聴かせてよ、ラブソング。

めぇ

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LOVE2.TOMORI/惑わしてよ、Sick song

Song5.)

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結局おみやげは買わなかった。

ガリガリ君は買えるんだけど、キーホルダーは…買うのに躊躇しちゃった。


折原さんは買ったのかな?
あのキーホルダー。

折原さんは誰のこと思って買ったのかな…  


課外研修が終わったらもうすぐ中間テストがある、中間テストが終われば文化祭でその話し合いはまだ途中だった。

今日の部活はその文化祭で歌う曲決め、何がいいかな~…

そんなこと考えながら階段を上った。
部室までの道のりは長いから、物事考える時間多くなっちゃって。

やっと着いた部室の前、何も聞こえて来なくて今日もまだ誰もいなさそうだった。

また1番に来ちゃったのかな、やっぱり張り切ってるみたいじゃっ

「あ、開いてる」

ドアに手をかけてみると鍵はかかっていなかった。じゃあ誰かいるんだ、と思ってドアを開けてみても誰もいなくて相変わらずもわっとした空気が不快だった。

先に窓だけ開けて待ってよ、そのうちみんな来るよね。

窓を開けて顔を出す、涼しい空気に触れたくて。

9月の後半になったところ、たまに涼しい日も出て来てずっと暑い日ばかりじゃなくなって来た。

…ここの窓を開けても見えるのは反対側の校舎なんだよね。グラウンドが見えるわけでも、自然な景色が見えるわけでもないから、全然アンニュイな気分にもならないな。

「………。」

すーっと息を吸った、目をつぶって頭の中で奏くんのギターの音を思い出すように静かに声を出した。

聴きなれたあのメロディーを、自分で紡いだ声で。

1番離れた場所にあるから誰にも聞こえない、ここまで来るのに遠いって思ってたけどこんな時いいかもしれないなぁ…なんて思いながら。

「…~♬」

…でもちょっと恥ずかしいかもしれない。

自分が書いた歌詞を口ずさんでるって、なんか心臓がきゅってする。

赤くなった頬を両手で隠すように抑えた。
別に誰もいなんだけど、なんか恥ずかしくなっちゃって。

「………、はぁ」

なのに今度は急に力が抜けて、両手を下ろせば連動したかのようにストンっと肩が落ちる。  

上がったり下がったりだ、自分でもどうコンロトールしたらいいのかわかんないぐらい。

「新曲の歌詞かぁ、どうしよっかな…」

前の時は止まらなくて一夜漬けで書いた。無我夢中で、思うがままに表現した。

今だっていろんなものが浮かんで来るんだけど…それを言葉にして歌詞にするのって難しいよね。

プロでもなんでもないからなぁ、私。 
今までやった来たわけでもないし、ほぼノリだし。

頬杖をついて窓の外をじーっと一点を見つめるように見て。何を見ているわけでもなく、何のピントも合わない状態でじーっと。

どうしても自分の気持ちが入ってしまう、それしか書き方がわからないから。

“ともりんってもっと変わった子なのかと思ってたら、シンプルに不運な人なんだね”

私もそう思ってた。

なんてツイてないんだろうって、でも…


あれがなかったら今こうしてないんだ。


だからきっとあれは不運じゃなくて幸運だったよ。


そんな風に思えちゃうぐらい好きなんだよ。 



好きだって言ったらダメなのかな?

好きだって言ってもいいのかな?



ねぇ、伝えても…いい?



なーんて、私に言えるわけないんだけど。

おみやげにキーホルダーだって買えないんだからね、そんなこと全然無理だよ。

「…てか今日って部活あるでいいんだよね?」

しーんとしたままの部室が気になって、窓の外を見るのをやめて振り返った。誰も来る気配がなくて不安になる。

「ん、あれって…」

窓を開ける時に長机の上にスクールバッグを置いちゃったから死角になって気付かなかった。部室は空いてたし、やっぱり一度ここへ来てたんだ。

「これ奏くん家の鍵だ!」

ぽんつんと置いてあった鍵、付いていたキーホルダーに見覚えがあったから。

木で作られたひまわりの花の部分だけくり抜かれた、ところどころ傷のある年季の入ったキーホルダーはしっかり覚えてる。 

花びら削れてなくなるまで使ってるなんてよっぽど気に入ってるんだろうなーって…

明るいとこで見るとより傷が目立つな、あの時は暗かったからひまわりの形もう成してないなぐらいに思ってたけど金具の部分も変色しちゃってるし。

それほど長く使ってるんだ、これ。

「でも家の鍵置きっぱなしってどーなの?ダメじゃない?」

なんてゆーかのほほんってしたところがあるから、こーゆうの気にしないっていうか気付かないっていうか…また他の物と出て来ちゃってそのままとかって感じなんだろうね。

「しょーがないなぁ、預かって…」

鍵の部分を持ちながらひまわりを見ていた。

奏くんが来たら渡してあげっ


「あ、鍵!」


だけど、鍵を探していたのは奏くんじゃなかった。

「よかった、ここにあったんだ」

勢いよく開いたドアの向こう、私の持っている鍵を指差した。

「これ…、折原さんの?」

似たようなものはあるかもしれない、鍵だってキーホルダーだって。

「そうだけど」

でもあのキーホルダーはあの夜、私が拾ったキーホルダーにしか見えなくて。


奏くんが持ってたキーホルダーだった。


なのに、どうしてそれを折原さんが?


いくら幼馴染みでも、そんなの…


「もらっていい?それ」

「あ、うん!ごめん、はいっ!」

折原さんの手の上に鍵を置いた。 

きゅっと握りしめた鍵を折原さんがスクールバッグの中に入れる。


本当にあれは折原さんのなんだ…
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