聴かせてよ、ラブソング。

めぇ

文字の大きさ
51 / 51
LOVE6.TOMORI/聴かせてよ、Love Song

Song2.)

しおりを挟む

「久しぶりの路上ライブ緊張する…!」

あれから数日後、年末も近くなった頃ついに開催されることになった夏休み以来の駅前。

暑かった夏休みと比べて寒いし、口が動くかちょっとだけ不安…


よりも何よりも!


「規模全然違くない!?前回はアンプとかマイクなかったじゃん!?今回なんか本格的じゃない!?」

いつもは奏くんのギター1本のみだった。
てゆーか歌わない奏くんからしたらそれ以外のものはいらなくて、そもそも聞かせる気もないのから思えばアンプさえもなかった。

「だってせっかく灯璃から誘ってくれたんだもん、ちゃんとしたいじゃん」

「それはそーだけど…」

すでに後悔し始めたかもしれない…
こんな大掛かりになるとは思ってなかったんだもん。

だってこの様子に人がちらほら集まって来てるんだもん…!

「だって路上ライブするには許可が必要なんだよ」

「え、そうなの!?」

「そうだよ、灯璃知らなかったの?」

「全然知らなかった…です」

そーなんだ、勝手に歌っちゃダメなんだ…
みんなテキトーにやりたい時にやってるのかと思ってた。

「道路交通法とかいろいろあるからね、警察署に許可もらったりしなきゃいけないの」

準備をしながら奏くんが教えてくれた。
私は何もしてない、ということは今日までの準備全部奏くんがしてくれたんだ。

言い出すだけ言い出しといて私は…!

「はい、これ灯璃のマイク」

「あ、ありがとう!ごめんね、私何も知らなくてっ」

「俺楽しみにしてたから」

「え…?」

「灯璃の歌!楽しみだったから!」

渡されたマイクを握りしめる。

緊張で張り裂けそうだった胸が心地よいリズムに変わった。


この緊張、たぶん私は好きなんだ。


「奏―!灯璃ちゃーん!来たよ~~~~!!」

「駿ちゃん先輩!ら、らんらんも!」

「は、恥ずかしいからやめてくれない!?その呼び方!」

「でも私だけあだ名で呼ばれるのも…っ」

「可愛いからいいじゃない…、ともりんはっ」

折原さんが顔を赤くしたのが伝わって私まで赤くなっちゃった。

「なんじゃそれは!2人とも可愛いかよっ!!!」

誰より大きな声で駿ちゃん先輩が突っ込んだ。それもそれでなんだか恥ずかしい。

「駿二!来てくれてありがとう、もうすぐ始めるから」

「おぅ!てかこんなとこでやってんだな!?結構やばくない?俺お腹痛くなりそうだわ!」

「なんで駿二先輩が緊張してるんですか?」

「しない!?するよね、思ってるよりここ目立つよ!?」

前は全然気にならなかったんだけど、今日はスタンドマイクにアンプに自前のスポットライトまで用意されて演奏する前から注目を浴びてる。

今までどんだけ奏くんがひっそりやって来たのがわかるくらいに。

「藍も、ありがとう」

「…うん」

「聴いてってよね、俺の作った曲!」

「うん、楽しみっ」

ジロジロとこっちを見ている人がいて、何が始まるのか気になってる人もいる。そろそろ時間かな。

「じゃあ俺らあの辺で聞いてるわ!行こ、藍ちゃん!」

「はい。あ、しなのも後から来るって言ってたから!」


時間は7時半、私と奏くんのステージが始まる。


「灯璃、今日の曲なんだけど」

「大丈夫!ばっちり覚えて来たから!」

なんて言わなくても、飽きるほどに聴いてるんだけど。奏くんの作った曲は嫌になるほど聴いてる、嫌になったことなんかないけど。

「あ、これ新曲ね」

「え、新曲!?」

「うん、この日のために書き下ろした」

「とんでもないサプライズありがとう!!でもできたらもっと早めに言ってくれるかな!?私にも準備がね!?」

「灯璃なら大丈夫だよ」

「…っ」

そんな顔で言わないでよ。

そんな愛しい笑顔で見ないでよ。


だって奏くんに言われたらなんだってできる気がしちゃうよ?


「テキトーに歌詞並べて」

「無茶振り相変わらずだよね…」

まぁでも仕方ないか。

そんな奏くんが好きなんだから。

「じゃあ始めようか!」

「うん!」

ギターを持った奏くんの隣に並ぶ。

マイクを持ってすぅっと息を吸って深呼吸をして。


今から始まるんだ。

奏くんと目を合わせたら。


自分には何もないと思ってた。

友達さえ上手く作れなくていつも1人だった。
 

それでもいいって思いながら、いつも探してたんだ。

自分にもあるかもしれない何かを。



でも実際見付かったかよくわかんないんだけどね。



でも1つ言えるとするなら、何も持ってなかった私にできることがあるとするならば…




奏くんの音を誰より輝かすことができるのは私。




私ほんとはね、ものすごく歌が上手いわけじゃないよ。


上手く聞こえてるだけだよ。




奏くんの作った曲だからそう聴こえるの。



奏くんの曲だから…




これは誰にも譲らない、私のものだよ。



その自信だけはあるよ。




“あまりに俺の曲にピッタリな声してたから、俺のものかと思っちゃった”


あの日からずっと奏くんのものだから。





「灯璃、歌ってよ」






だから聴かせてよ、私だけのラブソングを。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

処理中です...