逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
46 / 333

46

しおりを挟む
夢から覚ますように呼びかける優しい声で、悪夢から目覚めた
夢見が悪く、目元には薄らと涙が居座っていて、それを拭った
「ちさちゃんおはよー」と私より先に眠りから覚めた臼田うすたさんが、後部座席からこちらを覗くように身を乗り出してくる
どうやら寝ている間に目的地に着いたようで、それを教えようと起こしてくれたみたいだ

「いやー、一眠りしたからスッキリ!」

「すいません、寝ちゃって」

そう言いながらシートベルトを外すも、あれだけ寝るなと言っていたジャンさんは何も言ってこない
無言で私を見ている
それを確認した時、目が合ってその見据える目にビックリして顔を背けた
その行動も見続けているジャンさんに気付かないフリをして、行きましょうか…と言い車を降りる

「…それで、今日はどこに…」

「今日は!ちさちゃんの!買い物です!」

(!?!?!?!?!?!?!?)

1語1語強調するみたいな喋り方で、よくわからないことを言う臼田うすたさんに、え?と聞き返す
「ちさちゃんのベッドとかタンスとか、色々買い揃えます」と言い直してくれた
買わなくていいですよ、と言っても「行こうかー」と全く聞き入れてくれない









「どのベッドがいいかな」

「……ではこれで」

そう指さしたのは陳列した中で、一番安い約3万円のセミシングルベッド
特に飾りはなく、鉄の骨組みでシンプルなデザイン
「それは可愛くないよ」と却下され「これなんかいいんじゃない」と指さしたのはキングサイズの12万円のベッドだった
え……大きすぎでしょ…………

「私1人には大きすぎません?」

「僕も一緒に寝るから大丈夫」

何が?何が大丈夫なんですか?
何故一緒に寝るの前提なんです?

にしても大きすぎます、と言うと「じゃあ、ジャンも一緒に寝ればピッタリだね」とウインクを投けてかけて来た
どうしてそっちに行くのか……
ダメです、そう言うと「えぇーーーー」と子どものように駄々をこね、うなだれる

「こんなに大きいの必要ないですよ」

「えー、寝返りとかで大きい方がいいじゃん」

「どんな寝返りですか!?」

私はそんな荒ぶった寝返りはしません、と却下する
「じゃあ間を取ってダブル」なんて言ってくる臼田うすたさんに、それも大きいですと却下していると、彼の顔に商品票を突きつけ「早く買ってこい」とドタバタ騒ぎを終わらせるジャンさん
その商品票を確認して渋々レジに向かう、臼田うすたさんを見守った

「勝手に…決めないでください……」

「時間がもったいない」

(別に急いでる訳じゃないのに…。)

そんなことを思っていると、近くを通る他のお客さんのヒソヒソとした声が聞こえて来た
手首に包帯、頬には大きなパッチを貼っている私の姿は、普通とは言い難いだろう
チラチラと確認する視線が痛い

隣にいるジャンさんも、変な風に思われていないだろうか……
心配する私をよそに、ジャンさんは聞こえていないのか無視しているのか、特に反応を見せずに腕組みしたまま臼田うすたさんの会計を待っている

気にしていないのなら……と何も言わず、靴を見るように下に視線を向ける

「DVかな、」
「でも男の方別に女、気にしてなくね?」
「リスカでもしたんじゃない?」
「え、メンヘラ?こえ~」

へいへい、ご自由に語ってくださいな
こちらを気にすることなく話すカップルを無視して、会計を待つ

……やっぱり、そう見えちゃうよね………
はぁ……と周りに聞こえない小さなため息をこぼした
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...