恋愛ゲームのモブに転生した俺が悪役令嬢に転生した妹の闇堕ちフラグを叩き折る。

芽春

文字の大きさ
13 / 55
第二章 覚醒

幕門 「有能な『ひねくれた』妹」

しおりを挟む

生まれてからいい事なんて一つも無かった。
だから私は勉強して、周り全部利用して幸せになってやるんだって思ってた。

それなのに。

プアアア!!!
「危ない!」
『え?』

ガシャン、と音がして次に私の身体は宙を舞った。
上と下がどちらなのかすら分からない。
そう思っていたら背中に痛みが走る。

私は無様にも電柱に叩きつけられ、そのまま地面に落ちる。
そして目の前の光景を見て何が起きたか理解した。

焦る人々、破損したトラック……最後に、四肢が関節と逆に曲がって頭から血を流しピクリとも動かない兄の姿。

ああ、そうか、私は庇われたんだな。
でも、全ては無駄でこれから私は死ぬ。

『そんなの……嫌だ……』

そう思いながらも意識が持たず、結局視界はブラックアウトする。
……そしてどれくらいの時間が過ぎたか、たった一秒かもしれないし、
百年はあったかもしれない。

とにかく、気づくと私はゲームの登場人物セイラとして生まれ変わっていた。

『ああ、良かった、私の努力は無駄にならなかったんだ』

しかし、心のどこかではあのまま死んでいたかった気がする。
人生なんて辛いんだから。

そして、直ぐに事態は理解出来たから、まず「自分の愚かさにうんざりした」
と各地に言って回り「馬鹿令嬢」のイメージ払拭に務めた。

そして、学校の重要人物を口説いて回った。
便利で従順な駒として使いたかったから、幸いにもゲームの知識を覚えていた
お陰で口説くのはとても楽だった。答えが隣にあるテストのような物だ。

手に入れた力で主人公が来るのを阻止した、仮にも「私」を倒す予定だった存在なのだ、警戒するのは当然。この調子で誰も自分に勝てない程の力を身につけようと思っていた。そんな時に。

「お前……奈緒か?」

あの兄もこの世界に来ていた。
頼り無いと分かっているのに、会えた事が嬉しかった。

染み付いてきたお嬢様言葉を抑えて昔の自分を思い出しながら喋った。

「なあ、奈緒。別にそんな人を利用するような事をしなくてもいいだろ?
普通に慎ましく暮らしていればお前が主人公に退治される事なんて無いはずだし、前みたいに一緒に暮らそうよ」

その言葉は私に強い怒りを呼んだ。前みたいに暮らすのなんて特にお断りだ。
気づくと自分の決意を語っていた、こっちに来てから誰にも言っていなかった事なのに。誰かに本当の自分を理解して欲しかったのかもしれない。

「不幸だったってのは他人を傷つける免罪符じゃない!」

どうしてこうもこの兄は私を苛立たせるのだろう、無能なのはまだいい。
でも、なんでお前はそんな正論が言えるんだ。

私と同じ環境で私と同じ遺伝子を持って生まれたのに、何故あなたは
歪んでいないんだ。その事実は私が弱かったと言ってるような物だ。

『うるさい!』

もう、これ以上聞きたく無くて、ハッキリと
自分が何をしているのか意識して電流の魔法を放った。

叫びながら彼は倒れ伏す。何を言うべきか迷って、前の私は死んだと
言った。そんな事無いのに、私は生野奈緒なのに。

……いや、それでいいのかもしれない。
兄に手を上げ、周囲の人間を利用して成り上がる私は『悪役令嬢セイラ』
がお似合いだ。

そう、思っていたのに。数日して連絡が入る、シャドウ・ノーティス……兄が
赤組のリーダーに立候補したというのだ。

理由は明白だ、黄色組リーダーの私に対抗できる力を
手に入れようとしたのだろう。

あいつは、唯一の家族である私に否定されてなお、立ち上がった。

そして今は、決闘の舞台で私達の相手として立っている。
戦うのは私の側近エリトだが、彼はずっと私を見ていた。

似合わないオールバックに変えていた彼は前とは別人のようだ。
何故彼が強く有れるのか分からない。私が分からない事なんて無かったのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...