恋愛ゲームのモブに転生した俺が悪役令嬢に転生した妹の闇堕ちフラグを叩き折る。

芽春

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第二章 覚醒

第10話 家族なんて嫌なとこばっか似る

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「なんだこれは……」

職員室からも近く、人通りが最も多い東校舎二階の廊下。
そこの掲示板にデカデカと張り出された学級新聞。
そこにはこう書いてあった。

「ただならぬ因縁!?新進気鋭の両リーダーの関係とは!?」

「ザワザワ……ノーティスがセイラの元カレってマジ?」
「いや知らねぇよ」

廊下には相当な数の人数が集まっていて、出処がよく分からない噂も
飛び交っている。どうしてこうなった。

「まあ、有名になるのは良いんじゃないか?ノーティスは赤組リーダーなんだ、多少は顔が売れていた方が良いだろう」

隣に立つマロンはそう言う。
一理有るが悪い意味で有名になるのは逆効果なのでは?

「まあ有名にはなれるだろうけど、
こんなゴシップ系の目立ち方はしたく無かったな……」

「よう、すっかり有名人じゃねえか。ノーティス」

ゴシップにモヤモヤした気分になっていると、突如背後から声を掛けられる。

「君は……誰だっけ?」
「俺だよ、俺。同じクラスのザコス」

そう言われて見るとこの坊主頭何処かで見たような……あ、思い出した。

「あー!昨日の棒切れ君か!」

「棒切れ君言うな!」

「ごめんごめん、で、なんの用?」

「用か……強いて言うならお前に恨み節でも言いに来た」

そういうとザコスはどこか自嘲するような顔で学級新聞の自分が
倒れている場面を載せられたコーナーを見る。

「ははっ、だっせぇ所バッチリ撮られてやがる」

「襲ったのは君からだろ?」

「ああ、そうだよ。でもあんな事好きでやった訳じゃねえよ」

「ふーん?何か理由が有るの?」

「あんまりデカい声では言えねえけどよ……
俺の親父はアイツの家の使用人なんだよ、これで分かるか?」

……なるほどな、つまり彼は親の職を握られてる。

たぶん「逆らったら親に言いつけてお前の父親を首にするぞ」
とでも言われたのだろう。

だから従わざるを得なかったのか。

「たぶん三月もしたら俺はこの学校にも居られなくなる、
その前に文句の一つでも言おうと思ったんだよ」

「……ご愁傷さま」

今の俺にはそれしか言えない。いや、本当にそうだろうか?

「……いい事思い付いた、俺はちょっと用事が出来たけど……
マロンはどうする?」

「私はもう少しここで記事を読む事にする、書いてある内容はめちゃくちゃ
だが、読んでる分には面白い」

「おっけー」



ここは東校舎端の空き教室、新聞部の活動場所。

「うふふ……その場しのぎで書いた記事でしたが大人気で
嬉しい悲鳴が出ますねぇ」

教室でカイが一人ニヤついていると、突如バァン!と言う音と共に
勢いよくドアが開く。

「カイ・シュザイさん居る!?」

「ひえぇぇ!急に何ですか!?記事への文句は言論弾圧に繋がりますよ!?」

「そんなくだらない用じゃ無いよ……て言うか
文句つけられるような記事って自覚有るんだ」

「じゃあなんの用ですか?クラス対抗戦はまだ先ですよ?」

「セイラの居場所って分かる?」

「セイラさんの居場所?いや知ってますけど……」

「教えてよ」

「嫌ですよ!記者は情報が命なんですよ!それをただで売るなんて……」

これ以上正攻法で責めても押し問答になりそうだな。

何か交渉材料に出来そうなものは無いか考えを巡らせると、丁度良い物が
見つかった。俺はそれを手に取り、カイに見せる。

「この記事さぁ……結構ある事無い事書いて有るよね?」

「……まあ、そうした方が面白いですし……」

「俺が『迷惑だ』って然るべき所に訴えれば、
取り下げも通りそうだと思わない?」

「えっ、それは辞めて下さい!セイラさんとノーティスさんの
記事はかつてない程人気なんですよ!」

「じゃあ君がセイラの居場所教えてくれたら俺は何もしない。それで良い?」

「うぅ……分かりましたよ、彼女は放課後いつも生徒会室に居ます……」

上手い事言いくるめて、セイラの居場所は聞き出した。
となれば、後は向かうだけだ。



東校舎一階端の生徒会室前にやってきた。
……ただ、目の前の光景は違和感しか覚えない。

「ここが……生徒会室?」

俺の目の前には紫の半透明カーテンとドア窓を黒い布で塞いである、
文化祭か何かと勘違いしそうな入口があった。

記憶では至って普通の両開きドアだったはずなのだが。
少し躊躇しながらもドアをノックする。

「はい、どなたかな?」

ドアから落ち着いた声色の男の声が聞こえた。

「セイラさんに用があって来たんだけど?」
「ふーん……」

俺がそう伝えるとドアが少し開いて、隙間から声の主が姿を表す。
そいつは金髪糸目の優男。

「お前エリトか、なんで生徒会室に?」
「今の生徒会室はセイラの居城、そして今の僕は彼女の側近。
何もおかしい事はないよ」

穏やかな口調でそう言うが、本来彼は黄色組……
貴族達のトップを務めていたはずの男だ。

もちろん名ばかりでは無く、プライドの高い
貴族の子息達を纏めるカリスマを持っているし、
腹黒い彼にしか出来ない事も多々していた。油断は出来ない。

「で?俺はセイラに用が有るんだけど?」

「なんの用だい?」

「人の両親人質にする様な真似は辞めろって言いに来たんだよ」

「なんだ、そんな用か。セイラに伝えるまでも無いね」

エリトは当然の様にそう言い放つ。

「伝えるまでも無いかはセイラと俺が決める事だ、お前の出番じゃない」

「やれやれ、困ったな。君みたいな奴がなかなか退いてくれないのは
良く知ってる。でも君が帰るまでここで問答する程僕も暇じゃ無い」

「だったら大人しく通せよ」

「そうだ。一つ言って無い事があったけど、僕は今度の学内対抗戦で
黄色組の露払いを任されてるんだよ」

「……どういう事だ?」

「『名誉決闘』は知ってるよね?」

名誉決闘。

この学園のルールで、当人同士がどうしても納得出来ない事があった場合に教師や生徒達の見守る中、学園中央の運動スペースで決闘をする。

そして、勝った物の言い分が正しいと言う事になる。

「ああ、知ってる。それに参加しろと」

「相手は当然僕だ。そうだね、僕が勝ったら君が二度とセイラに
近づけない様に要求しようかな」

「なんだと?」

こいつは相当自分の強さに自信が有るらしい。
きっと今までもこいつの手によって奈緒に文句が有る
奴らを強引に退けたんだろう。

「一方的に言うね……それじゃ俺も条件を出す。決闘で俺が勝ったら
お前はセイラの脅迫を辞めさせろ」

決闘の要求は原則として絶対的な物だ。
それに乗じた要求なら奈緒も無視出来ないだろう。

「まあ、オーケイだよ。決闘は明日の昼で良いね?」
「分かった」

明日、絶対に負ける訳にはいかない戦いが始まる。

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