終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年1月14-3

「皆さん見苦しい姿ですみません。折れているのは右腕だけなので、あと一週間もすれば戻ります」
　首を下げると痛かった。
　隣に座るレイサスを、追い出すか、自分が席を移動したいけど無理だ。クリスが気にするから寄らないでほしい。

「何があったか、直接オーサーから説明してもらった方がいいと思いますが」
　そうだね。私からも一度ご説明を。だけど起こったことは簡単だ。
　軍の帰りに攫われた。
　ソサイゾが私をコパロファカドの魔法使いだと勘違いしていて、レイサスを飛ばさせようと殴った。
　レイサスたちが助けに来た。
　以上です。

「・・・事実の列挙ではなく、あなたの解釈や気持ちを話してください」
「ソサイゾが手出ししてこなかったのは、私がファリオンを脅しに使っていると、ソサイゾが考えていたせいだとわかった。何かすればこいつは飛ばすと脅されれば、そりゃあ何もできない。結果的に幸運だった」
「だがその勘違いのせいでそんなに殴られた」
　なんでこの状況で顔にさわろうとするかな。たぶん私はものすごく嫌そうな顔をした。

「見た目は派手だけど深刻な怪我はないから。殴られたり蹴られたりするときに後ろに引いて受けたし、やったあの男が上手かった」
「うまい？」
「見た目が派手だけどダメージの少ない攻撃の仕方を選んでいた。骨や臓器まで傷めない絶妙の力加減だった。すごいわ。右腕は折ったけど、きれいに折れてるでしょ？　プロだ」
「・・・」
　皆さんがとても微妙な顔をしているけれど、これは妄想や幻覚ではなく事実です。

「王妃に説教をしたと聞いたが」
　マクシミリアンさんが微妙な表情のまま言った。
「説教・・・暴言、いや喧嘩を売りました。いつか言ってやりたいと思ってたんです。最初で最後の機会だと、言いたいことは全部言えました」
「・・・」

　皆さんがやっぱり微妙な顔だ。王妃だからね。常識があれば言おうと思わないでしょ。私はこの世界の常識がないから言いたかった。
「それで、ソサイゾたちの処遇ですが、決まったんですか？」
「処刑する」
　またレイサスが即答した。
　いやいやいやいやそれじゃ駄目だろう。
　レイサスの説得が最大の難関か。何か欲しいものはないかって聞くくらいなら、私の願いを聞いてほしいよ。