった、という。

……”黒いニンゲン”っていうのは、間違いなく、バルのことだな。


「もう少しで壁がところだったのに。また、固くなってる。破れた隙に入ってきたユーキ以外、ここに動物はいない。おまえも、もうここから出られないぞ」
ぷう、と拗ねているのも可愛い。撫で回したい。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します

市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。 四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。 だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。 自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。 ※性描写あり。他サイトにも掲載しています。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

処理中です...