終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年1月1-1

　本当に、本当に大変だった。
　繊細すぎるレースだから、ちょっと切っては解けないようにかがり、ちょっと切ってはかがりって、ぜんぜん進まない。くたくたに柔らかいから型紙を当てるのにも苦労するし、もう二度とこんな生地は使いたくない。私だったら絶対買わない。

　しかし苦労しただけあって、いや苦労しただけ愛着がわいたか、なかなかいい出来だ。少なくともドレス単品は。
　この淡い色の布を重ねたっていうのが成功だね。フレディア様ありがとう。

　布でも何でも、実際に使う人間には好みがあるし、それを無視して選ぶっていうのはよくない。
　高いものをもらってうれしいことはうれしいけど、もらったからには使わないといけないからねぇ。ただより高いものはないわ。

　パーティにはレイサス以外の人と行きたかった。距離が必要。なのに相変わらず近いな。
　会場ではまた人に取り囲まれた。レイサスとダンスをし続けるわけにもいかず、それも避けたい。
　わかった。国王夫妻の側にいればいい。浮かれた人がやってこないだけ楽だ。

　去年はここでキーナさんに会った。
　ソサイゾ公に会ったのか。
　彼はもう存在せず、領地も名前が変わった。王妃と和解し、こうして王子たちも側にいる。
　一年って短いのにずいぶん変わった。

　ここは貴族だけだけど、たぶんすぐに平民も混じるだろう。
　ギラギラ輝く宝石をつけた女性はすっかりいなくなった。それは確実に私のせいだ。
　この美しい人たちはいつまでこうしていられるんだろうか。
　私は滅び行くものを見ている。
　去年のように、映画を見ているような気になった。