逍遙の殺人鬼

こあら

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人混みの山々をかき分けて現れたのは、私のボロボロにされたドレスの代わりを貸してくれた人だ、ピエロの仮面を着けた男性だ
この冷めきった空気を変えた彼は、真っ直ぐ私の方に歩いてくると、見えにくい仮面の奥底からアイコンタクトしてくる

私も覚えているし
相手も覚えていた

彼が警備兵にその旨を伝えると、先程の勢いは無くなり焦っているようにも見える
横から「でもっ、」と殺されたご令嬢の取り巻きが、口をはさもうとしてくるが、彼がそうさせない

「失礼ながらレディ、貴方は私が嘘を付いていると言いたいのですか?」

「っそ、そんな!滅相もない…」

彼のその言葉に取り巻きはもちろん、警備兵も迂闊に動けないといった状況になってしまう
そんな風にさせてしまう彼は、一体誰なのか……









「彼女は私と居たんだ。他を調べてくれるかな?」

「っも、もちろんです!!お手間をおかけしました!」

そそくさと警備兵さん達はその場から立ち去る
それを確認すると、彼は私の方に身体を向けて「また会ったね」と言い、私の肩を掴むと自分の方に引き寄せる
そんな彼に、恥ずかしながらも助けてもらったことに感謝し、ありがとうございました。とお礼を言う

仮面からでも分かる私の赤くなった顔に「お嬢さん律儀だね」と、どこか意地悪な感じで言ってくる
助けてもらったんだ、あのままだったら本当に逮捕されてたかもしれない……
だけれど…一体いつまで肩を掴んだままなのか……

そんな何もできない私に助太刀してくれたのは、臼田うすたさんで「あなたは?」と私を彼から引き離す

「先程言った通り、彼女にドレスを貸したただの通りすがりですよ。」

臼田うすたさん、本当です。この人は助けてくれたんです」

「ちさちゃんが、そう言うなら…」

若干敵意を見せている臼田うすたさんに、ドードーと落ち着くように言い聞かせる
相変わらず優しく手に触れてくる臼田うすたは、私を心配してくれている
こんな人が人を殺すなんて、あるわけない

「それじゃ、私は失礼するよ。またね、お嬢さん」

「……ッ!?」

彼はそう言うと、余った私の手を取って甲に軽く口づけをしてくる
まさかの出来事に私は固まり、隣に居る臼田うすたさんは若干の驚きを見せている
掴む手を離しては「じゃあね」と人混みの中へと消えてしまう

彼の姿が消えたほうを見続ける私の前に移動した臼田うすたさんは、胸ポケットからハンカチを取り出すと、ゴシゴシと手の甲を拭き始める

その手の衝撃により我に返った私は、無言で拭き続ける臼田うすたさんに、なにしてるんですか?と馬鹿みたいな質問をした
そんなアホな質問に、重たそうな口を開いては「虫がついた…」とボソッと言い放つ
そんな彼は…少し、いつもと違ってみてた

臼田うすた……さん…?」

「ちさちゃん可愛いから、変な男が寄ってくるだ」

「…あの人は、親切にしてくれた…だけで……」

まるでジャンさんみたいな強い雰囲気を出す臼田うすたさん
ゴシゴシと、汚れを拭き取るかのように強く動かすそれは、痛かった……
そんな彼が何だか怖く感じ、拭いている最中だったが手を離させ、一歩遠のく

「……お手洗い…行ってきます…」

それは、逃げだった
だって、状況が、臼田うすたさんが分からなくなったから
理解するためにその場から離れたかった
いや、彼から……離れたかった
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