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第二章 覚醒
第9話 時の人、ノーティス
しおりを挟む食堂で交通事故のように始まったカイからの取材。
俺が椅子をカイの方に向けて話をする姿勢に入ると、
カイは懐から手帳を取り出した。
「ではさっそく聞きたいのですが……さっきの乱闘騒ぎについて」
「聞きたいって言われてもなぁ……
売られた喧嘩を買って、俺らが勝った、それだけだよ」
「いやいや、そこじゃあ無いんですよ。
重要なのは彼らがセイラさんの手下だって事です」
……こいつ、想像より情報を持っているようだ。
仲間にした意味はあったな。
「セイラについて知ってるのか?」
「もちろん。去年までは絵に書いたような馬K……いえ、道楽者だったのが
人が変わったように行動し始め、今や黄色組のトップ。
マスコミとして知らない方がまずいですよ」
(そうか、やっぱりあいつは目立ってるんだな)
前の世界でも自分を抑える事はしないタイプだったが、変わらないようだ。
「つまり、そんな人の手下に襲われるなんて恰好の取材対象なんですよ!
それで結局あなたは彼女に何をしたんですか?家同士の因縁とか?
それともドロドロした恋模様とか……?」
「ハァ……そんな大した事じゃないよ。ただ、俺はあいつに
説教しないといけない」
「説教?なんでそんな事を?」
「理由は秘密だけど、俺はアイツにいわゆる「悪党」になって欲しく無いんだ」
まさか前世で兄妹でした、なんて言える訳無いのでかいつまんだ内容を話す。
「悪党ですか……確かにセイラさんには良くない噂も多いですね。
脅迫だとか……恋愛絡みの噂も一つや二つじゃ無いですよ」
奈緒は「手段を選ばない」と言っていた。
カイのゴシップが本当ならあいつは有言実行してしまっている。
一日でも早く止めなければ、それが俺の取るべき責任だ。
「俺が話せるのは本当にこれくらいだよ」
「ふむ……まあ、記事の一つにはなりそうですね。
ありがとうございましたー!」
「ちょっ!仲間にする登録まだなんだけど!?」
俺の呼びかけは耳に届かなかったのか、無視されたのか、
カイは礼を言ってバタバタと走りさっていった。
「台風みたいな奴だったな……」
そう呟きながら椅子を食卓の方に向き直す。
「ふぅ。美味かった、デザート貰ってこよう」
俺がカイの相手をしている内にマロンは海鮮丼を食べきってしまい、
デザートを取りに行った。
「さて、じゃあ俺も久しぶりの食事をしますか……あっ」
スープを口に運んだ途端、違和感に気づく。
「スープ冷めちゃった……」
口の中に広がる塩気はスープの物なのか涙なのか。
俺には分からなかった。
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