終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年10月11-4

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「案内も受けずに失礼する。オーサーがこちらにいると聞いたが」
 執務室の奥の部屋まで大股で歩いてきた。コウジュとコウセンも一緒か。

「ここにいる。だが貴殿には、一人でお帰りいただくことになった」
「何を言っておられるか」
「たった今、オーサーは私の正室となり、ソファリスの丞相監査の職に就いた」
 王太子の表情が強張った。契約書を回収する。彼女はまだペンを持ったままだ。

「ともや、何を」
 王太子が彼女に寄る前に、彼女は立ち上がってソファを間に挟んだ。
「申し訳ありません、レイサス様。今の私はソファリスの人間。私は残りますのでお一人でご出発ください」
 礼をしようとし、ペンを持っている事に気づいて人に渡し、その後に優雅に礼をした。

「馬鹿な。一緒に帰るんだ。脅されたのなら言いなさい。どんな手を使っても連れて帰る」
 肩をつかんで言うが、彼女は王太子を見ていなかった。だが最後の言葉で目を合わせた。

「おやめください。私がここに残るのは、その方が有利だからです。双方の国にとって、そして私にとっても」
「あなたを奪われたのなら奪い返す」
 彼女が苛立たしげになった。レイサス王子には表情が動く。

「馬鹿なことを言わないで。何のために働いて、何のために苦労をしてきたと思う? 安定。すべては安定。今日と同じ一日が明日も続いて、今日より少しよくなっているという期待。そういう社会のために出かけたくもないのに出かけ、会いたくもない人に会ってきた。それをこんなことで無駄にしないで」
「あなたがしたんだ」

「決断するのはあなただ、レイサス。私は最も有利な道を選ぶ。するべきことをしている。それを無にするかどうか、決断するのはあなただ」
 きついな。そう言われては何もできない。
 彼女は自分の愛情も必要性があれば殺せる。

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