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第二篇 魔界山怪の章
第14話 美少女ヨアンナ
しおりを挟むお腹が空いてきました。
わたしはバッグを持って2階の自室から廊下に出、同階の食堂へ向かいます。
夕食にはまだ早いかと思われましたが、食堂には先客がいました。
わたしより少し下ぐらいの年齢でしょうか? 花柄のワンピースがよく似合う美少女です。
どこか見覚えのある顔立ち。その仕草。雰囲気。以前、会ったことがあるような……。
わたしが記憶の底を探っていると——
「マリン!!」
美少女がわたしに気づきました。大声でわたしの名を呼び、席をたって近づいてきます。
「マリン・ミワ! あたしよ、ヨアンナ、ヨアンナ・ヒストリム!」
思い出しました。世界富豪資産家会議のレセプションパーティーで知り合ったヒストリム財閥のご令嬢です。でも……。
たちまち疑問符が頭のなかで踊りだします。
年一で開かれるパーティーの最後に会ったのは、確か彼女が11歳のとき。目の前の少女はどうみてもお年頃の16、7歳。日本でいえばJKといった感じです。
「あッ!」
あることに気づいてわたしは声をあげてしまいました。
そうでした、わたしが地底世界ゲリンガへいっているあいだ、地上では5年の歳月が流れていたのです。5年の空白をかかえた浦島太郎がわたしなのです。
「騒がしいなピーチクパーチク。ここは女子寮か」
でっぷり太った中年男性が食堂に入ってきました。だぶついた肉をはち切れそうな白いシャツと縞のズボンがつつんでいます。
「デーブ・デレブイアさんよ。気分屋で偏屈。みんなに嫌われてるの」
ヨアンナが小声でこっそり教えてくれます。
「デブレイアさん……」
わたしの言葉に彼は即座に反応しました。
「おいっ、わたしはデレブイアだ。デブレイアじゃないぞ!」
国際共通語のパミル語で怒鳴り返してきます。
その剣幕にわたしが首をすくめると……
なにを思ったかデブレイア……じゃなかった、デーブ・デレブイアさんがわたしの顔を覗き込んできました。
「おまえ、もしかして……」
デレブイアさんの顔に憎悪と怒りの表情が浮かびます。
肉厚の頬を震わせてデレブイアさんはわたしに太い指を突きつけました。
「おまえだな、地上を滅ぼした災厄女というのはッ!!!」
第15話につづく
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