かのじょにせつなき青春なんてにあわない~世界から忘れられた歌姫を救いだせ~

すずと

文字の大きさ
24 / 45

第24話 水曜日の悪徳令嬢

しおりを挟む
 どうやら日夏の東京行きウィズ俺ってのはまじだったらしい。

 月曜日も火曜日も音沙汰なしだったからさ、こりゃあの時の雰囲気に流されて発言したノリだったんだよなー、なんて思った矢先の水曜日の朝、教室で唐突にそれは起こった。

「はい、これ」

「なに、これ」

「今週土曜日の東京行きの往復新幹線チケット。日曜日に約束したでしょ」

「まじ?」

「おおまじだって言ってんでしょ。なに? 今更行きたくないとか言うの?」

 その時の日夏は眼鏡に三つ編みスタイルだったんだけど、自らの眼鏡を割る勢いの睨みつけるを披露していた。ふつーにこわかったよ。

「行きたくないとかではないんだけど、大事な話をするのに俺も付いて行って良いのかと」

「あなたがいないと意味ないわよ」

 発言の後に、少し顔を赤らめる。確かに、ちょっぴり勘違いしそうな恥ずかしいセリフだったよね。

「ほぅ」

「ち、違うから。別に、新幹線とか一人で乗るのつまらないから四ツ木くんとお喋りしながら乗りたいとか、四ツ木くんと東京観光したいとか思ってないから。勘違いしないでよね」

「俺と一緒に新幹線に乗りたくて、東京観光したいんだな」

「は、はあ? 勘違いしないでって言ってるでしょ。もう良い、チケット返して」

「ごめん、ごめん。冗談だっての」

「もう勘違いしない?」

「しない、しない」

「だったらよろしい」

 彼女から許しを得て無事にチケットをもらう。それをカバンにしまい、入れ替わりに財布を取り出した。

「東京の往復チケットってどれくらいだ?」

 財布の中身を確認すると、一万円しか入っていないため、明らかに足りない。後でお金を下ろさないとな。

「私が無理に誘ったんだもの。お金なんていらないわ」

「でも、流石に……」

「心配無用よ。貯金なら引くほどあるから気にしないで」

 そう言ったあとに視線を伏せ、ポツリとこぼす。

「やっぱり、これを言うと自分がすごく惨めだわ……」

「気に入ってるの? その渾身の自虐ネタ」

「気に入ってるわよ! なんだか悪徳令嬢みたいでしょ!?」

「いや、お前は歌手だろう」

「ふん! とにかく、庶民のしょぼいお金なんていらないわ。ありがたく受け取りなさい。おほほのほー!」

「日夏の中の悪徳令嬢って、そんな感じなんだな」

 キャラ崩壊がすげーや。







 そんなこんなで土曜日。

 待ち合わせは新大阪駅の新幹線のりば改札前ってことで、大阪駅のお隣、新大阪駅にご到着。

 大阪駅とはまた違った空気が流れているのは、ここが大阪の玄関口だからかな。

 やたらとキャリーバッグが目立つ。目に付く人みんながコロコロとキャリーバックを転がしてやがる。みんな好きだよね、キャリーバック。

 キャリーバックの演奏会を聞きながら、在来線の改札は出ず、そのまま新幹線の改札の方へと向かう。

「うはぁ。すげぇな…」

 思わず声が漏れちまった。

 改札の前に現実離れした美人が立っている。

 クラシカルなワンピースは英国令嬢のお嬢様を思わせる。

 そんな人物が大阪にいるもんだから、何人かの人達が彼女をチラチラ見ているのが伺える。

 ちょっと待って、俺、あの隣を歩くの?

 無理無理無理。無理よ、無理。

 今日の俺のファッションも、いつも通りにシンプルなもの。冷汗付きのファッションなだけ。

 あのオシャレ番長みたいな隣に立つなんてアンバランスが過ぎるだろ。どんだけアシンメトリーなんだよ。

「ちょっと四ツ木くん」

 彼女に見惚れて突っ立っていると、いつの間にか駆け寄ってくれた日夏が目の前に立っていた。

「私、あなたより三〇分前に来たわよ」

 ドヤッと胸を張る。楓花と似ているドヤり方なんだけど、日夏の胸は、その、うん、まな板だなら凹凸がねぇや。

「あなた、今、ものすごく失礼なことを考えてない?」

「滅相もない」

「ふん。庶民のくせに生意気ね」

「あれ? もしかして水曜日からの悪徳令嬢キャラが続いてる?」

「ふっ。ファッションも相まって悪徳令嬢感が強いでしょ」

 その場でひらりと一回転する彼女を見て一言感想を述べる。

「悪徳令嬢アニメキャラが二次元から出てきたと思っちまったよ」

「ちょっと気合い入れすぎたかしら」

「良いんじゃないか。東京の事務所に話をしに行くんだから、気合いも入るってもんだ」

「そうね。ちょっと緊張する」

「天下の出雲琴様も緊張するんですね」

「私をなんだと思ってるの? 緊張しかしないわよ」

 そう言って自分の胸に手を当てている日夏を見て、ちょっとばかし嬉しかった。

 俺を救ってくれた人も、俺と同じ高校生なんだなって思うと、やっぱり嬉しい。

「ちょっと、なに笑ってんのよ」

「んにゃなにも」

「言いなさい」

「言わなーい」

「言いなさいよ。四ツ木くんは出雲琴信者なんでしょ」

「ああ。ここで土下座しようか?」

「ごめんなさい。さっさと行きましょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について

古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。 すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!? 「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ? 俺、君と話したことも無いんだけど……? カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした

山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。 そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。 逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。 それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶 この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。 そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...