隣の男の子たちは私を困らせる。

めぇ

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NEXT3.学食は私を困らせる)

trouble2.)

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「さっちゃん、一緒にご飯食べよう!」

お昼ご飯から夕ご飯までの間考えてみた。毎日毎食学食なんだもん、1日3回嫌でもこの時間が来てしまう。

それに寮生活だし、ずっと学校だし、1人はやっぱつらいよ。

だからせめてこの時間は1人じゃない、私といてほしいって。

「あゆむん…」

「あっち空いてるよ、行こうよ!」

給食をのせたおぼんを持って抜け出そうとしていたさっちゃんの前に行かせないように立った。

「ボクに話しかけないでって」

「私ぼっちなの!編入デビュー失敗してクラスで浮いてて1人だから誰も一緒にご飯食べてくれる人いなくて…それでっ」

話しかけないでって言ったけど、本当にそうなのかな?

寮で話してくれるさっちゃんはいつでも明るくて楽しそうに笑ってて、私にうさぎのシフォンを貸してくれて、隣のクラスなのに一緒にプール掃除までしてくれて…


本当は誰かといるの好きなんじゃないの?


「1人で食べたくないからさっちゃん一緒に食べてほしい!」

斗空にさっちゃんと食べるって言ったら、いいんじゃないって言われた。

それはいいってことだよね?
賛成って意味のいいんじゃないだよね?

もはや勝手にそうゆうことにしてさっちゃんの前に立ったんだ。

「…ダメかな?」

それでも断られたらどうしよって思ってたけど、それこそ本当に私もぼっち飯になってしまう。

「あゆむんがいいなら…」

「さっちゃん…!」

少し下を向いて力のない声だったけど、うんって頷いてくれた。気が変わらないうちにってすぐに空いている席の方へ向かった。

「さっちゃん、あっちだよ!行こ!!」

席に着くのが遅くなっちゃって、真ん中のテーブルしか空いてなかった。

周りから目立つけど…
しょうがないね、ここしか空いてないしね。

今日の夕食メニューはグラタンとサラダ、めっちゃいい匂いがほわほわしてる。

それとデザートに…

「リンゴゼリー嬉しいね!」

たまーに付くのがまた嬉しい、早く食べたいなぁ。

「あゆむんリンゴゼリー好きなの?」

「うん、ゼリーが好き!リンゴじゃなくてもゼリーならなんでも!さっちゃんは?好きじゃないの?」

「うーん、好きだけど…ボクはプリン派かな」

「それもいい!」

さっちゃんと向き合って、まだ温かいグラタンを頬張った。

とろとろでおいしい~!
学食っていろんなもの出るんだな~

「おいしいね、今日のグラタンは当たりだよね!」

「うん」

「いつでも当たりだけど」

「…おいしいね」

さっきまで表情をこわばらせていたさっちゃんがかすかかに微笑んだ気がした。ひとくちグラタンを口に入れて、うんって笑った気がしたの。

「ねぇ、さっちゃ…」

「うっわ、変質女へんしつじょじゃん!」


……え?今、なんて…?


一瞬微笑んださっちゃんからすーっと表情が消えた。

スプーンを持つ手にも力がなくなって、テーブルにぽてっと置かれてるだけになった。


たった一言だった、一言だけ聞こえた。


でもさっちゃんを傷付けるには十分な一言過ぎる。悪意のある言葉なことは私にでもわかったから。

「ごめんあゆむん、ボクもうお腹いっぱいだから」

笑いたくない顔で笑って、まだ半分も食べてないグラタンをおぼんごと持って立ち上がった。

「さっちゃん…っ!」

下を向いたまま返却口まで、食べかけのグラタンを置いて食堂から出て行く。
私もすぐに立ち上がってさっちゃんを追いかけた。

「さっちゃんっ、さっちゃん待って…!」

走っていくさっちゃんを呼んで、必死に背中を追いかける。教室のある棟に繋がる渡り廊下の方へ、とにかく足を動かして全速力で。

「待ってよさっちゃんっ」

息を切らして、だんっと大きく一歩踏み出した。

「さっちゃん…!」

後ろから抱き着くみたいに、渡り廊下の真ん中でさっちゃんの背中からぎゅっと飛び込んだ。

「!」

「…っ」

さっちゃんの背中に顔を埋めて、もうこれ以上どこにも行かないように掴んださっちゃんの制服をぎゅーっと握る。
絶対離さないって、グッと引くように力を入れたからさっちゃんの足が止まった。

「あゆむん…、ボク男の子だからこれはちょっと…」

「うわぁぁぁっ、ごめんね!ごめんね!?」

離さないつもりだったけどそれを言われたら急に恥ずかしくなって手を離すしかなかった。


そ、そうだ…!

いつもスカートを履いたさっちゃんだったからつい女の子感覚で抱き着いちゃった!


でも、違うんだ!


さっちゃんは…


「女の子だよ、さっちゃんは」


目を見る、しっかり見てほしくて。

真っ直ぐ見つめた。

「あゆむん…」

だけど、さっちゃんが視線を落とした。

「…ボク男の子だよ」

「さっちゃんっ、いいんだよ!だってさっちゃんはっ」


「違うんだ!!」


下を向いたさっちゃんが大きな声で叫んだ。外にある渡り廊下はどこにも響くことなく声が抜けていく。

「ボクは男の子なんだ、女の子になりたいわけじゃないんだ…」

「え…」

ぎゅっとグーにした手が震えてる、きっとめいっぱい力を入れている。


「…男の子の自分が好きじゃなくて、でも女の子になりたいわけじゃない」


私、何も知らなかった。


知った気でいるようで知らなかった。
 
勝手に知った気でいたんだ。


「だけど女の子の格好はしたくてだから制服だって普段だって女の子の服を着てる…本当は男の子なのに」


震えてる、手だけじゃない体も声も。

「自分でもわからないんだよ」

まるで吐き出すみたいに声を荒げた。

「変だよねこんなの…っ、おかしいよね…」

「さっちゃんっ」

「男の子なのに女の子の格好がしたいなんてっ」

「そんなこと…!」


次の言葉はなんて言えばよかったのかな。

さっちゃんの瞳から涙が溢れてた。


「ボクって一体何なんだろうね」


ぽろぽろこぼれる涙を腕で拭いて、笑った。

私を見て、また笑いたくない笑顔で。


「男のくせに女の子の格好してるなんて気持ち悪いよね」


私がそんな顔、させちゃった。


「あゆむんも嫌いになったでしょ」

「ううん、全然っ」

ふるふると首を左右に振った、だけど見てなかったと思う視線を下に向けたから。

「…ごめん、今あゆむんと一緒にいたくないから」

スッと目を伏せて、私に背を向けるようにして走って行ってしまった。

「さっちゃん…っ!」


全然そんなことないよって、言うつもりだった。

だけど振り絞るようなか細い声を聞いてしまったから、何も届かないような気がして言えなかった。


渡り廊下を駆けてゆくさっちゃんを追いかけられなかった。

追いかけてもいいのかわからなくて、追いかける勇気もなくて…


ただ吹き抜ける風の中走っていく背中を見ていることしかできなくて。


私の方が嫌われちゃったの?

私のこと嫌いになっちゃったの…?
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