隣の男の子たちは私を困らせる。

めぇ

文字の大きさ
13 / 23
NEXT3.学食は私を困らせる)

trouble3.)

しおりを挟む
何もできなかったな。

何も言えなかった…


やっぱりも1回追いかけた方がよかったかな、でも何を言えば?


…あんなこと言われて追いかけるなんてできないよ。


「…全然勉強する気起きなぁーい」

はぁっと勉強机に顔を伏せた。思ったより勢い余ってごつんっておでこが机に当たる音がした、ちょっと痛い。

テストも近いし勉強しようかなって部屋にこもってみたけど、ちっともはかどらない。さっきから開いたままの英語の教科書は1ページもめくられてないんだもん。

「…ちょっと休憩しよっかな」

食堂の冷蔵庫に冷やしてある飲み物を取りに行こうと立ち上がる。一応勉強してる気分を持続できるように英語の教科書を持って、雰囲気だけは保たれるよう部屋から出て階段を下りた。

「あ」

食堂の前、玄関の方から歩いて来る斗空と目が合った。手にはお茶のペットボトルを持って、たぶんそこに自販機行ってたな。

「何してんの?」

「え!?何って喉乾いたから冷蔵庫に飲み物取りに来ただけだよ」

「教科書持って?」

「これはムード!」

「なんだよそれ」

誰に見せるわけでもないけど、歩き教科書しながらここまで来ちゃったから…閉じるタイミング失ったっていうか少しでも勉強を忘れないっていう意気込みだったんだけどこの一瞬でどーでもよくなった。

「え、斗空お風呂上がり!?」

ついさっきまで入ってましたと言わんばかりのホカホカした湯気をまといながら濡れた髪をタオルで押さえていた。

「え、お風呂上がり!?」

大切なことだから2回言っちゃった!

「あぁ、出たばっかで暑いからお茶買いに」

いや、待って待って!

これも寮なら普通にあるあれだよね!?

でも急だったから、不意打ちだったから…


ドキドキして来たんだけど!!?


わぁーーーーーーーーーー…


今までならこんなこと意識してなかった。


だって私…っ 

私の格好どうなの!?


Tシャツ短パン…!


「………。」

って、もう見られてたよね。
初日から見られてたよね。

そんなの気にする余裕さえもなかったあの日ね…

「……。」

うん、改めて気にしなくてもいいかもしれない。だって何とも思われてなさそうなんだもん。

チラッと斗空を見れば、わさわさと髪の毛を拭いて全然気にする素振り見せてない。
しかも斗空もTシャツ短パンだし。それはそれでちょっと、まぁあれだけど…

「歩夢これスペル違う」

はぁ、なんてタメ息をつこうかと思ったら突然斗空が隣に並んだ。ビクッて声が出そうになるくらい震えた。

「書き込んだスペル間違えてたら全部間違えるだろ」

ピタッとくっついて熱い、てゆーかお風呂上がりの斗空が熱い…!

「これってeじゃない?歩夢aって…」

さらに覗き込むように、開いた教科書にぐーっと顔を寄せれば寄せるほど私の体と斗空の体が…っ

「あ、やっぱaだ。これeだから」

目を細めて眉まで寄せちゃって食い入るように教科書を見てる。

「斗空って…もしかして目悪い?」

「あぁ、うん悪い」

呼びかけちゃったから教科書を見ていた斗空がこっちを向いた。


ドキッ 

て、音が鳴る。


交わした視線に胸が高鳴る。


ドキドキ、心臓の音が…

息が止まりそう…!


何センチ?
この距離って…


「あ、眼鏡忘れたわ」


あぁーーーーーーー…っ

斗空は本当に全然なんとも思ってないっぽいけどね!!!


「全く見えないわけじゃないから風呂上がりは忘れがちなんだよな~、普段はコンタクトだし」

やめてほしい、ガッチリしっかり付けててほしい。

じゃなと私の心臓が持たないよ…!

斗空の熱が伝わって暑くてしょーがないんだもん!

「そういえば今日咲月とどうだった?」

「え、さっちゃんと…?」

壁に背中をつけて一息ついた斗空がペットボトルの蓋を開けた。

「昼、一緒だったんだろ?」

よっぽど喉が乾いていたのかゴクゴクゴクと一気に半分くらい飲み干した。

「うん…」

斗空も気にしててくれたんだ。
いいんじゃないってテキトーに言ってたけどテキトーじゃなかったんだね。私がさっちゃんと食べるって言ったこと、だけどね…

「さっちゃんに嫌われちゃったっぽい」

全然上手くできなくて、それどころか逆効果で怒らせちゃったかもしれない。

教科書を閉じた。抱きしめるみたいに両手で、ぎゅって力が入った。

「本当は…話しかけないでって言われたんだけど、話しかけちゃったから怒っちゃったんだと思う」

そう言われてたのに無理やり通せんぼまでして引き止めたから、嫌だったんだよねきっと。

「私と一緒にいたくないって…言われちゃった」

さみしいとかつらいとか勝手に押し付けっちゃったんだ。

でもそれは私のエゴでしかないのに。

さっちゃんのこと考えてるようで考えてなかったの。


だからあんなこと…


「咲月は歩夢と仲良くしたいんだろ」

「え、聞いてた?私の話、一緒にいたくないって言われたんだよ!?」

2/3お茶を残したところでペットボトルの蓋を閉めて、持っていたタオルを肩にかけた。

「思い返してみろ、本当にそう言ってたか?」

「言ってたよ!今あゆむんと一緒にいたくないって言ってたもん!」

「ほら、さっきと違うじゃねぇか」

「さっきと?」

え、同じじゃない?

私と一緒にいたくないって、同じ意味じゃん。

“今あゆむんと一緒にいたくないから”

特になにもー…

「さらに言うと、話しかけないでってそれだけだったか?他に何か言ってなかったか?」

ずっと壁にもたれていた斗空が体を起こした。

「…“学校ではボクに話しかけないで”って…」

「それが答えだろ」

私の顔を見てふって笑った。

「学校で話しかけるなってことは学校以外ならいいんだよ、つーかもっと分かりやすく言えば臨時寮ここでは一緒にいたいって思ってんだよ」

なんだろそれとんちみたいじゃん、一休さんじゃないんだから。
 
「……。」

でもそう…
なのかな?そうゆう意味なの?

だってそんなことは全然…

「学校で見る咲月と臨時寮ここで見る咲月、どっちが楽しそうにしてた?」

「どっちが…?」

どっちってそんなの…
でもそれだとまた押し付けにならない?

本当にさっちゃんが…

「俺は臨時寮ここにいる咲月のが楽しそうに見えるけどな」

「私だって…!」

ついムキになっちゃった。斗空にそんなふうに言われて。

だって思い出すのはいつも笑ってるさっちゃんで、あんなか細い声聞いたことないから臨時寮ここでは。

「あぁゆう格好してるから変な目で見られることもあるけど、咲月は咲月だからな」

「……うん」


私も正直最初は思ってた。

こんな子と仲良くできるのかなって心配だった。


でも話してみたら全然違ったの。

仲良くなりたいって思ったの。


きっとさっちゃんを知ったから。



じゃあ私が信じるのは臨時寮ここでのさっちゃんだ…!



「私行って来る!」

2階に行くためにくるっと方向を変えた。 

このまま一気に階段を駆け上がるー…

「歩夢」

階段を数段上ったところで呼び止められて振り返った。

「がんばれ」

少しだけ口角を上げて笑った斗空が背中を押してくれたみたいで、私の心にぽわっと浸透しんとうして来る。

「うん!」


もう1度さっちゃんと、話したい…!


黄色のドアの前、すぅっと息を吸って深呼吸をする。息を整えたら、丁寧にコンコンとドアを叩いた。

「…さっちゃん、歩夢だけど」

出て来てくれるかな、ここは学校じゃないから…

「…なぁに?」

ゆっくりドアが開いて、隙間からさっちゃんが顔を出した。
ゆるかわの部屋着にいつものウイッグをして、女の子のさっちゃんが。 

「さっちゃん、あのね…っ」

………。

あれ、何言いに来たんだっけ!?

勢いで話に行こうって思って来ちゃったから何話そうか考えてなかった!

わーーー、しまった!
さっちゃんがぽかんとしてる!

「あの~…」

えっと、何を言おう!?
いっぱい言いたかったはずなのに何から言ったらいいかわかんないっ

言い方を間違えたらさっちゃんを傷付けちゃうんじゃないかなって思ったら…っ

「あゆむん?」

「待ってね、今言うこと考えるから!」

「え?今?」

「あ、違うの!言いたいことはあるんだけどっ」

あわあわテンパる私にさっちゃんがくすっと笑った。

「あゆむんなにそれ~!」

それはいつもの、よく見るさっちゃんで。

「なんでドア叩いたの~?何かと思ったじゃん~!」

ふふふって笑って目を細める。

学校では見せない、臨時寮ここだけに見せる顔。

「さっちゃん」

「なぁに?言うこと見付かった?」

「さっちゃんはそうしてた方がいいよ」

「え…」

迷ったけど、やっぱ素直に言うのがいいと思った。

「そんなさっちゃんがいいよ」

「あゆむん…」

「そうやって私に笑ってくれるさっちゃんがいい、だから…っ」

「あゆむん、ありがとう」

ちゃんと目を見てきちんと伝えれば届くと思ってた。

「優しくしてくれてありがとう、気遣ってくれてるんだよね」

「そんなんじゃっ」

「ボク大丈夫だから、今までもずっとこうだったし」

その顔は好きな顔じゃないよ、無理に笑って見せるさっちゃんの顔は好きじゃない。

「だから気にしないで」

「さっちゃん、待ってっ」

バタンとドアを閉められてしまった。

言い方間違えちゃった?これじゃよくなかった?

でもこれが私の本当の気持ちなのに…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

宇宙人は恋をする!

山碕田鶴
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞/奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。】 私が呼んでいると勘違いして現れて、部屋でアイスを食べている宇宙人・銀太郎(仮名)。 全身銀色でツルツルなのがキモチワルイ。どうせなら、大大大好きなアイドルの滝川蓮君そっくりだったら良かったのに。……え? 変身できるの? 中学一年生・川上葵とナゾの宇宙人との、家族ぐるみのおつきあい。これは、国家機密です⁉ (表紙絵:山碕田鶴/人物色塗りして下さった「ごんざぶろ」様に感謝)

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

処理中です...