終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年3月5-3

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「では私の判断も、一つの事実と認めるな」
「そうですね」
「結婚してほしい。あなたは妃に相応しいから」
 がふっ。彼女たちはまだいるし、人も集まってきているのに、どうしてこんなところでこんなことを言うんだ。

「私にとっての事実は違うようですので」
 彼女たちには申し訳ないが、私は逃げる。が、腕をつかまれた。
「どちらが正しいかは多数決で決めるのか?」
 近い近い近い。
「いいえ。歴史が決めるでしょうね」
「時が経っても正しいのが、あなたにとっての事実か」
「事実・・・事実は星の数ほどあるので、将来どう評価されるかは判断基準の一つです」
「では私の事実とは反しない」
「はあ」
「あなたを妃にすることで、後年の歴史家は私を名君だったと評するだろう」
「・・・どこからか認識にずれが生じているようです」

 今はとにかくここから移動しないと。なんなんだこの後悔処刑。
「次の予定がありますので、失礼します」
 腕は振り払うくらいの覚悟で歩き出そうとしたけれど、やっぱりレイサスは離さず、一番人の多い中央階段に向かって歩き出した。腕を離せ。
「王宮だろう」
 そうなんだけど、ここは見送るぐらいの優しさを見せてほしかった。

 繋いである馬のところまで連れて行かれ、手を組んで差し出すのはやめてほしい。まさか王太子を足台にして乗れないから。まずレイサスが乗ってくれ。私がやるから。
 肩が触れる距離に来て、耳元で囁かれた。
「準備は?」
 ここで、ここで言うことではないでしょう。私を見て、レイサスがすごい笑顔になっている。

 レイサスの馬のところに行って先にレイサスを乗せようとすると、またレイサスに腕をつかまれた。
「抱き上げて乗せた方がいいならそうする」
 あらゆることがまずい。生徒達が見ている前でくっつかないでほしいし、まさか腰を持ち上げて馬に乗せてもらうなんてできないし、かといって王太子の手に足を載せる? 究極の選択を強制しないでほしい。
 自力で乗った。乗れないわけじゃない。無様なだけで。

 ハンクラス校長に早めに、彼女たちには構うなと言っておきたいけど、当分学校には来られない。
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