逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
317 / 333

318

しおりを挟む
走る足音が聴こえた
と、その瞬間扉が開く音がデカデカと鳴り響いた
それに驚き、私とギュウ君は互いの体を離した

入って来たのは、新人のウエイターさんだった

あまりに気まずいこの空間に、私とギュウ君と新人ウエイターさんは少しばかりの沈黙を貫いた
だって、私と彼が抱き合っているように見えただろうから…

「…体調の方は、大丈夫そうですね…?」

「っあぁ、もう大丈夫ですっ!もう、ゾウみたいに強いので、ハハハ…」

「…、お部屋から出ていただけると…有り難いのですが…。」

私とギュウ君は気まずい顔をしたまま、ウエイターさんの前を通って部屋を出た
部屋を貸してもらったことへの感謝をし、そそくさとその場を離れた









「…その、悪かった。取り乱したりして…。」

「ううんっ、私こそごめん」

「…。」

「…」

「何か食べる?!俺バイキングから貰って来るよっ!」

質問というより、宣言だった
私を置いて、足早に遠のくギュウ君の背中を見守って、私は小さくなる姿を見続けた

いくら家族みたいな人だと思っても、流石に見られるのは恥ずかしい……

ふぅ…と息を吐いて、両手で風を仰ぐ
微々たる風なんかは役に立たず、虚しく前髪が揺れるだけだった
真冬だというのに………暑かった

下を向いて、行き交う足達を眺めていた
ミッションを熟した今、する事がない
みんな忙しなく移動するのに、喋る時はその場に留まる
だけどまた、すぐに移動してしまう
それを見ている私の視界は、急に暗くなってしまう

「っへ?!」

「こんばんわ、レディ。」

「っ!?潤…さん、ですか?……」

「正解。今宵も綺麗だね、レディ。元々呼ばれてはいたんだが、来る気はなくてね。でも、レディが居ると知って思わず飛んで来てしまったよ。」

視界を塞いでいた手を退けると、潤さんは久しぶりと掌をひらひらさせる
もっと普通の登場の仕方があっただろうに…

今着いたらしく、会場内で私を探していたらしい
なかなか見つからず、少しぷりぷりしている

そりゃそうよ
さっきまで別の場所に居たんだから
大広間会場には居なかったんだから

「レディは意外と活動的なんだね。」

「そうですか?」

「ここは政治家なんかが主に集まる場だからね。それに関係する人や知り合い、興味がある人なんかが集ってるパーティーなんだよ。」

「どうりで、先程から周りの話が難しいと思いました…」

若い人が少ないのは、それが理由なのかな?
年配とは行かなくとも若者がほとんど居ない
たまに見かけたと思ったら、孔雀みたいな服装の人とかで近寄りがたかった
化粧も濃く、もはやアートと呼ぶべきだ
そんな人にこんな凡人が近寄れるだろうか
近づいただけで砂化してしまいそうだ

「"元々呼ばれてはいた"って、やっぱりお金持ちですね」

「まあね。魅力的でしょ?」

「お金持ちってところがですか?」

「そう。好きになっちゃう?」

詰め寄る潤さんに、私は瞬きを忘れてしまった
何を言っているんだこと…と、頭が正常に動くことを阻んでいる

いや…そんなわけ無いでしょ
私には臼田うすた ひさしと言う立派で素敵で最高な彼氏様がいらっしゃいますからね

私には好きな人がいますからと、私は潤さんから一歩身を引いた
それに驚いた様子を見せる潤さんは「本当に?」と心底理解でいないような顔をしてみせた
私に、彼氏がいては変ですかね?
本当ですよと言うと、少し間をおいてふぅーんとどことなく表情が曇った気がした

「そうなんだ。」

「…潤さん…?」

「まあ、せっかくのパーティーなんだし、楽しもうよ。ねぇ?レディ。」

微笑みを見せて、遠退いた私に近付いて何故か腰に手を回して来た
そして引き寄せて、驚く私を見て笑っている
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...