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NEXT2.学校生活は私を困らせる)
trouble4.)
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キャァーーーーーっ♡♡
今日も歓声がすごい、4時間目の体育。
男子がバスケをしてるから。
「「「斗空くんカッコいい~!!!」」」
どこもかしこも斗空のこと見てるんじゃないかってぐらい、思ってた以上に人気なんだ斗空…
「あ、シュート決めた!」
「汗さえもきらびやかだよね」
「私もシュートされたい…♡」
え、文章の意味よくわかんないんだけど?
とにかく鞠乃ちゃんもみんなも夢中らしい。
ちなみに女子の体育は体育館のコート半分を使ってバレー、なんだけど他のチームが試合中のバレーよりも男子のバスケしか見てないたぶん。
体育館の隅っこにまとまって座りながらバスケ見て喋ってるからね。
「やっぱ斗空くんが断トツだよね♡」
「でも智成くんもよくない?」
「あー、関西弁がねいいよね!あと優しいし!」
…ふーん、2人とも人気なんだ。
そんな2人が揃っちゃってるんだ。
「こないだ智成くんに今日誕生日なんだって言った子なんて耳元でバースデーソング歌ってもらったらしいよ!」
え、何してんのあの人。
「それで最後に、生まれて来てくれてありがとう…♡って」
キャーッ♡って何層にもなった黄色い声が響くんだが、それいいの?私にはよくわかんない。
でも言いそう、智成くんなら言いそう!
「あ、ねぇねぇ歩夢ちゃん!今度一緒に遊ぼうよ!」
女子の話の展開は速い、急カーブを曲がって話がやって来た。
でもその話、もう一度聞かせて!
「歩夢ちゃん暇だったら一緒に遊ばない?」
「遊ぶ!」
もう一度聞きたかったけどはやる気持ちが抑えきれなくて食い気味に返事をしちゃった。
「今週の土曜日は?空いてる?」
「空いてるよ!すっごく空いてる!」
「本当?よかった、近くに可愛いクレープ屋さんあるの!行こうよ!」
遊びに誘われた、ここで出来た初めての女の子の友達と遊ぶ約束…!
「うん…!!」
嬉しい!!!
「しまった、梅雨なの忘れてた…!」
週末の約束ができて浮かれてた学校帰り、下駄箱まで来て気付いた。
雨ザーザーだ。
朝は降ってなかったから傘持って来てないや、どうしよ~…
結構降ってるよね。
食堂はこっちだから夕飯にはまた学校来なきゃだけど、でもまだ夕飯まで2時間以上あるし暇だし1回帰りたい…
「走って帰ろうかな」
「無理だろ」
え?
何気なく呟いた私の一言に何の間もなく返事が帰って来た。
「こんな雨の中何考えてたんだ」
「斗空!」
「風邪引いておしまいだぞ」
同じクラスだもん、もちろん帰る時間も同じになる。部活してる子もいるけど、帰宅部は授業終わったら帰るだけだから。
パサッと斗空が傘を開いた、真っ黒な無地のなんとなく斗空っぽい傘を。
傘ちゃんと持って来てたんだ、えらいなぁ。朝ちゃんと天気予報見るタイプなんだね。
「ん」
「え?」
アイコンタクトで何か訴えて来る。
何が言いたいのかわからなくてきょとんとしちゃった。
「帰るんだろ」
「え?」
そう言われてもきょとんとしちゃったけど。
だって、それは…
「一緒に帰るってこと!?」
相合傘っ!!?
「…どこに驚いてんだよ」
なんでそっちが顔をしかめるの!?どこに不機嫌にさせる要素があったかわからない!
「どーせ傘忘れたんだろ」
「…どーせって、そうだけど」
「帰るぞ」
傘をさした斗空が学校の外に出た。ボトボト傘に当たる音でどれぐらい雨が降っているのかよくわかる、傘なしでは帰れないなって感じさせる音がする。
「早く来いよ」
少し先を行く斗空が振り返って私を呼ぶ。
「……うん」
なんだか恥ずかしくて、顔を見られなかったけど雨だしね。
うん、傘の下だから。
見なくてもいいか。
「歩夢、もっと近付けよ濡れるだろ」
「ちょっと変なこと言わないでよ!」
「言ってねぇよ!」
寮に着く頃にはもっと雨はひどくなっていた。
「わ~~~、やっば!」
「すげぇな今日の雨は」
ちょうどよかったかも、あれ以上学校にいたら本当に帰れなくなってたかもしれない。
空もめちゃくちゃ暗いし、まだ降るのかな。
―バリバリバリィッ
「わぁぁっ」
外の状況が気になって玄関のドア越しに覗こうと思ったら落ちたんじゃないかってぐらい大きな音がした。そこからまた激しい音は増してザーッと隙間なく雨が降り出した。
え、やば…
本当に帰って来れてよかった。ギリギリ寮に着いて…これはちょっと危なかった。
―バリバリィッ
「わぁっ」
カミナリの音すご過ぎる…!
大丈夫なのかな?これ落ちたりしないの?
木には落ちやすいって言うよね…
そぉーっとドア越しに空を見た。
「……。」
うわーめっちゃピカピカしてるー
ピカピカすると時差でしばらくしてから音が鳴るかっ
あぁっ、今鳴った!
すっごい大きい音なった!!
ブルルッて体が連動してるみたいに震えた。
もう部屋行こ、早く部屋の中入ろ!!
「歩夢?」
「雨すごいね、早く部屋行こっか!」
そうだ、部屋にはさっちゃんが貸してくれたシフォンもいるし好きな漫画読んで気分紛わそう。
階段を上がって2階の廊下を真っ直ぐ、奥の左側の私の部屋まで。
きっとそのうち止むし、ちょっとの間だから。
ドアノブに手をかけて、ゆっくりドアを開ける。たまにブルッて震える体に手が滑りそうになったけど。
部屋の中に一歩足を踏み入れた。
「歩夢!」
「え?」
グイッと腕を引っ張られた。
その瞬間、斗空と目が合った。
泣きそうになってる目を、見られちゃったかも。
「来いよ!」
「え!?」
グーッと手を引かれバタンッとせっかく開けたドアは閉まってしまった。
「え、ちょっと!?何?何なの!?」
何も言ってはくれなくて。
ぐいぐいと斗空の力にかなうはずもなく、そのまま斗空の部屋…
「えぇ!?ちょっ、何考えてっ」
…の前まで連れて来られた。
斗空の部屋の前?
「そこでちょっと待ってろよ」
「……。」
斗空だけ部屋の中に行ってしまった。
………え?なに?
待ってろよと言われたから青色のドアの前で待つこと数分後、ガチャガチャとドアノブが開けにくそうに回った。
え、開かないのかな?
こっちから開けた方がいい?
「わっ何!?」
もたついて開かなかったドアを押してみるとポットやら毛布やらいろんなものを抱えて出て来た。
「どうしたのっ、何!?」
「これケトル、お湯沸いてるから」
「え、うん」
「気を付けて持てよ」
渡されたから受け取るしかなくて、何が始まるんだ?と頭の中はクエスチョンマークだらけだったけど…
サッと廊下にレジャーシートを敷き始めたから。
「何するの!?」
「他人の部屋に入るのは禁止だからな」
そのルールは聞いた、ここは男女兼用の寮でもあるし。
「いや、そんなのわかってるけど!何してるのって聞いてるの!」
持って来た毛布をその上に置いて立ち上がった、私の前に立って声をあげる。
「そんな顔の歩夢ほっとけねぇーって言ってんだよ!」
「…!」
そ、そんなハッキリと…
私こそそんな顔で見られたら、顔が熱くなる。
「座れよ、クッションも持って来たから」
「…レジャーシートなんてよく持ってたね」
「これは春の遠足で使ったやつ」
へぇー、春の遠足なんてあったんだ。
「寒いだろ、毛布使えよ」
全然寒くなくなったけど、雨に濡れて寒かったはずなんだけどもう全然。
体も顔も、熱くて全然…
「あとこれ、タオル」
「あり、がとう」
ドキドキしてる心臓が。
ただタオルを受け取っただけなのに、きゅぅって心臓を掴まれたみたいに。カミナリの音よりもうるさいよ。
「お茶でいい?」
「う、うん…!」
ケトルで沸かしたお湯であったかいお茶を入れてくれた。
「斗空の部屋なんでもあるんだね」
ものの数分でこれだけ出て来るんだ、何があってもいいように普段から備えてるみたいな。
「普通じゃないか?」
「普通ではないと思うよ」
用意してくれたレジャーシートの上に置かれたクッション、クッションも私の部屋にはないなぁって思いながら腰を下ろした。
「だって毛布とかお茶とかレジャーシートまで出てくると思わないよ、ほんとに遠足じゃん」
「おやつはないから」
確かにこれでおやつまであったら本当に遠足…
「あ、私持ってるよ!」
そーいえばこっち来る時、家にあったの持って来たんだ!まだ食べてないから残ってる!
「ちょっと待ってて!」
自分の部屋に入って秒で戻って来た。じゃーんっと箱を前に出して箱を見せる。
「チョコパイ!」
賞味期限まだ先だし、お茶やもろもろのお礼にって持って来てみた。自分が食べたかったってのはもちろんあるんだけど、一応私も何か返したくて。
「はい、あげる!」
斗空の前にしゃがみ込んで、開けた箱からチョコパイを1つ渡した。
―バリバイバリィ…ッ
「きゃぁぁっ」
今までで1番大きな音が鳴った。
地響きみたいな音がして本当に落ちたんじゃないかって、つい体が保っていられなくて…
「「……。」」
斗空の胸に、抱き着くみたいに。
座っていた斗空に肩の上に手を乗せるように抱きしめて。
パチッと目が合っていた。
めちゃくちゃしっかり合っていた。
一瞬自分でも状況がよくわからなかった。
「わぁあっ、ごめん!違うの、あの…っ!」
慌てて離れたけどテンパって何を言ってるのか何を言えばいいのか…!
―バリバリバリィッ
「きゃぁっ」
次の言葉を言う前にカミナリの方が鳴ったから咄嗟に両手で耳を押さえた。少しでも音が聞こえにくくなるように、きゅーっと力強く抑えて耳を覆う。
そのせいで持ってたチョコパイの箱は中身が出て床に散らばっちゃった。
「……っ」
すごい音…
雨強すぎる。
まだ強くなるのかな、もっとひどくなったりするのかな…っ
「歩夢」
耳を塞いでぎゅっと目をつぶって、なるべく小さくなるみたいに丸まってたから斗空の声が聞こえなかった。
右手に体温を感じた。
ゆっくり触れた斗空の手の体温が、私の手を包む。
「歩夢」
そぉーっと目を開けるとじっと斗空が私を見てた。
包み込んだ手を握って私の耳から離した。
「手でも繋いでるか?」
「……。」
「そうするとなんとなく安心するだろ」
なっ、て微笑んできゅっと手を握った。
熱かった。
斗空に包まれた手が。
握り返すこともできなくて。
全然安心できないよ。
だってずっとドキドキしちゃってるもん。
心臓の音がまた鳴り出して、鼓動が早くなる。
手、大きいんだ。
私の右手がすっぽり隠れちゃってる。
斗空の前にぺたんと座って、俯く私の手をずっと繋いでいてくれた。
でも俯いてたのはカミナリが怖かったからじゃないよ、恥ずかしかったから。
斗空の体温で乱されてるみたいな自分が恥ずかしかったから。
今日も歓声がすごい、4時間目の体育。
男子がバスケをしてるから。
「「「斗空くんカッコいい~!!!」」」
どこもかしこも斗空のこと見てるんじゃないかってぐらい、思ってた以上に人気なんだ斗空…
「あ、シュート決めた!」
「汗さえもきらびやかだよね」
「私もシュートされたい…♡」
え、文章の意味よくわかんないんだけど?
とにかく鞠乃ちゃんもみんなも夢中らしい。
ちなみに女子の体育は体育館のコート半分を使ってバレー、なんだけど他のチームが試合中のバレーよりも男子のバスケしか見てないたぶん。
体育館の隅っこにまとまって座りながらバスケ見て喋ってるからね。
「やっぱ斗空くんが断トツだよね♡」
「でも智成くんもよくない?」
「あー、関西弁がねいいよね!あと優しいし!」
…ふーん、2人とも人気なんだ。
そんな2人が揃っちゃってるんだ。
「こないだ智成くんに今日誕生日なんだって言った子なんて耳元でバースデーソング歌ってもらったらしいよ!」
え、何してんのあの人。
「それで最後に、生まれて来てくれてありがとう…♡って」
キャーッ♡って何層にもなった黄色い声が響くんだが、それいいの?私にはよくわかんない。
でも言いそう、智成くんなら言いそう!
「あ、ねぇねぇ歩夢ちゃん!今度一緒に遊ぼうよ!」
女子の話の展開は速い、急カーブを曲がって話がやって来た。
でもその話、もう一度聞かせて!
「歩夢ちゃん暇だったら一緒に遊ばない?」
「遊ぶ!」
もう一度聞きたかったけどはやる気持ちが抑えきれなくて食い気味に返事をしちゃった。
「今週の土曜日は?空いてる?」
「空いてるよ!すっごく空いてる!」
「本当?よかった、近くに可愛いクレープ屋さんあるの!行こうよ!」
遊びに誘われた、ここで出来た初めての女の子の友達と遊ぶ約束…!
「うん…!!」
嬉しい!!!
「しまった、梅雨なの忘れてた…!」
週末の約束ができて浮かれてた学校帰り、下駄箱まで来て気付いた。
雨ザーザーだ。
朝は降ってなかったから傘持って来てないや、どうしよ~…
結構降ってるよね。
食堂はこっちだから夕飯にはまた学校来なきゃだけど、でもまだ夕飯まで2時間以上あるし暇だし1回帰りたい…
「走って帰ろうかな」
「無理だろ」
え?
何気なく呟いた私の一言に何の間もなく返事が帰って来た。
「こんな雨の中何考えてたんだ」
「斗空!」
「風邪引いておしまいだぞ」
同じクラスだもん、もちろん帰る時間も同じになる。部活してる子もいるけど、帰宅部は授業終わったら帰るだけだから。
パサッと斗空が傘を開いた、真っ黒な無地のなんとなく斗空っぽい傘を。
傘ちゃんと持って来てたんだ、えらいなぁ。朝ちゃんと天気予報見るタイプなんだね。
「ん」
「え?」
アイコンタクトで何か訴えて来る。
何が言いたいのかわからなくてきょとんとしちゃった。
「帰るんだろ」
「え?」
そう言われてもきょとんとしちゃったけど。
だって、それは…
「一緒に帰るってこと!?」
相合傘っ!!?
「…どこに驚いてんだよ」
なんでそっちが顔をしかめるの!?どこに不機嫌にさせる要素があったかわからない!
「どーせ傘忘れたんだろ」
「…どーせって、そうだけど」
「帰るぞ」
傘をさした斗空が学校の外に出た。ボトボト傘に当たる音でどれぐらい雨が降っているのかよくわかる、傘なしでは帰れないなって感じさせる音がする。
「早く来いよ」
少し先を行く斗空が振り返って私を呼ぶ。
「……うん」
なんだか恥ずかしくて、顔を見られなかったけど雨だしね。
うん、傘の下だから。
見なくてもいいか。
「歩夢、もっと近付けよ濡れるだろ」
「ちょっと変なこと言わないでよ!」
「言ってねぇよ!」
寮に着く頃にはもっと雨はひどくなっていた。
「わ~~~、やっば!」
「すげぇな今日の雨は」
ちょうどよかったかも、あれ以上学校にいたら本当に帰れなくなってたかもしれない。
空もめちゃくちゃ暗いし、まだ降るのかな。
―バリバリバリィッ
「わぁぁっ」
外の状況が気になって玄関のドア越しに覗こうと思ったら落ちたんじゃないかってぐらい大きな音がした。そこからまた激しい音は増してザーッと隙間なく雨が降り出した。
え、やば…
本当に帰って来れてよかった。ギリギリ寮に着いて…これはちょっと危なかった。
―バリバリィッ
「わぁっ」
カミナリの音すご過ぎる…!
大丈夫なのかな?これ落ちたりしないの?
木には落ちやすいって言うよね…
そぉーっとドア越しに空を見た。
「……。」
うわーめっちゃピカピカしてるー
ピカピカすると時差でしばらくしてから音が鳴るかっ
あぁっ、今鳴った!
すっごい大きい音なった!!
ブルルッて体が連動してるみたいに震えた。
もう部屋行こ、早く部屋の中入ろ!!
「歩夢?」
「雨すごいね、早く部屋行こっか!」
そうだ、部屋にはさっちゃんが貸してくれたシフォンもいるし好きな漫画読んで気分紛わそう。
階段を上がって2階の廊下を真っ直ぐ、奥の左側の私の部屋まで。
きっとそのうち止むし、ちょっとの間だから。
ドアノブに手をかけて、ゆっくりドアを開ける。たまにブルッて震える体に手が滑りそうになったけど。
部屋の中に一歩足を踏み入れた。
「歩夢!」
「え?」
グイッと腕を引っ張られた。
その瞬間、斗空と目が合った。
泣きそうになってる目を、見られちゃったかも。
「来いよ!」
「え!?」
グーッと手を引かれバタンッとせっかく開けたドアは閉まってしまった。
「え、ちょっと!?何?何なの!?」
何も言ってはくれなくて。
ぐいぐいと斗空の力にかなうはずもなく、そのまま斗空の部屋…
「えぇ!?ちょっ、何考えてっ」
…の前まで連れて来られた。
斗空の部屋の前?
「そこでちょっと待ってろよ」
「……。」
斗空だけ部屋の中に行ってしまった。
………え?なに?
待ってろよと言われたから青色のドアの前で待つこと数分後、ガチャガチャとドアノブが開けにくそうに回った。
え、開かないのかな?
こっちから開けた方がいい?
「わっ何!?」
もたついて開かなかったドアを押してみるとポットやら毛布やらいろんなものを抱えて出て来た。
「どうしたのっ、何!?」
「これケトル、お湯沸いてるから」
「え、うん」
「気を付けて持てよ」
渡されたから受け取るしかなくて、何が始まるんだ?と頭の中はクエスチョンマークだらけだったけど…
サッと廊下にレジャーシートを敷き始めたから。
「何するの!?」
「他人の部屋に入るのは禁止だからな」
そのルールは聞いた、ここは男女兼用の寮でもあるし。
「いや、そんなのわかってるけど!何してるのって聞いてるの!」
持って来た毛布をその上に置いて立ち上がった、私の前に立って声をあげる。
「そんな顔の歩夢ほっとけねぇーって言ってんだよ!」
「…!」
そ、そんなハッキリと…
私こそそんな顔で見られたら、顔が熱くなる。
「座れよ、クッションも持って来たから」
「…レジャーシートなんてよく持ってたね」
「これは春の遠足で使ったやつ」
へぇー、春の遠足なんてあったんだ。
「寒いだろ、毛布使えよ」
全然寒くなくなったけど、雨に濡れて寒かったはずなんだけどもう全然。
体も顔も、熱くて全然…
「あとこれ、タオル」
「あり、がとう」
ドキドキしてる心臓が。
ただタオルを受け取っただけなのに、きゅぅって心臓を掴まれたみたいに。カミナリの音よりもうるさいよ。
「お茶でいい?」
「う、うん…!」
ケトルで沸かしたお湯であったかいお茶を入れてくれた。
「斗空の部屋なんでもあるんだね」
ものの数分でこれだけ出て来るんだ、何があってもいいように普段から備えてるみたいな。
「普通じゃないか?」
「普通ではないと思うよ」
用意してくれたレジャーシートの上に置かれたクッション、クッションも私の部屋にはないなぁって思いながら腰を下ろした。
「だって毛布とかお茶とかレジャーシートまで出てくると思わないよ、ほんとに遠足じゃん」
「おやつはないから」
確かにこれでおやつまであったら本当に遠足…
「あ、私持ってるよ!」
そーいえばこっち来る時、家にあったの持って来たんだ!まだ食べてないから残ってる!
「ちょっと待ってて!」
自分の部屋に入って秒で戻って来た。じゃーんっと箱を前に出して箱を見せる。
「チョコパイ!」
賞味期限まだ先だし、お茶やもろもろのお礼にって持って来てみた。自分が食べたかったってのはもちろんあるんだけど、一応私も何か返したくて。
「はい、あげる!」
斗空の前にしゃがみ込んで、開けた箱からチョコパイを1つ渡した。
―バリバイバリィ…ッ
「きゃぁぁっ」
今までで1番大きな音が鳴った。
地響きみたいな音がして本当に落ちたんじゃないかって、つい体が保っていられなくて…
「「……。」」
斗空の胸に、抱き着くみたいに。
座っていた斗空に肩の上に手を乗せるように抱きしめて。
パチッと目が合っていた。
めちゃくちゃしっかり合っていた。
一瞬自分でも状況がよくわからなかった。
「わぁあっ、ごめん!違うの、あの…っ!」
慌てて離れたけどテンパって何を言ってるのか何を言えばいいのか…!
―バリバリバリィッ
「きゃぁっ」
次の言葉を言う前にカミナリの方が鳴ったから咄嗟に両手で耳を押さえた。少しでも音が聞こえにくくなるように、きゅーっと力強く抑えて耳を覆う。
そのせいで持ってたチョコパイの箱は中身が出て床に散らばっちゃった。
「……っ」
すごい音…
雨強すぎる。
まだ強くなるのかな、もっとひどくなったりするのかな…っ
「歩夢」
耳を塞いでぎゅっと目をつぶって、なるべく小さくなるみたいに丸まってたから斗空の声が聞こえなかった。
右手に体温を感じた。
ゆっくり触れた斗空の手の体温が、私の手を包む。
「歩夢」
そぉーっと目を開けるとじっと斗空が私を見てた。
包み込んだ手を握って私の耳から離した。
「手でも繋いでるか?」
「……。」
「そうするとなんとなく安心するだろ」
なっ、て微笑んできゅっと手を握った。
熱かった。
斗空に包まれた手が。
握り返すこともできなくて。
全然安心できないよ。
だってずっとドキドキしちゃってるもん。
心臓の音がまた鳴り出して、鼓動が早くなる。
手、大きいんだ。
私の右手がすっぽり隠れちゃってる。
斗空の前にぺたんと座って、俯く私の手をずっと繋いでいてくれた。
でも俯いてたのはカミナリが怖かったからじゃないよ、恥ずかしかったから。
斗空の体温で乱されてるみたいな自分が恥ずかしかったから。
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