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干し草で編まれたランドリーバスケットを持つ私の手首を、大きな手が覆いかぶさるように捕まえている
背部に感じる確かな存在
幻覚なはずなのに、こうもリアルだと期待してしまうではないか
彼が、私を探し出して、私を追いかけて来たって…
そんなはず無いのに、胸の奥底で小さくなった想いが、欲が膨れ上がってしまいそうになる
(これは幻覚、現実じゃない…)
目を瞑ってランドリーバスケットを掴む手に力が入る
現実じゃ無いと心の中で復唱して、首を横に振ってみる
消えたら消えたで悲しむくせに
行かないでって本心では想ってるくせに、認めたく無い
幻覚が生み出した人影は大きくて、私をすっぽりと隠してしまう
振り返る勇気なんてものは無い
消えてしまう…そんな思いで振り替えずにいる
掴む感覚が薄れれば傷心して、またまぶたを強く閉じた
もう手首にも、背中にも何も感じない
そんなことに、思わず手にしていた物を離して落としてしまう
ドサッと鈍い音が聴こえて目を開け、振り返ればやっぱり居ない
分かってたことじゃ無いか
分かってたから、振り返らなかったんじゃん
首にある十字のネックレスに触れては、思わず辺りを探してしまう
「わぁ!?」
「っあ!!ゴッごめんなさい。」
「私の方こそ、すいません…。ちゃんと周りを確認しないで…」
「いえ…、俺が無言で近付いたから…。あの…これ、もしかしたらお昼食べてないのかと思って持ってきたんですが…」
そう言う彼の手にはおにぎりがあった
確かに、お昼は食べていない
ありがとうございますと受け取り、洗濯は一時休憩に入る
少し褐色がかった肌を持つ、私と同い年ぐらいの青年からおにぎりを貰い、木陰で遅めのお昼を頂戴した
しかし、この青年は誰だろうか?
隣に座っては、一緒におにぎりを食べている
どこかで会ったかな?いや、覚えていない
ジロジロと視線を感じた青年は、頬張るのを止め話始める
「えっと…なんでしょうか?…」
「っあ、ごめんなさい。気を悪くしてしないでいただきたいんですが、あなたは誰でしょうか?」
「あぁ、そう言えば初対面で名前とか言ってなかったね。俺ギュウ、よろしくシスター。」
「私はちさって言います。よろしくギュウさん。」
「”さん”付はやめてくれよ、年同じぐらいだろ。俺18。」
「私も18です。言っておくけど、私はシスター見習いだからそんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ。」
「じゃタメで話そう。それなら良いだろ?」
どこか親しみやすい彼は、私と同じでこの教会の下働きをしているみたい
ギュウ君が持ってきてくれたおにぎりを噛み締めていると「どこから来たの?」と質問してくる
割りかし都会の方から来たけど…と少し説明に困った
別に悪いことなどしていない
ただ、今までの私の生き方、出会ってすぐの男性の元で暮らしていたことを話したら、彼はきっと驚くだろう
私だって驚く
彼の質問に濁らせながら答えるが、そろそろ洗濯の続きをしいなければならない
ギュウ君は同い年だからか、とても話しやすかった
「私そろそろ洗濯の続きしないと。ごめんね、話せて楽しかった。」
「っお、俺も手伝うよ。」
「っえ?悪いよ。私の仕事だし、ギュウ君だって仕事があるでしょ?」
「いや、今日はもう終わったんだ。2人でやれば早く終わる。それに、もっとちさと話したいし…」
「え?何か言った?」
「いや、なんでも無い。手伝うよ。」
そう言ってスボンの裾をめくりあげて洗濯をしてくれる
「俺が洗うから干して」と的確な指示を示してくれたおかげで、倍のスピードで洗濯物が減っていく
私だけでやっていたら3時間はかかっていただろうに、1時間かからないくらいで終えることができた
だが、その分疲れも回って来て、2人してふらふらになっている
ギュウ君は脚が生まれたての小鹿のように、私は腕が上がらなくなっていた
これはきっと筋肉痛になるだろうな…
それだけ頑張ったと言うことだ
はぁ~と互いの背中を合わせて、終了の余韻に浸っている
全て洗い終えた達成感と、疲れが限界に達していた
彼の仕事でもなかったのに、本当に感謝している
「ありがとう。おかげで大分早く終わったよ」
「これくらい……お安い…御用…。」
「すごく疲れてるように見えるけど?」
「それはそっちもだろ。」
確かにと2人で笑った
風に揺れる洗濯物のいい香りが、私と彼の疲れを少し吹き飛ばしてくれている気がした
背部に感じる確かな存在
幻覚なはずなのに、こうもリアルだと期待してしまうではないか
彼が、私を探し出して、私を追いかけて来たって…
そんなはず無いのに、胸の奥底で小さくなった想いが、欲が膨れ上がってしまいそうになる
(これは幻覚、現実じゃない…)
目を瞑ってランドリーバスケットを掴む手に力が入る
現実じゃ無いと心の中で復唱して、首を横に振ってみる
消えたら消えたで悲しむくせに
行かないでって本心では想ってるくせに、認めたく無い
幻覚が生み出した人影は大きくて、私をすっぽりと隠してしまう
振り返る勇気なんてものは無い
消えてしまう…そんな思いで振り替えずにいる
掴む感覚が薄れれば傷心して、またまぶたを強く閉じた
もう手首にも、背中にも何も感じない
そんなことに、思わず手にしていた物を離して落としてしまう
ドサッと鈍い音が聴こえて目を開け、振り返ればやっぱり居ない
分かってたことじゃ無いか
分かってたから、振り返らなかったんじゃん
首にある十字のネックレスに触れては、思わず辺りを探してしまう
「わぁ!?」
「っあ!!ゴッごめんなさい。」
「私の方こそ、すいません…。ちゃんと周りを確認しないで…」
「いえ…、俺が無言で近付いたから…。あの…これ、もしかしたらお昼食べてないのかと思って持ってきたんですが…」
そう言う彼の手にはおにぎりがあった
確かに、お昼は食べていない
ありがとうございますと受け取り、洗濯は一時休憩に入る
少し褐色がかった肌を持つ、私と同い年ぐらいの青年からおにぎりを貰い、木陰で遅めのお昼を頂戴した
しかし、この青年は誰だろうか?
隣に座っては、一緒におにぎりを食べている
どこかで会ったかな?いや、覚えていない
ジロジロと視線を感じた青年は、頬張るのを止め話始める
「えっと…なんでしょうか?…」
「っあ、ごめんなさい。気を悪くしてしないでいただきたいんですが、あなたは誰でしょうか?」
「あぁ、そう言えば初対面で名前とか言ってなかったね。俺ギュウ、よろしくシスター。」
「私はちさって言います。よろしくギュウさん。」
「”さん”付はやめてくれよ、年同じぐらいだろ。俺18。」
「私も18です。言っておくけど、私はシスター見習いだからそんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ。」
「じゃタメで話そう。それなら良いだろ?」
どこか親しみやすい彼は、私と同じでこの教会の下働きをしているみたい
ギュウ君が持ってきてくれたおにぎりを噛み締めていると「どこから来たの?」と質問してくる
割りかし都会の方から来たけど…と少し説明に困った
別に悪いことなどしていない
ただ、今までの私の生き方、出会ってすぐの男性の元で暮らしていたことを話したら、彼はきっと驚くだろう
私だって驚く
彼の質問に濁らせながら答えるが、そろそろ洗濯の続きをしいなければならない
ギュウ君は同い年だからか、とても話しやすかった
「私そろそろ洗濯の続きしないと。ごめんね、話せて楽しかった。」
「っお、俺も手伝うよ。」
「っえ?悪いよ。私の仕事だし、ギュウ君だって仕事があるでしょ?」
「いや、今日はもう終わったんだ。2人でやれば早く終わる。それに、もっとちさと話したいし…」
「え?何か言った?」
「いや、なんでも無い。手伝うよ。」
そう言ってスボンの裾をめくりあげて洗濯をしてくれる
「俺が洗うから干して」と的確な指示を示してくれたおかげで、倍のスピードで洗濯物が減っていく
私だけでやっていたら3時間はかかっていただろうに、1時間かからないくらいで終えることができた
だが、その分疲れも回って来て、2人してふらふらになっている
ギュウ君は脚が生まれたての小鹿のように、私は腕が上がらなくなっていた
これはきっと筋肉痛になるだろうな…
それだけ頑張ったと言うことだ
はぁ~と互いの背中を合わせて、終了の余韻に浸っている
全て洗い終えた達成感と、疲れが限界に達していた
彼の仕事でもなかったのに、本当に感謝している
「ありがとう。おかげで大分早く終わったよ」
「これくらい……お安い…御用…。」
「すごく疲れてるように見えるけど?」
「それはそっちもだろ。」
確かにと2人で笑った
風に揺れる洗濯物のいい香りが、私と彼の疲れを少し吹き飛ばしてくれている気がした
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