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Wish6.あたしと
2.
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次の日は少しだけ早く学校へ向かった。
すっかり元気になった体はいつもより軽くて、出来ない口笛でも吹いちゃおうかなって思うぐらい気分がよかった。
早く悠に会いたいな。
校門から下駄箱までは走って向かった。特に意味なんかないけど、そうしたい気分だったから。
「宝条さん!」
「あ、委員長おはよ~!」
るんるんで上履きに履き替えるあたしに猪突猛進で委員長が走って来た。
え、何?どうしたの!?
「今ちょっと大変なんだけどっ」
「何かあったの?」
こんな取り乱した委員長見たことない。ハァハァ言いながら、肩で息をしてる。
「今、今ね…っ」
「う、うん」
何を言われるのかあたしまでドキドキして来ちゃった。
「悠が本郷先生に呼ばれてっ」
「えっ、なんで!?」
って聞いたけど、だいたいなんで呼ばれるかはわかってる。よく呼び出しはされてた。行ってなかったけど。
だからこの“なんで!?”はどちらかと言えば“なんでわざわざ行ったの!?”って言う方が正解かもしれない。
でもそんなことよりも驚いたのが委員長の次の言葉。
「悠のお父さんも来てるんだ!」
「えっ、お父さん!?」
悠のお父さん!?あのお父さん…!?
自分には興味がないって言ってたお父さんが…
本郷先生に呼ばれたのかな?
なんで、どの話!?
ありすぎてわからない!
「だから今から進路指導室に行こうと思うんだけど、宝条さんも一緒に行かない?」
「行くっ!!!」
委員長が言い終わるか終わらないかのうちに即答えた。
リュックを背負ったまま、全速力で進路指導室まで委員長と走って向かった。
「いい加減にしろよっ、その態度は何なんだ!」
あたしたちの教室とは別のところにある進路指導室、外にまで本郷先生の怒鳴る声が聞こえた。
「なんだその目付きは!俺は教師だぞ、お前の事なんかどうとでもっ」
今この中がどうなってるのかわからない、状況なんてそんなのどうでもいい、悠のお父さんが来てるかもしれないけどそんなの関係なくてガラッと勢いよくドアを開けた。
「悠…っ」
ギロッと鋭い目をした本郷先生がこっちを見た。
「…っ」
ビクッて震えた。
「宝条…、ちょうどいいお前にも言っておかないとな」
本郷先生の前には悠が立っていた。
あたしが来たところで何の助けにもならないことはわかってる。
わかってるけど…
てゆーか悠のお父さんは!?
いないんだけど!!
気付いたら隣を走ってた委員長もいなかった。
どこ行ったの!?ちょっとっ!!!
はぁっと本郷先生が息を吐いた。
「お前らはどれだけ周りに迷惑かけてるのかわかってないようだな」
静かに重く、もう一度ゆっくり息を吐いた。
「知ってるか?みかんは1つ腐り出すと周りのみかんもそれに影響されてどんどん腐って行くんだよ。だからそうならないためにも早めに捨ててやらなきゃいけない」
何それ?何を言ってるの?
ふつふつとあたしの中で嫌な感情が生まれる。
今にも吹き出そうなくらい、黒くていらない感情。
右の口角を上げた本郷先生が悠の方を見た。
「分かりやすく説明してやったんだ、分かるよな?」
…最悪。
何なの、何がわかりやすくって?
最悪!最低!
最低っ!!!
「全ッ然わかりませんっ!!!」
自分でも初めて聞いた、あたしってこんなに大きな声が出せたんだ。
「全然わからないです!そんなのわからなくてもいいです!だって悠はそんなんじゃない、悠は本当は優しいし、約束したら守ってくれるし、みんなが思ってるような人じゃない!…ちょっとうまく出来ないだけだもん、自分の思ってること言うのがちょっとうまく出来ないだけだもん…っ」
やばい、瞳が熱い。
泣いちゃう。
泣いてもどうしようもないのに涙が出ちゃいそう…っ
「宝条さん…っ!」
すでに開いていた進路指導室のドアからやっとやって来た。
「委員長~~~~!どこ行ってたの!?遅い~~~~~!!!」
「ごめん、井川先生呼びに行ってた!」
その後ろにいっちゃんがいた。
あと、悠のお父さん。
「本郷先生、相沢くんのお父さんを呼んできましたよ」
コツコツと音を立てながら悠のお父さんが進路指導室に入って来た。
ピシッと着たスーツ姿はあたしを緊張させた。
「息子が失礼しました」
悠より全然もっともっと低い声だった。
「今日は息子の素行の悪さについてだと伺っております」
さっきとは全く空気が変わった。
しーんとした張り詰めた空気にあたしの涙も止まった。
悠は俯いていた。
「…そうですね、再三注意しても聞かないもので。その瞳も髪の色も、他の生徒に示しが付かないんですよ。勝手なことをされては、ここは学校、教育の場ですからね」
本郷先生がスラスラと話してる、さっきあたしたちを見る目とは全然違っていた。
どっちでも最悪だけど。
だってそれは悠悪くないもん。
「…はい、その通りです」
なのに、どうしてお父さんまでそんなこと言っちゃうのかな。
ずっと俯てる悠が今どう思ってるか、なんでみんなわからないの…
「何度も本郷先生から指摘され、何度も指導して頂いたと、先ほど井川先生よりお聞きしました。瞳のこと、髪のこと、何度も…」
……。
「息子は否定したとも」
………え?
今、…?
「以前もお話したはずです、生まれつきのものだと」
ちゃんと話してくれててんだ、お父さん。
じっと本郷先生を見る悠のお父さんの瞳の色は違ったけど、やっぱりよく似ていた。
「本郷先生、僕も何度もお話しましたよね。嘘なんて付いてないって」
そーえいばいっちゃんは瞳のことや髪の色のことで悠に怒ったことなかった。
なんだ、わかってくれる人は他にもいたんだ。
信じてくれてたんだね。
「だから、本郷先生。相沢くんに謝ってください」
本郷先生はバツの悪そうな顔をしていた。
まさかこんなことになるとは思ってなかったんだと思う。いつも頭ごなしに決めつけて、誰の前でも怒ってたから。
「ここは学校、教育の場ですからね」
いっちゃんにそう言われて、頭を下げる本郷先生が見られるなんてあたしも思ってなかった。
本郷先生が逃げるかのように出て行った進路指導室はあたしと委員長といっちゃん、悠と悠のお父さんという不思議な空間ができてしまった。
あたしここにいていいの?
あたしも出ていくべきだったかな?
でも委員長もいるし、出ていくタイミング失っちゃったっていうか…
「なんでもっと早く言わないんだ!」
今度は悠のお父さんの怒鳴る声が響いた。
さっきまであんなにクールに喋ってたのに、そんな声も出るんだってビックリしちゃった。
悠のことをキッと睨むように、その視線がますますあたしの場違いを感じさせる。
「俺のことなんかどーでもいいくせに」
フンッとわざとそっぽ向くような仕草を見せ、顔をそむけた。
「瞳や髪はともかく、素行が悪いのは先生のおっしゃる通りだからな!もっと勉学に励め!!」
それは確かに、おっしゃる通り。
これにはいっちゃんも苦笑いしてる。
てゆーかお父さんは空気だって言ってたけど全然そうは感じなくて、聞いていた話よりだいぶ違和感だった。
「どうしていつもそうなんだ、大事なことは言わない!」
…それも、そうだよね。
でも言わないんじゃないんだよ、言えないんだよ。
わかってあげてよ、お父さんなら。
わかってあげて…
「…本当は真菜と暮らしたいならそう言えばいい」
「「え?」」
ちなみにこれはあたしと委員長の声。
なぜかあたしたちの声がハモっちゃった。
だってそれは想定外過ぎたから。
気付いてないお父さんはどんどん話を進めていく。
「真菜といては悠が傷付くだけかと思っていたけが、母親と一緒にいたいと思うのは当然のことだ。悠がそうしたいと思うなら、…出て行ってもいい」
何かを悟ったかのように、悠のお父さんはそっぽ向く悠の方を見つめていた。
その瞬間、カンッと跳ね返って来た。
「思ってねぇよそんなこと!それはお前が俺のこと邪魔だと思ってるからだろ!?」
やっと悠とお父さんが目を合わせた。
「そんなわけないだろっ!」
「ふざけんなよ!テキトーなこと言ってんじゃねぇよ、今までどんだけ無視して来たんだよ!」
「それは何も言わないからだろ!いっつも何も言わないからこっちは心配してたんだぞっ!!!」
「何がっ」
「落ち着いてください…っ!」
言い合う2人の中にいっちゃんがスッと手を出して止めに入った。
「まぁまぁ、落ち着いて。お父さんもそんな熱くならず」
「…申し訳ないです」
悠のお父さんをなだめ、ぽんっと悠の肩を叩いた。
「今日は一度帰って、お父さんと話すのがいいんじゃないかな。きっと今まで知らなかったこともあると思うよ」
いっちゃんはちょっと頼りないなんて思ってたけど、やっぱり先生だね。すっごく頼りになる。
それに、いっちゃんの笑顔を見ればみんな癒されるから、いっちゃんが担任の先生でよかったよね。
「宝条さんも並木くんも、朝の階始まるから教室に戻って」
すっかり元気になった体はいつもより軽くて、出来ない口笛でも吹いちゃおうかなって思うぐらい気分がよかった。
早く悠に会いたいな。
校門から下駄箱までは走って向かった。特に意味なんかないけど、そうしたい気分だったから。
「宝条さん!」
「あ、委員長おはよ~!」
るんるんで上履きに履き替えるあたしに猪突猛進で委員長が走って来た。
え、何?どうしたの!?
「今ちょっと大変なんだけどっ」
「何かあったの?」
こんな取り乱した委員長見たことない。ハァハァ言いながら、肩で息をしてる。
「今、今ね…っ」
「う、うん」
何を言われるのかあたしまでドキドキして来ちゃった。
「悠が本郷先生に呼ばれてっ」
「えっ、なんで!?」
って聞いたけど、だいたいなんで呼ばれるかはわかってる。よく呼び出しはされてた。行ってなかったけど。
だからこの“なんで!?”はどちらかと言えば“なんでわざわざ行ったの!?”って言う方が正解かもしれない。
でもそんなことよりも驚いたのが委員長の次の言葉。
「悠のお父さんも来てるんだ!」
「えっ、お父さん!?」
悠のお父さん!?あのお父さん…!?
自分には興味がないって言ってたお父さんが…
本郷先生に呼ばれたのかな?
なんで、どの話!?
ありすぎてわからない!
「だから今から進路指導室に行こうと思うんだけど、宝条さんも一緒に行かない?」
「行くっ!!!」
委員長が言い終わるか終わらないかのうちに即答えた。
リュックを背負ったまま、全速力で進路指導室まで委員長と走って向かった。
「いい加減にしろよっ、その態度は何なんだ!」
あたしたちの教室とは別のところにある進路指導室、外にまで本郷先生の怒鳴る声が聞こえた。
「なんだその目付きは!俺は教師だぞ、お前の事なんかどうとでもっ」
今この中がどうなってるのかわからない、状況なんてそんなのどうでもいい、悠のお父さんが来てるかもしれないけどそんなの関係なくてガラッと勢いよくドアを開けた。
「悠…っ」
ギロッと鋭い目をした本郷先生がこっちを見た。
「…っ」
ビクッて震えた。
「宝条…、ちょうどいいお前にも言っておかないとな」
本郷先生の前には悠が立っていた。
あたしが来たところで何の助けにもならないことはわかってる。
わかってるけど…
てゆーか悠のお父さんは!?
いないんだけど!!
気付いたら隣を走ってた委員長もいなかった。
どこ行ったの!?ちょっとっ!!!
はぁっと本郷先生が息を吐いた。
「お前らはどれだけ周りに迷惑かけてるのかわかってないようだな」
静かに重く、もう一度ゆっくり息を吐いた。
「知ってるか?みかんは1つ腐り出すと周りのみかんもそれに影響されてどんどん腐って行くんだよ。だからそうならないためにも早めに捨ててやらなきゃいけない」
何それ?何を言ってるの?
ふつふつとあたしの中で嫌な感情が生まれる。
今にも吹き出そうなくらい、黒くていらない感情。
右の口角を上げた本郷先生が悠の方を見た。
「分かりやすく説明してやったんだ、分かるよな?」
…最悪。
何なの、何がわかりやすくって?
最悪!最低!
最低っ!!!
「全ッ然わかりませんっ!!!」
自分でも初めて聞いた、あたしってこんなに大きな声が出せたんだ。
「全然わからないです!そんなのわからなくてもいいです!だって悠はそんなんじゃない、悠は本当は優しいし、約束したら守ってくれるし、みんなが思ってるような人じゃない!…ちょっとうまく出来ないだけだもん、自分の思ってること言うのがちょっとうまく出来ないだけだもん…っ」
やばい、瞳が熱い。
泣いちゃう。
泣いてもどうしようもないのに涙が出ちゃいそう…っ
「宝条さん…っ!」
すでに開いていた進路指導室のドアからやっとやって来た。
「委員長~~~~!どこ行ってたの!?遅い~~~~~!!!」
「ごめん、井川先生呼びに行ってた!」
その後ろにいっちゃんがいた。
あと、悠のお父さん。
「本郷先生、相沢くんのお父さんを呼んできましたよ」
コツコツと音を立てながら悠のお父さんが進路指導室に入って来た。
ピシッと着たスーツ姿はあたしを緊張させた。
「息子が失礼しました」
悠より全然もっともっと低い声だった。
「今日は息子の素行の悪さについてだと伺っております」
さっきとは全く空気が変わった。
しーんとした張り詰めた空気にあたしの涙も止まった。
悠は俯いていた。
「…そうですね、再三注意しても聞かないもので。その瞳も髪の色も、他の生徒に示しが付かないんですよ。勝手なことをされては、ここは学校、教育の場ですからね」
本郷先生がスラスラと話してる、さっきあたしたちを見る目とは全然違っていた。
どっちでも最悪だけど。
だってそれは悠悪くないもん。
「…はい、その通りです」
なのに、どうしてお父さんまでそんなこと言っちゃうのかな。
ずっと俯てる悠が今どう思ってるか、なんでみんなわからないの…
「何度も本郷先生から指摘され、何度も指導して頂いたと、先ほど井川先生よりお聞きしました。瞳のこと、髪のこと、何度も…」
……。
「息子は否定したとも」
………え?
今、…?
「以前もお話したはずです、生まれつきのものだと」
ちゃんと話してくれててんだ、お父さん。
じっと本郷先生を見る悠のお父さんの瞳の色は違ったけど、やっぱりよく似ていた。
「本郷先生、僕も何度もお話しましたよね。嘘なんて付いてないって」
そーえいばいっちゃんは瞳のことや髪の色のことで悠に怒ったことなかった。
なんだ、わかってくれる人は他にもいたんだ。
信じてくれてたんだね。
「だから、本郷先生。相沢くんに謝ってください」
本郷先生はバツの悪そうな顔をしていた。
まさかこんなことになるとは思ってなかったんだと思う。いつも頭ごなしに決めつけて、誰の前でも怒ってたから。
「ここは学校、教育の場ですからね」
いっちゃんにそう言われて、頭を下げる本郷先生が見られるなんてあたしも思ってなかった。
本郷先生が逃げるかのように出て行った進路指導室はあたしと委員長といっちゃん、悠と悠のお父さんという不思議な空間ができてしまった。
あたしここにいていいの?
あたしも出ていくべきだったかな?
でも委員長もいるし、出ていくタイミング失っちゃったっていうか…
「なんでもっと早く言わないんだ!」
今度は悠のお父さんの怒鳴る声が響いた。
さっきまであんなにクールに喋ってたのに、そんな声も出るんだってビックリしちゃった。
悠のことをキッと睨むように、その視線がますますあたしの場違いを感じさせる。
「俺のことなんかどーでもいいくせに」
フンッとわざとそっぽ向くような仕草を見せ、顔をそむけた。
「瞳や髪はともかく、素行が悪いのは先生のおっしゃる通りだからな!もっと勉学に励め!!」
それは確かに、おっしゃる通り。
これにはいっちゃんも苦笑いしてる。
てゆーかお父さんは空気だって言ってたけど全然そうは感じなくて、聞いていた話よりだいぶ違和感だった。
「どうしていつもそうなんだ、大事なことは言わない!」
…それも、そうだよね。
でも言わないんじゃないんだよ、言えないんだよ。
わかってあげてよ、お父さんなら。
わかってあげて…
「…本当は真菜と暮らしたいならそう言えばいい」
「「え?」」
ちなみにこれはあたしと委員長の声。
なぜかあたしたちの声がハモっちゃった。
だってそれは想定外過ぎたから。
気付いてないお父さんはどんどん話を進めていく。
「真菜といては悠が傷付くだけかと思っていたけが、母親と一緒にいたいと思うのは当然のことだ。悠がそうしたいと思うなら、…出て行ってもいい」
何かを悟ったかのように、悠のお父さんはそっぽ向く悠の方を見つめていた。
その瞬間、カンッと跳ね返って来た。
「思ってねぇよそんなこと!それはお前が俺のこと邪魔だと思ってるからだろ!?」
やっと悠とお父さんが目を合わせた。
「そんなわけないだろっ!」
「ふざけんなよ!テキトーなこと言ってんじゃねぇよ、今までどんだけ無視して来たんだよ!」
「それは何も言わないからだろ!いっつも何も言わないからこっちは心配してたんだぞっ!!!」
「何がっ」
「落ち着いてください…っ!」
言い合う2人の中にいっちゃんがスッと手を出して止めに入った。
「まぁまぁ、落ち着いて。お父さんもそんな熱くならず」
「…申し訳ないです」
悠のお父さんをなだめ、ぽんっと悠の肩を叩いた。
「今日は一度帰って、お父さんと話すのがいいんじゃないかな。きっと今まで知らなかったこともあると思うよ」
いっちゃんはちょっと頼りないなんて思ってたけど、やっぱり先生だね。すっごく頼りになる。
それに、いっちゃんの笑顔を見ればみんな癒されるから、いっちゃんが担任の先生でよかったよね。
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