私達は・・・

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【私】女の勝利

後編*

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「さて、先ほども言ったように一つ目の噂については事実確認は終了し、解決した。しかし、二つ目と三つ目の噂については事実確認がまだ終わっていないんだ」

 私がそう言えば、彼女は緊張した面持ちではあるが、少し安堵したのが伝わってきた。

 そんなに……そんなにが心配なんだろうか。

 今すぐ相手を聞き出して始末してしまいたい。彼女が私以外のことを愛するなんて絶対に認めない。しかし、原因不明の病死や突然の行方不明では、彼女がそいつのことを考えてしまう可能性がある。ならいっそのこと、彼女の目の前で相手を殺してしまえばいいんじゃないか。そうすれば、確実に死んだというのを理解するだろう。そして、悲しんでいる彼女に私が新しい愛を教えてあげればいいんだ。ついでに、私という存在に依存するように、彼女の親しい者をどんどん原因不明の病気で消してしまうのも良いな。私の愛に溺れてくれればいいな。一度堕ちてしまえばそこから沈める方法はいくらでもある……私は誰よりも彼女を愛してる。今はわからなくとも、きっと私以外に頼るものが無くなればきっとわかってくれるだろう。どれだけ、どれだけ彼女を私が愛しているかを……私はもう堕ちる所まで堕ちている。堕ちるのを恐れることもない。彼女を手に入れられるなら私はどんな手段でも使える。

「ねえ……」

 いや、待てよ。彼女が愛しく思っている相手を……

「ちょっと……」

 その相手に向かっている愛も私に向いて……

「貴方! 聞いてるの⁉」

 思考の沼に沈んでいた意識が彼女の呼びかけで浮上する 

「『貴方!』 なんていい響きなんだ! 今の呼び方だと夫婦みたいだね!」

「いつもそう呼んでいるじゃない! それより、話の途中で突然黙りこまないでよ! 怖いじゃない⁉」

 そう言いながらも、彼女の表情は怖いというより敵意が凄い
 それに、ちょうど彼女の思い人(仮)に嫉妬していたから普段よりも喜びの沸点が思ったよりも低くなっていたようだ。

「あはは、いや~ちょっと考え事がね?」

「まあいいわ。で?」

「ん?」

「事実確認が済んでないのでしょう? それを私に聞きたいのではなくて?」

「……聞いたら答えてくれるのかな?」

「さあ、言ってもいいけど……信憑性については愚問でしょう?」

「まあ、そうだよね。しかもその答えは嘘しか言わないだろう? 事実確認にはうちの者を使うよ」

「そう……」

「で、まあ私が貴女に聞きたい、というか知りたかったのは別に事実確認についてではないよ。それに、もう私の目的は達成したから気にしなくていいよ」

 私がそう言うと彼女はニコニコと張り付けたように笑う
 彼女のその笑顔を見た瞬間、背筋に冷たいものが走った。彼女の笑顔なんてご褒美でしかないはずなのにだ!

 何かがおかしい。普段と何かが違う。それが何なのかはわからないが……

 そう思っていると彼女から、自室の部屋を案内すると言われた。違和感を感じながらもその甘い誘いに抗うことはできず、私はその誘いに乗ってしまった。


 お茶会の続きは彼女の部屋で行うことになった。その準備で彼女は少し先に部屋に向かった。何やららしい
 それからほどなくして、メイドが呼びに来た。 

コンコンコン
「お嬢様、お連れ致しました」

「そう、入っていいわよ」

 彼女から返事があり、メイドが部屋の扉を開ける。彼女の部屋は、想像よりも落ち着いた雰囲気の女性の部屋という感じだった。

 少し、びっくりして彼女の部屋を眺めていると……

「貴方も早く入りなさい!」

 彼女に怒られてしまった。そこから部屋に入り席に着くが、彼女から誘われてという機会は今後ないかもしれないと考え、部屋全てを脳裏に焼き付けようとしたが彼女からあまりきょろきょろとしないで、と言われてしまった。

 そこからお茶会が再度スタートした

「貴女から私を自室に誘ってくれるなんて、夢かと思いましたよ」

「私としてはこのお茶会自体夢だとよかったわ」

「まあまあ、そんなこと言わないでくださいよ。私が言うのもなんですが、現実ですよ」

「わかってるわよ! ……場所も変わったことだし話題も変えない?」

「そうですね。いいですよ、話題はけっこ「珍しい茶菓子があるのよ」……はい」

「もうテーブルに置いてあるのだけど、これよ」

 そう言って彼女が指さしたのは黒く丸い半球の物体だった。
「……あー、これは……私も見たことが無いな」

「貴方、露骨に食べたくないって顔してるわよ」

「いや、そんなことは……」

「これ、家のパティシエが作った物なのよ この黒い丸いのはチョコレートという物よ」

「⁉ あぁ、これがチョコレートですか。確かに珍しい物ですね。我が領でも最近取引が始まったばかりで、まだ私は食べたことが無いんですよ」

「ふふふ、。あと、これはこうして食べるんです。リナ、アレを……」

 彼女がそう言うと、リナという侍女はチョコレートの上に何かをかける。すると、チョコのドームは溶け出し中からケーキが出てきた

「今のは……チョコレートか。温かいチョコレートをかけることで溶かしたのか」

「ええ、面白いでしょ」

「ああ」

 彼女とケーキについて話していると、ちょうど話に一区切れついたところでケーキが盛り付けられていた。

「この茶葉と合うわよ。さあ、食べてみて」

「ああ、頂くよ」

 そして、一口、口に運ぶ。

「⁉ 初めて食べるが、確かに驚くな! すごく美味しいよ。それにこのケーキも美味しいね。でもこのケーキ、……そこまでアーモンドの味がしないが……」

「ふふふ、不思議でしょう? まあ、美味しいからどんどん食べて!」

「あ、ああ。しかし、貴女はなぜケーキではなく果物なんだ?」

 彼女が今食べているのは、フルーツだ。ケーキもチョコレートも食べていない。不思議に思い聞くと

「……ああ、それはね、チョコレートってすごくカロリーが高いのよ」

「え! そうなのか……じゃあ、私もそこそこで……」

「私、いっぱい食べる人が好きなの」

「いくらでも食べよう!」

 とりあえず、帰ったら普段の鍛錬メニューの倍はしようと決めた。
 そして、チョコレートのかかったケーキをワンホール全て食べ終わったところで……息ができなくなった

「カハッ ヒュッハッハッハッ」

 椅子に座っていることも難しくなり座っていた椅子から転がり落ちる

「大丈夫ですか⁉ とりあえず、これ飲んでください!」

 そう言って彼女が駆け寄ってきて私に飲み物を飲ませようとする。正直、喉に物が詰まっているわけではないので、飲み物は意味がない。そして、呼吸困難の原因は今まで食べたものだろうと思いいたって、吐き出そうと震える指を口元に運ぶ。そして、指を口に入れる寸前……彼女に手を握られる。

「あらあら、大丈夫ですか?」

「ハッハッハッハッ」
 
 彼女に手を放して欲しくて、何とか彼女の方に顔を向ける。するとそこには……満面の笑みの彼女がいた。その笑みを見てああ彼女の思惑だと理解した。理由は……まあいろいろと思い当たるが……気になる事と言えば私は毒にはならしていたのに、なぜ毒が効いたのか、そしてなぜここで暗殺を行ったかだが……


 彼女は、私の耳元で答えを囁いてくれた。周りはパニックで他の人間には聞こえていないだろう

「ふふふ、苦しそうね。それに不思議そう。もう死んでしまうであろう貴方に冥途の土産に教えてあげる。あのケーキ、青酸カリが入っていたの。普通、それだけで死ぬのよ、即死。なのに貴方ぴんぴんしてるじゃない。だから、ワンホール食べてもらったのよ。大幅に致死量を超える量をね。それに……毒が早く回るように、紅茶には血液促進作用がある物を使ったのよ。この方法、大回りで面倒だったわ。でも貴方、いろいろ感が良いから違うところに注意が散ってくれないと気付くでしょ? だから私の部屋に案内したのよ。それに、チョコは結構独特のにおいだしあれだけ使えばわからないと思ったのに、貴方やっぱり気づきじゃない。あれには大分焦らされたわ。正直あそこで食べるのをやめられたら困ってたわ。計画に支障が出ちゃう。貴方がまんまと私の言葉に踊らされてくれて助かったわよ。貴方、食べないって選択肢もあったのに……本当に馬鹿みたいに乗せられて」

 そこで彼女は一旦口を閉ざした
 
 もう息ができず、意識は朦朧としている。今意識があるのは、もはや意地であった。そんな私に彼女は告げる

「貴方がをこのお茶会で直接聞いてくるなんて思わなかったから驚いたわ。私もそれを顔に出してしまったのも悪かったけど、事実確認なんて貴方がするなど言わなければ偽りの愛を向けるぐらいの覚悟があ
ったのに……本当に馬鹿な人。後、私がここで仕掛けた理由は、貴方帰ったら一目散に私の思い人について調べるでしょ? 私が疑われることになろうとも、愛しているあの人を守るためならもう私の立場すらどうでもいいの。貴方という脅威が消えればこの後はどうとでもできる。…………少し話過ぎたみたいね。 それじゃあさようなら、死出の旅へ行ってらっしゃい」

 その言葉を最後に、私は目の前が暗くなった……その時の私の感情は、嫉妬と羨望。私に向かないその愛がひどく、ひどく羨ましかった。意識がまだかすかにあり目は見えなくなったが、誰かに頭を撫でられ私は今度こそ意識を手放した。





 事件から数日後、男の婚約者であった女は行方不明となった。噂では、男の後を追ったとか、愛人であった人と駆け落ちしたなんて噂が流れたが、真相は不明。そして、この事件は重要参考人であった女がいなくなったことで未解決のまま人々の記憶から薄れていった……



END3【馬鹿な人】


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