波のカナタ

石川 直生

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小学4年生 晶 功 1

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 晶の話は、続く。
「甘いな。お前。そんなもんじゃねぇぞ。ジジイがキレたら、地獄だからな」
「ええ? 俺、ムリだわ」
「俺だって無理だよ。この一年、何回泣いて、ムカついて、夜の町走ってったと思う?__けど、どこにも行くとこねぇし。結局、泣きながら帰ってきて。いっそのこと、もう学校にでも住んだほうがマシとか考えてさ」
「え__。マジで?」
「これがマジなんだから、ひでえだろ? 俺が何したっつーのよ? あ__でも、マジお前来てくれてよかった」
「モキュ?」モキュは、テレビアニメ、モンチュウの話言葉? 鳴き声? なんか、そんなんだったはず。
「お前、いいやつそうだし。お前と話してると、気ィ晴れるし、ジジイの悪口言い合えんじゃん。この苦労分かち合えるしさ」
「分かち合いたくもナイ」
「ホントな__。あ、あんま くっちゃべってんのバレたら、ジジイが怒鳴り出すかも。まぁ、なるべく、庇ってはやるけどさ。すみませんって下向いてりゃ、そのうち黙るから。ジジイの戯言なーんもきかねぇで、バ__カ!てめえの老後とか、見とけよ!!って思ってりゃイイから。殴られそうになったら、外に逃げろよ? 俺らの足に、追いつけっこないんだから」
「モキュ!!」モンチュウ(主人公フトシのペット。マスコットキャラクター)そっくりの佐々木功。晶、笑う。

「何それ? アニメキャラ?」晶、石を空き地に蹴る。
「あと、あんま泣くなよ? 俺、泣いたら、倍殴られたから。男のくせに、メソメソすんなってさ。泣いたら怒る。友達と楽しそうにしてたら、怒る。どうしろっての? もう限界。人形みたいに感情無くすのが、一番な。この一年で、もう人間不信」
「え__? もう最悪」
「お前なんか、事前に、俺がこんだけレクチャーしてやってんだし、俺よりマシだろ。俺なんかさ。あ、終わんないから、この辺にしとくわ。じゃ、入るけど大丈夫?」
「大丈夫じゃナイ」そりゃそうだ。
「とりあえず、挨拶して荷物置いたら、すぐ外出よう。ジジイの文句しか話ねえけど」
「わかった」
「いくぞ」
「うん」二人、ドアを開けて、家の中に入る。

 河本こうもと あきら。小学4年生。男子。身長138cm。BMIやや痩せ。あっさりしたカワイイ顔。小学校の活動 プリント係 ソフトテニス

 主題歌流れる。
「波のカナタ」 words 川瀬 柚子  vocal 河本 晶
 暗闇を歩き出した 僕らの行方はquestion
 この波を越えてゆけば 君に届くかな
 雨が降りしきる海も いつかは越えてゆける
 何もかも とかしてよ__君の鼓動で
 トドカナくって構わない? 君にだけ いつも切なくて
 青い海にとかしてく__不安も疑いも___

 いつか君がいなくなる その時 僕はどうなるかな
 一人でも生きてゆける SO でもいつか辿り着ける?
 居場所は 君のそば

 © 石川 直生 2020.
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