かのじょにせつなき青春なんてにあわない~世界から忘れられた歌姫を救いだせ~

すずと

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第37話 せつなき彼女

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 もうすぐ夏休みだってのに俺の気分は晴れない。

 夏休みだぞ、夏休み。学生なら誰もが恋焦がれる永遠の人気者。

 夏休みを目前にしているのに、なぜ、俺の心は未だ梅雨模様なのだろうか。

「そりゃ、もうすぐ期末だからじゃね?」

「ぐふっ」

 登校中、いつも通りに淳平と合致。

 高校の駐輪場に自転車を止めると、淳平が現実を突きつけてくる。

「容赦ない攻撃に世津くん大ダメージだわ」

「まぁ期末だなんて現実逃避したくなるわな。世津もあんまりゲームとかアニメに夢中にならんと、現実を見て勉強したまえ」

「くそペイの言っていることはもっともなんだが、異議ありだ」

「なに?」

「俺は最近、ゲームもアニメも夢中になっとらん」

「いやいや。この前、駅前で必死こいて俺にアニメキャラかなんかを聞いてきてただろ」

「んあ?」

 一体、なんの話かわからずに、ぽむぽむぽむと考え込む。

「確かに、淳平になにかを聞いたな。なにを聞いたっけ?」

「うそだろ。最近の話だぞ。もう忘れたのかよ。夏だからボケてる?」

「うるせーぞ。でも最近、物忘れが激しいというか……」

「世津がおじいちゃんになっちまった」

「淳平やい。わしゃ、お主になにを聞いたかのぉ?」

「……忘れちまった」

「てめーもじゃねぇかよ、くそペイがっ!」

「わしも世津と同じじゃてなぁ」

 そんなくだらないことを言い合って昇降口に向かう。

「……!?」

 立ち止まり、息を飲んだ。

「世津?」

 淳平の声が遠くに聞こえる。

 昇降口の前に、思わず目が惹かれる美女が立っていた。

 目と目が合って見惚れてしまう。

 彼女の美貌は高校生とは思えないほど美しく儚い。

 我が校の制服を着ているが、それは本当に学校の制服なのかと疑いたくなるほどである。

 まるで天使や妖精のようだ。

 二次元の世界からやって来たと自己紹介されても簡単に信じてしまう。

 彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそうになり、動けないでいる。

「あ、あの、世津──」

 あまりの美しさの衝撃に、彼女が俺の名前を呼んだ気がした。

「おい、世津」

 グイッと淳平に引っ張られる。

「お、おお」

 そこで現実に引き戻される。

「知り合いか?」

 コソッと耳打ちしてくる。

「い、いや……」

 こちらの声が聞こえたのか、彼女が、ビクッとしていた。

「なら失礼だぞ」

 淳平の言っていることは、あまりにも正論であった。

「あ、ああ。だな」

 そりゃそうだ。いくら綺麗な人が立っていたからって、ジーっと見つめていたら、そりゃビクッともなる。

 すみませんって意味を込めて軽くだけ頭を下げるが、彼女は俯いてしまっていた。

 その顔はなんだかとてもせつない。

 はぁ。俺ってば、やらかしたなぁ。

「なんだ? 一目惚れか?」

 淳平がからかうように言ってくる。

「……」

 それに対して、いつも通りに反応できなかった。

「え? 本気で一目惚れ?」

 淳平の声よりも、彼女のせつない顔だけが脳内を駆け巡った。
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