彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第47話 高嶺の花の次元は上がっている

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「良かったんですか?」

 優乃がポツリと尋ねてくる。

「あのまま、あの人達を受け入れていたら京太くんの高校生活が元通りになっていましたよ」

「冗談きついぞ」

 つい笑ってしまう。

「全員が自分のことしか考えていない。ピンチになれば仲間を見捨てる。そんなゴミ共と一緒になんて願い下げだ」
「さっきの京太くんも、物凄い勢いで拒否してましたもんね」
「言いたいことが言えてスッキリだよ」
「あれは凄かったですね」

 先程の俺の勢いを思い出したのか、少し興奮気味に言ってくれる。

「優乃」

 彼女の名前を呼び、懺悔をするように彼女へ言ってのける。

「俺は本当にバカだったよ。そんな連中と一年も一緒にいたなんて、俺は本当にバカだ」

 もしも一年の頃の自分に会えるのならば、引っ叩いてでもあいつらと一緒にいるのを阻止したい。

「でも……」

 優乃を見た。

「ハブられなかったら、こうやって優乃みたいな信頼できる人とも出会えなかったからな」

 照れくさいセリフを放ちつつ、素直な気持ちを伝える。

「さっきも、優乃が庇ってくれて本当に嬉しかった。俺1人だったらこんなに上手くいかなかったと思う。優乃が庇ってくれたから、発言してくれたから、守ってくれたから」

 先程の綾香の一件を言うと、あわあわとしだした。

「や、えと、思い返せば、わたし物凄いことを口走っていましたよね」
「ああ。そりゃもう、物凄いことを口走っていたぞ」
「あふぇ!? ふぉ……お!?」

 頭から湯気が出てやがる。

「本当にありがとうな」

 そんな彼女に本気のお礼。

「京太くん……」

 優乃は少し冷静になったのか、えっへんと胸を張る。

「ほ、本当に感謝してほしいものですね。もはや京太くんはわたしなしでは生きていけない体になってしまったでしょう」
「ははっ! 本当、そうかも」
「ふぁふぇっ!?」

 独特の声を上げると、壮大に慌てだす。

「や! 今のは冗談というか、ツッコミ待ちというか」
「わかりにくいボケをするなよ」
「ぶぅぇふぇ」

 こっつんとぶりっ子みたいに頭を小突いているし、ちゃんとぶりっ子の声が出ていたが、ビールの飲み過ぎでげっぷするおっさんみたいなセリフだったぞ。

「でも……」

 そんな冗談の雰囲気から一変、優乃が真剣な声で否定語を出した。

「わたしが京太くんを庇えたのも、発言できたのも、守れたのも。全部、全部」

 優乃は美しい顔でこちらを見つめてくる。

「あなたがわたしを変えてくれたからだよ」

 彼女の言葉と共に鐘の音が鳴り響く。

 普段から聞いている校内の鐘の音。聞き慣れたはずの鐘の音が、今はまるで優乃を称える鐘の音に聞こえてしまう。

 今の彼女の美しさは次元が違った。

 強く変化を遂げた。人として成長した。次元が上がっていた。

 そんな彼女へシンプルな感情が浮かんでくる。

 好き。

 俺は優乃が好きだ。

 前から好きだったのかもしれない。でも、意識したら止まらない。

「京太くん?」
「な、なんだ?」
「顔、真っ赤ですけど」
「へ……」

 それが優乃を意識してのことだとわかっているので、わざとらしくそっぽを向いた。

「ほ、ほら、チャイム鳴ったし戻ろうぜ」

 スタスタと早足でその場を去ってしまう。

「え、あ、ちょ、待ってくださいよ、京太くーん」

 彼女に待ってと言われて立ち止まると、俺の顔を見た優乃が、くすくすと笑い出す。

「お猿さんみたいに真っ赤ですよ?」
「う、うるせ、早く戻るぞ」
「ふふっ。はーい」

 優乃とふたりして教室に戻る。

 好きだとわかると、それだけで幸せを感じてしまう。
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