逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
82 / 333

82

しおりを挟む
無法地帯と化していた私の爪は綺麗に仕上がり、落ち着いた感じの爪へと変化した
ネイルした感じはあまりなく、程よく手入れされた見た目になっている

「ありがとうございます…」

「どうぞ、この手でお連れ様のハートを掴んでください。」

いやだから、付き合ってないから!
店員さん誤解してます!!

できたてホヤホヤの爪を見ては、不思議な気持ちになる
お洒落に無頓着な私は、爪のことなんて今まで1度も考えたことなんてなかった

(世の女性は毎月毎月こんなことしてるのか…大変だな……。)

出口まで見送ってくれる店員さんに促され、レジの方へと向かう
途中でジャンさんと合流した

「ご来店ありがとうございました。またお越しくださいませ。」

「ありがとうございました」

「あ、ありがとうございました…」









車に乗ってエンジンをかけると日時が現れる

__________pm.2:28…
道理でお腹が空いている訳だ
家から出て口にしたのは、彼がくれたお菓子のみ
まともな食事は取っていない
なのにお食事処に行く気配もない

車を走らせ、またどこかへ向かう
私のことなんて更々気にしていない様子で、あれから話もしない

私はただ窓の外を見ているだけだ
ジャンさんの意図が全く分からない
メイクアップさせたりネイルさせたり、自分磨きの手伝いみたいなことしてくる

「はぁ……」

ため息をこぼすが、車の中には響かずひっそりと消えて行く
窓に頭をつけては、車の震度を頭部で感じる
自分の頭ですら支えるのが疲れるように身体全体が重くなっているような気がする
それをしみじみと感じていると揺れは収まる

彼は車から降りると、もう降りろとは言わず助手席を開けては強引にシートベルトを外し、引きずり下ろす
首元にロックをかけると、釣った魚のように無心で歩き出した

全く酷い扱いだ
私は人であって魚じゃないぞ…

次は何処なんだ…と見てみると"キャンディー"などと書かれた点灯前の看板のお店に来店する
"キャンディー"って…なによ………

カランと扉を鳴らすと、露出度の高いドレスを着た方々が鯉が餌を求めて群がるようにこちらに向かって走ってくる
濃いメイクを施された顔で「ジャンちゃーん」だなんて内股で走って来るもんだから、軽くトラウマになりそう

「待ってたわよ、ジャンちゃん♡」

「あー、ずるいー。私も私もー」

「…………。」(何この絵面…)

明らかに女性ではない方々は、そのごつい体をひしめき合いながらジャンさんを取り合っている
それを無心で無視している彼は、特に反応を見せない

「あらやだ、何この子」

「っ!」(見つかった…)

彼に掴まれている私に、今頃気づき「なになにー?」と物珍しそうに見物してくる
小指を若干立てては、頬に添えて「女の子よー」と仲間同士でざわめき始めた

「ハルは?」

「奥よ。なにー、今日は春さんに用なのー?」

「ジャンちゃんこの子なにー?」

そんな質問は無視して歩き進める彼は、未だに私を開放してはくれない
いい加減離してほしい…
こんな風に思うのも何度目だったろうか…?

中に行き進めると、着物を着た綺麗な女性と華奢な女性が居た
「あら、早い」と微笑みを見せては、椅子から降りてこちらに歩いてくる
それは上品かつしなやかな歩きで、女の私も見惚れてしまう程だった

「あれ、用意できた?」

「もちろん、ちゃんと選んであげたわよ。この子が着けるのかしら?」

その質問には「そう」と答え、掴む手をやっと離す
ようやく呼吸ができる気がする
「はじめまして」と少し咳き込む私を覗き込む女性は、近くで見るとより綺麗な顔をしている
お化粧と分かっていても、キラキラと輝く目元は存在を主張してくる
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...