12 / 61
第12話 同志
しおりを挟む
「ふぅ。これでわたしも陽キャの仲間入りですね」
大手カフェチェーンの星場、通称スタバでの注文を終えて席に着くと、東堂が達成感たっぷりに言ってのける。
「なんでカフェで注文しただけで陽キャになんだよ」
「わかってないですねぇ。注文だけではなく、わたしはスタバの店員さんと会話もしたのですよ? もはやわたしの陽キャレベルは神をも超えています」
「神なのは店員のお姉さんだろ」
「それは間違いありません。同志でスタバ店員とかまじ神です」
「お前と同志とか最悪だな」
「あなたもわたしと同じ志だというのをお忘れなく」
返す言葉が出ず、東堂は隼人様風に言うレンコン、もといアイスコーヒーを勝ち誇った顔で飲む。
そのコーヒーを飲む姿は彼女の容姿と相まって非常に合っている。数人の男性がチラリと東堂を見ている姿が伺える。1番近い距離でその姿を見ている俺は正直、東堂に見惚れた。見た目は良いもんな。
「にがっ……。ちょ、え……。なんすかこれ」
中身はバカなのが本当に残念だ。
「ミルクとか砂糖とか入れないからだろうが」
「隼人様は入れませんでした」
「だからなんなの?」
「隼人様と同じが良いんです」
「そうっすか。なら、ブラックで良いんじゃない?」
言いながら、俺はダークモカチップフラッペを飲む。自分好みにカスタマイズしたので、めちゃくちゃ甘い。
「うう……」
うなり声を出しながら、こちらを睨んでくる東堂。その姿はご主人様にお預けをくらって我慢している子犬のようだ。
「なに?」
「そもそもですよ? なんでボッチ陰キャと来てるのにマウント取ってくるんですか?」
「は? 別にとってないけど」
「取ってるじゃないですか! なんですか!? ダークモカチップフラッペのトールで。エキストラチップマシマシのエキストラホイップマシマシのキャラメルソースマシマシーのマシマシ。マシマシからーのマシマシ。って!」
「エキストラパウダーが抜けてるぞ」
「うっさい! です! なんで陰キャボッチの前で陽キャの呪文唱えるんですか!? 最高魔力でわたしを滅ぼしたいんですか!? 安心してください! もうわたしのライフは0よ!」
「テンションたけぇ」
「ずるいです! そんなものわたしも飲みたいです! 交換してください!」
「んだよ。飲みたいだけか」
それならそうと素直に言えば良いのに。
「ほら」
「え……」
東堂は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「い、良いのですか?」
「ああ。俺はアイスコーヒーも好きだからな」
「ふ、ふん! べ、別にあんたが交換したいなら、してあげるわよ」
「おーい。後藤さん家の5姉妹の後藤になが入ってるぞ」
言いながら、ダークモカチップフラッペのトールのエキストラチップマシマシのエキストラパウダーマシマシのエキストラホイップマシマシのキャラメルソースマシマシーのマシマシ。マシマシからーのマシマシとアイスコーヒーを交換する。
交換した時に東堂が、じーっと見てくるので首を傾げる。
「なんだよ。やっぱりこっちの方が良いのか?」
「あ、い、いえ。すみません。そうではなくてですね」
あわあわとしながら見てきた理由を話してくれる。
「枚方くんって、アニメとか漫画に偏見ないんだなっと思いまして。ほら、陽キャってアニメをバカにしてくるじゃないですか」
「それこそ偏見だろ。別に陽キャもアニメとか漫画が好きな奴多いぞ」
「そ、そうなんですか?」
「そのバカにしてる陽キャってのは、アニメや漫画をバカにしてるんじゃなくて、そいつ自身をバカにしてるんだよ。そうやってマウント取って優越感に浸りたいだけなんだよ。陰湿だよ。そんな奴こそ、俺は本当の陰キャだと思う」
「そ、そそそ、それではわたしは陰キャではないってことですか!?」
「お前はただの変態だ」
「がーん」
お手製サウンドエフェクトに磨きがかかっている。
ずーん、と沈んだ様子で、ちゅーちゅーとダーク──以下略。のストローに口をつけた。
「ま、つまりだ。俺もアニメとか漫画好きだから偏見とかはないよ」
「あ」
「俺の名言風の良い話を遮ってくるなよ」
突如声を漏らして、ぷるぷると震える東堂。
頬を赤く染めており、耳まで真っ赤になってしまっている。
「お、おい。東堂? 大丈夫か?」
「か、かか、かか」
「サッカー元ブラジル代表のカカ? あの選手は凄かったな」
「間接キスじゃないですか!」
「お。意外とサッカーのルール知ってんだな。間接フリーキックを知ってるとは」
「どうやったら間接キスと間接フリーキックを聞き間違えるんですか!? どんな耳してるんですか!? サッカーが大いに盛り上がるを見せている日本ですが! わたしが盛り上がってるのはサッカーではありません!」
「どないしたん?」
「こ、こここ、これ、間接キスじゃないですか」
「んだよ。そんなことか」
言いながら俺は東堂のアイスコーヒーを飲む。
「あ、ああ……! ああ……! な、なんでわざわざわたしが口をつけたところから飲むのですか!?」
「そういう性なんだろうな」
「変態じゃないですか!」
「おいおい。『あなたもわたしと同じ志だというのをお忘れなく』なんだろ? 同じ変態同士仲良くしよや」
「ノオオオオオオ!」
項垂れる東堂へ言ってやる。
「まぁ落ち着けよ変態」
「うるさいです変態」
「それ飲んでみ? そんなことどうでも良くなるくらい甘いから」
「うう……。わたしの純情が……汚されてしまいました」
「お前に純情なんてないだろ」
自暴自棄になっているかのように、どうとでもなれと言わんばかりにダーク──以下略。飲んだ。
「ひゅわっ! なんですかこれ!?」
「な? 美味しいだろ?」
「美味しすぎて飛ぶぞ!」
大手カフェチェーンの星場、通称スタバでの注文を終えて席に着くと、東堂が達成感たっぷりに言ってのける。
「なんでカフェで注文しただけで陽キャになんだよ」
「わかってないですねぇ。注文だけではなく、わたしはスタバの店員さんと会話もしたのですよ? もはやわたしの陽キャレベルは神をも超えています」
「神なのは店員のお姉さんだろ」
「それは間違いありません。同志でスタバ店員とかまじ神です」
「お前と同志とか最悪だな」
「あなたもわたしと同じ志だというのをお忘れなく」
返す言葉が出ず、東堂は隼人様風に言うレンコン、もといアイスコーヒーを勝ち誇った顔で飲む。
そのコーヒーを飲む姿は彼女の容姿と相まって非常に合っている。数人の男性がチラリと東堂を見ている姿が伺える。1番近い距離でその姿を見ている俺は正直、東堂に見惚れた。見た目は良いもんな。
「にがっ……。ちょ、え……。なんすかこれ」
中身はバカなのが本当に残念だ。
「ミルクとか砂糖とか入れないからだろうが」
「隼人様は入れませんでした」
「だからなんなの?」
「隼人様と同じが良いんです」
「そうっすか。なら、ブラックで良いんじゃない?」
言いながら、俺はダークモカチップフラッペを飲む。自分好みにカスタマイズしたので、めちゃくちゃ甘い。
「うう……」
うなり声を出しながら、こちらを睨んでくる東堂。その姿はご主人様にお預けをくらって我慢している子犬のようだ。
「なに?」
「そもそもですよ? なんでボッチ陰キャと来てるのにマウント取ってくるんですか?」
「は? 別にとってないけど」
「取ってるじゃないですか! なんですか!? ダークモカチップフラッペのトールで。エキストラチップマシマシのエキストラホイップマシマシのキャラメルソースマシマシーのマシマシ。マシマシからーのマシマシ。って!」
「エキストラパウダーが抜けてるぞ」
「うっさい! です! なんで陰キャボッチの前で陽キャの呪文唱えるんですか!? 最高魔力でわたしを滅ぼしたいんですか!? 安心してください! もうわたしのライフは0よ!」
「テンションたけぇ」
「ずるいです! そんなものわたしも飲みたいです! 交換してください!」
「んだよ。飲みたいだけか」
それならそうと素直に言えば良いのに。
「ほら」
「え……」
東堂は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「い、良いのですか?」
「ああ。俺はアイスコーヒーも好きだからな」
「ふ、ふん! べ、別にあんたが交換したいなら、してあげるわよ」
「おーい。後藤さん家の5姉妹の後藤になが入ってるぞ」
言いながら、ダークモカチップフラッペのトールのエキストラチップマシマシのエキストラパウダーマシマシのエキストラホイップマシマシのキャラメルソースマシマシーのマシマシ。マシマシからーのマシマシとアイスコーヒーを交換する。
交換した時に東堂が、じーっと見てくるので首を傾げる。
「なんだよ。やっぱりこっちの方が良いのか?」
「あ、い、いえ。すみません。そうではなくてですね」
あわあわとしながら見てきた理由を話してくれる。
「枚方くんって、アニメとか漫画に偏見ないんだなっと思いまして。ほら、陽キャってアニメをバカにしてくるじゃないですか」
「それこそ偏見だろ。別に陽キャもアニメとか漫画が好きな奴多いぞ」
「そ、そうなんですか?」
「そのバカにしてる陽キャってのは、アニメや漫画をバカにしてるんじゃなくて、そいつ自身をバカにしてるんだよ。そうやってマウント取って優越感に浸りたいだけなんだよ。陰湿だよ。そんな奴こそ、俺は本当の陰キャだと思う」
「そ、そそそ、それではわたしは陰キャではないってことですか!?」
「お前はただの変態だ」
「がーん」
お手製サウンドエフェクトに磨きがかかっている。
ずーん、と沈んだ様子で、ちゅーちゅーとダーク──以下略。のストローに口をつけた。
「ま、つまりだ。俺もアニメとか漫画好きだから偏見とかはないよ」
「あ」
「俺の名言風の良い話を遮ってくるなよ」
突如声を漏らして、ぷるぷると震える東堂。
頬を赤く染めており、耳まで真っ赤になってしまっている。
「お、おい。東堂? 大丈夫か?」
「か、かか、かか」
「サッカー元ブラジル代表のカカ? あの選手は凄かったな」
「間接キスじゃないですか!」
「お。意外とサッカーのルール知ってんだな。間接フリーキックを知ってるとは」
「どうやったら間接キスと間接フリーキックを聞き間違えるんですか!? どんな耳してるんですか!? サッカーが大いに盛り上がるを見せている日本ですが! わたしが盛り上がってるのはサッカーではありません!」
「どないしたん?」
「こ、こここ、これ、間接キスじゃないですか」
「んだよ。そんなことか」
言いながら俺は東堂のアイスコーヒーを飲む。
「あ、ああ……! ああ……! な、なんでわざわざわたしが口をつけたところから飲むのですか!?」
「そういう性なんだろうな」
「変態じゃないですか!」
「おいおい。『あなたもわたしと同じ志だというのをお忘れなく』なんだろ? 同じ変態同士仲良くしよや」
「ノオオオオオオ!」
項垂れる東堂へ言ってやる。
「まぁ落ち着けよ変態」
「うるさいです変態」
「それ飲んでみ? そんなことどうでも良くなるくらい甘いから」
「うう……。わたしの純情が……汚されてしまいました」
「お前に純情なんてないだろ」
自暴自棄になっているかのように、どうとでもなれと言わんばかりにダーク──以下略。飲んだ。
「ひゅわっ! なんですかこれ!?」
「な? 美味しいだろ?」
「美味しすぎて飛ぶぞ!」
22
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる