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NEXT3.学食は私を困らせる)
trouble6.)
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今日の夕飯なにかな~♬
さっちゃんと一緒に夕食を食べる約束をして、せっかくだから寮から学校までの道のりも一緒に行こうと思って階段の下で待っていた。
よかったなぁ、今日からさっちゃんと一緒に食べれる。
…斗空も一緒に食べるのかな?どうなんだろ。
「あゆむん!」
「あ、さっちゃん!」
タタタッとリズミカルな足取りで階段を下りて来た。
「えっ!?」
真っ黒なふわふわの猫毛は耳や顔周りを少し隠して、それでもお顔の美しさはハッキリわかる美少年…
「あゆむんお待たせ♡」
「ええぇぇっ!!?」
「さぁ行こっか!」
「待って待って、さっちゃんっ!?どーしたの!?」
初めてこの寮へ来た日以来見る男の子の姿だった。しかも制服もスカートじゃない、ズボンを履いて。
「お腹空いたね」
私の呼びかけににこっとだけ笑って返した…
え、なにそれ?
何の答えにもなってないんだけど?
「……。」
えぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!?
男の子の姿で隣を歩くさっちゃんは眩しい。
女の子の時も可愛いいんだけど、男の子になっても可愛さは健在で中世的なお顔はさらに美しさを放つ…
「え、誰あれ!?」
「めっちゃ美少年じゃん!」
「あんな人うちの学校いたっけ!?」
食堂は注目の的だった。明らかにざわめく黄色い声がさっちゃんに集中している。
その後ろで私のがいたたまれないんだけど。
「あれ?壮太郎どないしたん?」
それに普通に智成くんが話しかけていた。
「どないしたん?ってこれがボクだからね」
さっちゃんがにこって笑えば食堂にキャーという歓声が溢れる。
え…、どーゆうこと??
どーゆう状況なの…?
「あゆむん、どこ座る?空いてるとこー…」
「ここ空いてます!!」
キョロキョロするさっちゃんにスッと近くに座っていた女の子が手を挙げた。
あなたは誰?たぶん知らない子…
「ありがとう」
さっちゃんが微笑み返すと頬を赤らめて嬉しそうに…
え、本当にどーゆうこと!?
みんな態度全然違うくない!?
だっていつもさっちゃんが1人食堂から抜けていく姿を誰も気にせず放っておいたんでしょ!?
なのに…っ
「トムヤンクンおいしかった~!初めて食べたけどおいしかったね、あゆむん!」
「う、うん…おいしかった」
夕食を食べて返却口に食器とおぼんを返す。いつもと変わらないさっちゃんだけど、私からするとやっぱり慣れない。
「タイの料理なんだって、隣に座ってた女の子が教えてくれた」
手を挙げて席を教えてくれた子はやっぱり知らない子だったんだ。
「うちの学食いろんなもの出るからいいよね~」
声も仕草も話し方もさっちゃんなんだけど、どこか違和感でしっくり来ない…いや、こっちもちゃんとさっちゃんなんだけど。
食堂を出て渡り廊下の方へ、夕食を食べたらこのまま下駄箱に向かって靴を変えたら寮に戻るだけだから。
「明日はピロシキなんだって~、ピロシキはどこの料理か知ってる?」
「え、どこだろ?」
「ロシアだって!言ってたよ!」
食事中、さっちゃんは楽しそうに女の子たちと喋っていた。
もともと明るくてよく話す子なんだ、それも至っていつもと変わらないといえば変わらないんだけど…
「あゆむん」
下駄箱に着いた。
クラスが隣のさっちゃんとは下駄箱の位置が少し離れてる、棚2つぐらい。だから余計に遠く感じちゃった。
「最初からこうすればよかったんだよね」
「え…?」
「ありがとう、あゆむん」
「ううん、私はっ」
さっちゃんとの距離が遠くなった気がした。
本当に?
本当にこれでよかったの?
その切なさ混じる表情はだって…
それからの日々、さっちゃんを取り巻く環境はガラリと変わった。
「壮太郎くんカッコイイよね~♡」
「めちゃくちゃ美少年!」
「ちょっとやばいよねー!ときめいちゃう!!」
「……。」
さっちゃんと一緒に食べる約束をしたのに気付けばさっちゃんの周りだけじゃなく私の周りにもギャラリーが増えた。女の子ばっかだったけど。
何コレ私の憧れだったやつじゃん!
ううん、そーじゃなくて!!
「あゆむんはゼリー派だったよね?ボクはプリン派だから今ちょっとプリン派のが多いね」
なぜかゼリープリン論争が始まっていた今日のお昼ご飯。
「あやみんもプリン派?ボクと一緒だ」
知らん名前も出て来た。
あ、前に座ってる子ね?
…本当に一瞬で変わるんだ、私たちの生活は。
すっかりさっちゃんは人気者で、一緒にいる私はついでに話しかけてもらえる存在になってた。
そりゃみんなで食べた方がおいしいとは思うけど…
隣で笑うさっちゃんはどこか違う気がして、迷っちゃうんだ。
「今日も喋り過ぎちゃったな」
「そうだね、さっちゃんずっと喋ってたよね」
「だから全然ご飯進まなかったよ、次は気を付ける喋ることに夢中にならないようにしよう」
食堂から出て渡り廊下を通ったら階段を上がる、教室はこの上の階にある。
さっちゃんは変わらず明るい声で話していた。
だけど心なしか最近は話し方も違う気がする。
「…さっちゃん」
「何?」
振り返る姿も表情も私の知ってるさっちゃんからどんどん離れていくみたい。
「さっちゃん今日ほんとに楽しかった?」
「楽しかったよ」
「…本当に?」
階段を上がろうとするさっちゃんを引き止めた。
「うん…あゆむんどうしたの?」
男の子のさっちゃんには慣れない。
「それでいいの?」
「…何がダメなの?」
でもその笑い方にはもっと慣れないんだ。
「さっちゃんらしくないよ!だってさっちゃん言ってたじゃん、女の子の格好がしたいんだよね!?」
どうしても無理に笑ってるみたいで、表情を作り変えてるみたいに見えた。男の子でいなきゃって言い聞かせてるみたいに。
「あゆむん…」
「私はよくないと思う!さっちゃんにはもっとっ」
「なんでそんなこと言うの!?」
もっと話がしたかった。
「ボクは自分の意志で好きな格好してるのに…っ!」
「待ってさっちゃん!」
でも頭ごなしに言っちゃったから伝わらなかった。
「違うのっ、待ってよ!!」
走って行っちゃった。上がろうとしていた階段も上らないで、走って行っちゃった。
また間違えちゃったの、私。
「どうしたらよかったんだろ~…」
1人戻って来た教室で、自分の席で顔を伏せる。もう嫌悪感でいっぱいだ、絶対言い方間違った。
あんなに言い方気を付けなきゃってしてたのにあの言い方はほんと…
「うざい」
「ひどくない!?隣でわかりやすく凹んでるんだからもっと気に効いた声かけてよ!」
「そんないかにも慰めてオーラ出してるやつに言う事なんかねぇよ」
「……。」
隣に斗空がいることわかってて言ってみたんだけど、めんどくさそうに息を吐かれた。
もっと言い方あるでしょ、大事なんだから言い方!
「いいもん、別にっ」
「咲月の事だろ」
こっちに顔を向けたから目が合っちゃった。斗空には言わなくてもわかるらしい。
「…うん」
サッと正面を向いて静かに頷いた。
「…私あれでいいと思ってたんだけどよくなかったみたいなんだ」
右手で髪の毛を触りながら斗空から顔が見えないようにして。
「さっちゃんのこと傷付けちゃった」
私が1番傷付けた。
守りたかっただけなのに間違えた。
たださっちゃんとご飯を食べたかっただけなのに。
「…はぁ」
息を吐く音が聞こた。
え、私結構本気で悩んでるのにタメ息!?
「歩夢も咲月も考えすぎなんだよ」
右手をどけて斗空の方を見ると真っ直ぐ私の方を見ていた。ドクンッて鼓動が響く。
「お互いのこと考え過ぎ」
斗空の声は不思議、すぅーって私の中に入っていくから。
「もっと言いたい事言えよ、歩夢が言いたい事」
「私が言いたいこと…?」
「気なんか遣わないで思ってること言えばいいんだよ」
気遣ってるって思われちゃったからこうなっちゃったと思うんだけど…
それにさっちゃんのこと考えすぎって考えるのはあたりまえじゃん。
それとも違うの?
他に私が言いたいことはー…
考えてみる。
斗空の言葉を何度も思い返しながら、私もさっちゃんもお互いのこと考えすぎってどうゆう意味かなって。
でも何度考えても辿り着く先は1つしかないよ。
「さっちゃん、一緒に帰ろう!」
「あゆむん…」
「帰ろう、私と!」
「…いいけど」
キラキラ眩しいさっちゃんの隣を歩くのは私まで注目されて、ばいばいって手を振られれることもある。
みんなに笑顔を振りまくさっちゃんを、遠くへ行っちゃったみたいで寂しいとかそんなこと思ってるわけじゃない。
それでもさっちゃんがいいならいいんだ。
さっちゃんらしくいられるなら。
「さっちゃん、私ね」
でも本当のさっちゃんの気持ちが、私は聞きたいんだよ。
「さっちゃんのこと好きだよ」
「え…?」
学校から寮への帰り道、今日は天気がいい。少しあるこの距離もサクサクと歩いて行けそうで。
「さっちゃんが何をしても何を好きでもどんな格好してても、私はさっちゃんが好き」
あの日、一番最初に言ってくれたのはさっちゃんだった。
“あゆむんね!咲月って言うの、さっちゃんって呼んでね!仲良くしよ!”
それだけで心強かったんだよ。
友達になれたら嬉しいなって思ったんだよ。
「だからさっちゃんの好きな格好していいよ」
“最初からこうすればよかったんだって思った”
それは私と、一緒にいることを選んでくれたんだと思った。
“最初からこうすればよかったんだよね”
でも実際は自分といることで私がつらい目にあわないようにしてくれてたんだよね。
「していいんだよ、さっちゃん…!」
気付いたら足は止まっていて、森の中叫んでるみたいになってた。それぐらい必死に叫んでた。
「自分で自分を否定しないで!さっちゃんはそのままでいいんだよ…!」
誰が何を好きだって関係ないんだ、それよりも自分を好きでいてほしい。
「私はどんなさっちゃんでも好きだから!」
今度こそ伝わって、私の気持ち。
「あゆむん…」
私ね、さっちゃんと一緒に笑いたいだけだよ。
「あゆむんはすごいね」
さっちゃんが目を伏せた、でも次に顔を上げた時は微笑んでた。
「そんなこと言われたの初めてだよ」
穏やかな表情で、少しだけ首を傾けて。
「ボクも、あゆむんのことが好きだよ」
“歩夢も咲月も考えすぎなんだよ”
私だけじゃない。
私のことも、思っててくれたんだ。
「もうやめるよ、ボク本当はスカートが履きたいんだ」
「うん!それがいいと思う!」
さっちゃんが好きだから優しくしたい、それが答えなの。
「さっちゃんのことはさっちゃんが決めていいんだよ!」
笑ってくれたから、どんな格好をしていてもそうやって笑ってくれたら…
だから一緒に笑っていようよ。
さっちゃんと一緒に夕食を食べる約束をして、せっかくだから寮から学校までの道のりも一緒に行こうと思って階段の下で待っていた。
よかったなぁ、今日からさっちゃんと一緒に食べれる。
…斗空も一緒に食べるのかな?どうなんだろ。
「あゆむん!」
「あ、さっちゃん!」
タタタッとリズミカルな足取りで階段を下りて来た。
「えっ!?」
真っ黒なふわふわの猫毛は耳や顔周りを少し隠して、それでもお顔の美しさはハッキリわかる美少年…
「あゆむんお待たせ♡」
「ええぇぇっ!!?」
「さぁ行こっか!」
「待って待って、さっちゃんっ!?どーしたの!?」
初めてこの寮へ来た日以来見る男の子の姿だった。しかも制服もスカートじゃない、ズボンを履いて。
「お腹空いたね」
私の呼びかけににこっとだけ笑って返した…
え、なにそれ?
何の答えにもなってないんだけど?
「……。」
えぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!?
男の子の姿で隣を歩くさっちゃんは眩しい。
女の子の時も可愛いいんだけど、男の子になっても可愛さは健在で中世的なお顔はさらに美しさを放つ…
「え、誰あれ!?」
「めっちゃ美少年じゃん!」
「あんな人うちの学校いたっけ!?」
食堂は注目の的だった。明らかにざわめく黄色い声がさっちゃんに集中している。
その後ろで私のがいたたまれないんだけど。
「あれ?壮太郎どないしたん?」
それに普通に智成くんが話しかけていた。
「どないしたん?ってこれがボクだからね」
さっちゃんがにこって笑えば食堂にキャーという歓声が溢れる。
え…、どーゆうこと??
どーゆう状況なの…?
「あゆむん、どこ座る?空いてるとこー…」
「ここ空いてます!!」
キョロキョロするさっちゃんにスッと近くに座っていた女の子が手を挙げた。
あなたは誰?たぶん知らない子…
「ありがとう」
さっちゃんが微笑み返すと頬を赤らめて嬉しそうに…
え、本当にどーゆうこと!?
みんな態度全然違うくない!?
だっていつもさっちゃんが1人食堂から抜けていく姿を誰も気にせず放っておいたんでしょ!?
なのに…っ
「トムヤンクンおいしかった~!初めて食べたけどおいしかったね、あゆむん!」
「う、うん…おいしかった」
夕食を食べて返却口に食器とおぼんを返す。いつもと変わらないさっちゃんだけど、私からするとやっぱり慣れない。
「タイの料理なんだって、隣に座ってた女の子が教えてくれた」
手を挙げて席を教えてくれた子はやっぱり知らない子だったんだ。
「うちの学食いろんなもの出るからいいよね~」
声も仕草も話し方もさっちゃんなんだけど、どこか違和感でしっくり来ない…いや、こっちもちゃんとさっちゃんなんだけど。
食堂を出て渡り廊下の方へ、夕食を食べたらこのまま下駄箱に向かって靴を変えたら寮に戻るだけだから。
「明日はピロシキなんだって~、ピロシキはどこの料理か知ってる?」
「え、どこだろ?」
「ロシアだって!言ってたよ!」
食事中、さっちゃんは楽しそうに女の子たちと喋っていた。
もともと明るくてよく話す子なんだ、それも至っていつもと変わらないといえば変わらないんだけど…
「あゆむん」
下駄箱に着いた。
クラスが隣のさっちゃんとは下駄箱の位置が少し離れてる、棚2つぐらい。だから余計に遠く感じちゃった。
「最初からこうすればよかったんだよね」
「え…?」
「ありがとう、あゆむん」
「ううん、私はっ」
さっちゃんとの距離が遠くなった気がした。
本当に?
本当にこれでよかったの?
その切なさ混じる表情はだって…
それからの日々、さっちゃんを取り巻く環境はガラリと変わった。
「壮太郎くんカッコイイよね~♡」
「めちゃくちゃ美少年!」
「ちょっとやばいよねー!ときめいちゃう!!」
「……。」
さっちゃんと一緒に食べる約束をしたのに気付けばさっちゃんの周りだけじゃなく私の周りにもギャラリーが増えた。女の子ばっかだったけど。
何コレ私の憧れだったやつじゃん!
ううん、そーじゃなくて!!
「あゆむんはゼリー派だったよね?ボクはプリン派だから今ちょっとプリン派のが多いね」
なぜかゼリープリン論争が始まっていた今日のお昼ご飯。
「あやみんもプリン派?ボクと一緒だ」
知らん名前も出て来た。
あ、前に座ってる子ね?
…本当に一瞬で変わるんだ、私たちの生活は。
すっかりさっちゃんは人気者で、一緒にいる私はついでに話しかけてもらえる存在になってた。
そりゃみんなで食べた方がおいしいとは思うけど…
隣で笑うさっちゃんはどこか違う気がして、迷っちゃうんだ。
「今日も喋り過ぎちゃったな」
「そうだね、さっちゃんずっと喋ってたよね」
「だから全然ご飯進まなかったよ、次は気を付ける喋ることに夢中にならないようにしよう」
食堂から出て渡り廊下を通ったら階段を上がる、教室はこの上の階にある。
さっちゃんは変わらず明るい声で話していた。
だけど心なしか最近は話し方も違う気がする。
「…さっちゃん」
「何?」
振り返る姿も表情も私の知ってるさっちゃんからどんどん離れていくみたい。
「さっちゃん今日ほんとに楽しかった?」
「楽しかったよ」
「…本当に?」
階段を上がろうとするさっちゃんを引き止めた。
「うん…あゆむんどうしたの?」
男の子のさっちゃんには慣れない。
「それでいいの?」
「…何がダメなの?」
でもその笑い方にはもっと慣れないんだ。
「さっちゃんらしくないよ!だってさっちゃん言ってたじゃん、女の子の格好がしたいんだよね!?」
どうしても無理に笑ってるみたいで、表情を作り変えてるみたいに見えた。男の子でいなきゃって言い聞かせてるみたいに。
「あゆむん…」
「私はよくないと思う!さっちゃんにはもっとっ」
「なんでそんなこと言うの!?」
もっと話がしたかった。
「ボクは自分の意志で好きな格好してるのに…っ!」
「待ってさっちゃん!」
でも頭ごなしに言っちゃったから伝わらなかった。
「違うのっ、待ってよ!!」
走って行っちゃった。上がろうとしていた階段も上らないで、走って行っちゃった。
また間違えちゃったの、私。
「どうしたらよかったんだろ~…」
1人戻って来た教室で、自分の席で顔を伏せる。もう嫌悪感でいっぱいだ、絶対言い方間違った。
あんなに言い方気を付けなきゃってしてたのにあの言い方はほんと…
「うざい」
「ひどくない!?隣でわかりやすく凹んでるんだからもっと気に効いた声かけてよ!」
「そんないかにも慰めてオーラ出してるやつに言う事なんかねぇよ」
「……。」
隣に斗空がいることわかってて言ってみたんだけど、めんどくさそうに息を吐かれた。
もっと言い方あるでしょ、大事なんだから言い方!
「いいもん、別にっ」
「咲月の事だろ」
こっちに顔を向けたから目が合っちゃった。斗空には言わなくてもわかるらしい。
「…うん」
サッと正面を向いて静かに頷いた。
「…私あれでいいと思ってたんだけどよくなかったみたいなんだ」
右手で髪の毛を触りながら斗空から顔が見えないようにして。
「さっちゃんのこと傷付けちゃった」
私が1番傷付けた。
守りたかっただけなのに間違えた。
たださっちゃんとご飯を食べたかっただけなのに。
「…はぁ」
息を吐く音が聞こた。
え、私結構本気で悩んでるのにタメ息!?
「歩夢も咲月も考えすぎなんだよ」
右手をどけて斗空の方を見ると真っ直ぐ私の方を見ていた。ドクンッて鼓動が響く。
「お互いのこと考え過ぎ」
斗空の声は不思議、すぅーって私の中に入っていくから。
「もっと言いたい事言えよ、歩夢が言いたい事」
「私が言いたいこと…?」
「気なんか遣わないで思ってること言えばいいんだよ」
気遣ってるって思われちゃったからこうなっちゃったと思うんだけど…
それにさっちゃんのこと考えすぎって考えるのはあたりまえじゃん。
それとも違うの?
他に私が言いたいことはー…
考えてみる。
斗空の言葉を何度も思い返しながら、私もさっちゃんもお互いのこと考えすぎってどうゆう意味かなって。
でも何度考えても辿り着く先は1つしかないよ。
「さっちゃん、一緒に帰ろう!」
「あゆむん…」
「帰ろう、私と!」
「…いいけど」
キラキラ眩しいさっちゃんの隣を歩くのは私まで注目されて、ばいばいって手を振られれることもある。
みんなに笑顔を振りまくさっちゃんを、遠くへ行っちゃったみたいで寂しいとかそんなこと思ってるわけじゃない。
それでもさっちゃんがいいならいいんだ。
さっちゃんらしくいられるなら。
「さっちゃん、私ね」
でも本当のさっちゃんの気持ちが、私は聞きたいんだよ。
「さっちゃんのこと好きだよ」
「え…?」
学校から寮への帰り道、今日は天気がいい。少しあるこの距離もサクサクと歩いて行けそうで。
「さっちゃんが何をしても何を好きでもどんな格好してても、私はさっちゃんが好き」
あの日、一番最初に言ってくれたのはさっちゃんだった。
“あゆむんね!咲月って言うの、さっちゃんって呼んでね!仲良くしよ!”
それだけで心強かったんだよ。
友達になれたら嬉しいなって思ったんだよ。
「だからさっちゃんの好きな格好していいよ」
“最初からこうすればよかったんだって思った”
それは私と、一緒にいることを選んでくれたんだと思った。
“最初からこうすればよかったんだよね”
でも実際は自分といることで私がつらい目にあわないようにしてくれてたんだよね。
「していいんだよ、さっちゃん…!」
気付いたら足は止まっていて、森の中叫んでるみたいになってた。それぐらい必死に叫んでた。
「自分で自分を否定しないで!さっちゃんはそのままでいいんだよ…!」
誰が何を好きだって関係ないんだ、それよりも自分を好きでいてほしい。
「私はどんなさっちゃんでも好きだから!」
今度こそ伝わって、私の気持ち。
「あゆむん…」
私ね、さっちゃんと一緒に笑いたいだけだよ。
「あゆむんはすごいね」
さっちゃんが目を伏せた、でも次に顔を上げた時は微笑んでた。
「そんなこと言われたの初めてだよ」
穏やかな表情で、少しだけ首を傾けて。
「ボクも、あゆむんのことが好きだよ」
“歩夢も咲月も考えすぎなんだよ”
私だけじゃない。
私のことも、思っててくれたんだ。
「もうやめるよ、ボク本当はスカートが履きたいんだ」
「うん!それがいいと思う!」
さっちゃんが好きだから優しくしたい、それが答えなの。
「さっちゃんのことはさっちゃんが決めていいんだよ!」
笑ってくれたから、どんな格好をしていてもそうやって笑ってくれたら…
だから一緒に笑っていようよ。
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